活動データ
タイム
13:24
距離
16.2km
のぼり
1314m
くだり
1277m
活動詳細
すべて見るマーケットの混迷はますます激しさを増してきた。単純な下落上昇というよりは、その解釈つまりマーケットの反応が理性を失っている。今年の4月でトレーダー26年目(絶滅危惧種)になるが、