投稿日 2022.09.30 更新日 2022.09.30

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奥深き山の楽しみ|登山スタイルにはどんな種類がある?【山登り初心者の基礎知識】

ひとくちに「登山」と言っても、そのスタイルや楽しみ方は十人十色。最も一般的な山頂を目指す「ピークハント」はもちろん、スノーシューを履いた雪上トレッキング、クライミングや沢登りなどのスタイルも。今回は、単に「登山」という言葉だけではくくれない、さまざまな山の楽しみ方や山との関わり方を紹介します。

目次

一般的な登山・ハイキング(無積雪期)

紅葉の中央アルプス・千畳敷カール(撮影:鷲尾太輔)

もっとも一般的なスタイルの登山

整備された登山道を利用する、もっともメジャーなスタイルの登山です。YAMAPアプリでは主に赤の実線でコースが表示されています(実線が太いほど、通過する登山者が多いコースであることを意味します)。必要な体力や装備こそ標高・天候・コースの長さなどによって変わってはきますが、楽しむ人が多く一般的な登山スタイルと言えるでしょう。

日本百名山や花の百名山、関東百名山をはじめとするご当地百名山などの完登を目標にして、スタンプラリー感覚でひとつずつ登ることを楽しみにしている登山者も多数。YAMAPなどのプロフィール欄に「日本百名山72/100」のように記載している人も見かけます。

逆に高尾山(東京都、599m)、猿投山(愛知県、628m)、金剛山(大阪府、1,125m)、宝満山(福岡県、827m)など、大都市に近い「ホームマウンテン」を日課のように足繁く通って登る人もいます。

新緑まぶしい春、高山植物の咲く夏、紅葉が鮮やかな秋、空気が澄んで眺望が良い冬……四季折々に表情を変える山に登れば、きっと爽快感や達成感を得られることでしょう。

ピークハントにこだわらないハイキングも!

尾瀬ヶ原のハイキング(ayapさんの活動日記より

山頂に登る、いわゆるピークハントだけが山の楽しみではありません。山の中腹や山麓を歩くハイキングも、自然との一体感を存分に味わえます。山頂を目指す一般的な登山と比べるとアップダウンが少ないため、体力的にも手軽に楽しむことが可能です。

・尾瀬(群馬県/福島県/新潟県)、戦場ヶ原(栃木県)などの湿原
・奥入瀬渓流(青森県)、養老渓谷(千葉県)などの渓谷
・大雪高原沼(北海道)、白駒池(長野県)などの湖沼
・白神山地(青森県/秋田県)、屋久島(鹿児島県)などの森林

上記のような代表的なスポットをはじめ、ハイキングならではの景観を楽しみながら歩いてみましょう。

積雪期の登山・ハイキング

雪山初心者でも挑戦しやすい八ヶ岳・北横岳(撮影:鷲尾太輔)

積雪期の登山を楽しむ

防寒対策を施したウェアや靴などのアイテム、アイゼン(登山靴に装着する金属製の爪が付いた滑り止め)を履いての歩行技術や、登る山の状況によってはピッケルワーク(氷上や雪上での歩行補助・滑落防止に使う道具の利用)のマスターが必要になりますが、雪山登山も魅力的。樹氷や霧氷など雪山ならではの氷の造形美や、白銀の山肌と澄み渡った青空のコントラストを求めて、雪山登山シーズンを心待ちにしている登山者も多いものです。

世界有数の豪雪地帯である日本海側では毛猛山(けもうさん、福島県/新潟県、1,517m)など、無積雪期は薮に覆われて登れない山が、薮が雪に埋もれる残雪期だけ登山の対象となることも。

雪山登山の初心者は、入笠山(長野県、1,955m)や北横岳(長野県、2,480m)など、スキー場のロープウェイやゴンドラで山頂近くまでアクセスできる山がオススメです。

スノーシューハイキングで雪と遊ぼう!

戸隠高原でのスノーシューハイキング(ひらぴ〜さんの活動日記より

雪山登山はまだ敷居が高い……という人にオススメなのがスノーシューを履いての雪上ハイキング。冬しか歩くことのできない薮が雪で覆われた森や凍った池の上を、自由自在に歩くことができます。雪面に残った野生動物の足跡や、可愛らしい木々の芽など冬ならではの発見もこのシーズンの楽しみ方のひとつです。

スノーシューやストック、防寒着のレンタル付きで、ガイドが案内してくれるネイチャーツアーも各地で開催されています。

トレイルランニング

南高尾山稜でのトレイルランニング(撮影:鷲尾太輔)

健康志向の高まりを受けて街中・公園・河川敷など「ロード」でのランニングはすっかり定着しましたが、昨今は山の中を走る「トレイルランニング」も大人気。全国各地で大会やイベントも開催されています。

競技志向の人でない限り、登山道の全てを走る必要はありません。急な登り坂などは歩いて、平坦や稜線、下りを走るだけでも十分にその魅力を楽しむことが可能です。

公共交通機関を利用する人であれば、スタート・ゴール地点の付近にランニング中は使用しない荷物や着替えを預けられるロッカーや、汗を流すシャワー設備がある場所を選ぶとより快適に。

なお、歩いている登山者にとっては高速で走るランナーに怖さや威圧感を感じることも。すれ違ったり追い越しをする時には、走らずにスピードを落としてひと声かけるなど、マナーも大切にしたいものです。

バリエーションルート登山

まさに「道なき道を行く」バリエーションルート(撮影:鷲尾太輔)

YAMAPアプリや地図には記載のない(一部地図では破線や色違いで表示)、一般登山道ではないコースを歩くのが、バリエーションルート登山。どこをどのようにして歩くか、自分の計画と判断で進む熟達者レベルの知識と技術が必要になりますが(よって登山初心者にはオススメしません)、その分、達成感は抜群です。

薮山バリエーション

地図読み能力やコンパスワークのマスターが必要な薮山バリエーション(撮影:鷲尾太輔)

樹林帯に覆われた低山をフィールドとする薮山バリエーション。登山計画の段階から地図(地形図)を読み込んでどこを歩くかを決めて、登山中も地図やコンパスをフル活用して歩く必要があります。

文字通り薮をかきわけて進むことも多いため、虫や蛇などの有害動物の心配がなく薮を形成する植物が落葉した晩秋〜冬期が好適なシーズンです。

岩稜バリエーション

槍ヶ岳・北鎌尾根(Take Aikiさんの活動日記より

主に夏の日本アルプスなどで熟練者たちがチャレンジするのが岩稜バリエーション。槍ヶ岳(長野県/岐阜県、3,180m)の北鎌尾根、前穂高岳(長野県、3,090m)の北尾根、剱岳(富山県、2,999m)の源次郎尾根などが代表的なルートです。

同じ山でも一般登山道にあるような道標・ペンキマーク・鎖などはほぼ皆無。落石や転落の原因となる浮石も多い岩稜を自分でルートファインディングする能力や、危険箇所ではロープを使用して安全確保する能力も要求されます。

沢登り

宮崎県・長江川での沢登り(TreeRing(ダーシモ)さんの活動日記より

渓流釣りや、登山でも薮に覆われた尾根ではなく谷筋を登る風習があった日本ならではの登り方が沢登り。時には全身ずぶ濡れになりながら連続する滝や淵を遡行していく、冒険要素が満点のスタイルです。

水に濡れても大丈夫なジャケットや溺死防止のライフジャケットなどはもちろん、地図読み能力、クライミング能力、ロープワークなど登山に必要なスキルを総動員する必要があります。

けれどもその爽快感から「夏は沢登りに限る」という登山者も。広めの河原にテントを張って、魚釣りを楽しむのも一興です。

クライミング

武蔵五日市・天王岩でのクライミング(撮影:鷲尾太輔)

一般的なロッククライミング

垂直に立ちはだかる絶壁を、先人のクライマーが打ち込んだボルトやハーケン(クライマー自身が打ち込むことも)を支点にロープを延ばして登攀するクライミングスタイルが一般的。谷川岳(群馬県、1,977m)の一ノ倉沢や御在所岳(三重県、1,212m)の藤内壁などは、特に有名なクライミングのゲレンデです。

もちろん、ロープワークやクライミングギアを適切に取り扱う技術と知識が必須です。最近は私有地や神社の境内などでのクライミングが地元住民の反対で禁止になる場所も増加。公式にゲレンデとされている場所で行うのがマナーです。ボルトやハーケンが腐食している場所もあり、事前の情報収集も欠かせません。

アイスクライミング

赤岳鉱泉・アイスキャンディでのアイスクライミング(撮影:鷲尾太輔)

文字通り凍結した滝を登るアイスクライミング。アイスアックスという特殊な形状をしたピッケルを両手に持ち、両足に履いたアイゼンの爪でカマキリのように氷瀑(氷結した滝)を登っていきます。

クライミング同様の技術が必要になりますが、八ヶ岳の赤岳(長野県、2,899m)や硫黄岳(長野県、2,760m)の登山基地となる山小屋・赤岳鉱泉にはアイスキャンディと呼ばれる人工の氷瀑が毎冬造営されます。アイスアックスやアイゼン、ヘルメットなどのレンタルとスタッフによる指導が受けられる初心者体験会(要予約)なども開催されています。

インドアクライミング(ボルダリング・ロープクライミング)

インドアジムでのクライミング(撮影:鷲尾太輔)

東京2020オリンピックからスポーツクライミングが正式種目となったこともあり、インドアのクライミングジムも増加。仕事帰りに楽しむ人も増えています。

インドアクライミングそのものを趣味とする人もいますが、登山に出かけられない時のストレス発散や、岩場の登山やクライミングの練習にもおすすめです。

バックカントリースキー&スノーボード

立山室堂でのバックカントリースキー(trout_112さんの活動日記より

整備されたスキー場のゲレンデではなく、自然の雪山を滑降するバックカントリースキー・スノーボード。リフトやゴンドラもないため、登りは滑走を開始する地点までスキー板を背負って歩いて行く必要はありますが、フカフカの新雪に自分だけのシュプールを描く魅力に取り憑かれる登山者も数多くいます。

新雪期・残雪期の立山(富山県、3,015m)室堂周辺や、ニセコアンヌプリ(北海道、1,307m)、鳥海山(秋田県/山形県、2236m)、白馬乗鞍岳(長野県、2,469m)中腹の天狗原、初夏まで雪が残る乗鞍岳(長野県/岐阜県、3,025m)などが人気のフィールドです。

確かなスキー・スノーボードのコントロール技術はもちろん、雪崩やツリーホール(大量の降雪で木の幹の周りにできる穴)への埋没などのリスク対策も重要。ヘルメットと、雪崩に巻き込まれた際に信号を発信するビーコン、埋没者を発見するために雪面に突き刺すゾンデ棒(プローブ)、掘り起こすためのスノーシャベルなど、安全のための装備が多く必要になります。

信仰登山

高尾山に点在する弘法大師像(撮影:鷲尾太輔)

ヨーロッパでは18世紀後半までアルプスは悪魔の棲家、チベット文化圏のヒマラヤは神の棲家とされ、20世紀後半まで登山の対象とはされてきませんでした。

ところが日本には「八百万の神」という自然や身の回りの様々な事象に神が宿るというアニミズム的な宗教観があり、日本人は有史以前から山に宿る神に祈りを捧げる「登拝」という形式で登山をしてきました。

平安時代の呪術者・役行者が開祖の修験道は、山中で厳しい修行を行い人々の幸福を願うというストイックな宗教。山伏と呼ばれる修行者が、全国の山々で活動していました。羽黒山(山形県、414m)などでは、今も山伏の修行を体験できます。

江戸時代には庶民が「講」と呼ばれるサークルを形成し、それぞれの講で信仰する山へ御師(神主とガイドを兼ねる宿坊の主人、)の先導で登拝する文化が浸透。富士山(山梨県/静岡県、3,776m)、御嶽山(長野県/岐阜県、3,067m)、大山(神奈川県、1,252m)などは、現代でも「講」の信徒が数多く訪れています。

山に登るのは登山者だけじゃない!?

木に巻かれたテープには要注意(撮影:鷲尾太輔)

ここまで様々な登山スタイルを紹介してきましたが、山へ入るのは登山者だけではないということを忘れてはいけません。山菜採りやキノコ狩りなど採集目的で入山する人、星や虫などの観察、地質などの研究で入山する人など、登山そのものが目的でない登山者もいます。

狩猟(近年は鹿などの害獣駆除が主な目的)や、林業送電線の鉄塔の管理・整備など、山を仕事場とする人々もいます。里山では写真のように樹木にピンクや白のビニールテープが巻かれている様子を見かけることもありますが、これは山を職場とする人々が目印としてつけるケースも。決して登山道の目印ではありません。このテープをたどってしまい、道迷いにつながるケースも発生しています。ぜひ登山地図GPSアプリのYAMAPを活用して、正しい登山道をトレースしてください。

執筆・素材協力=鷲尾 太輔
トップ画像撮影=鷲尾 太輔

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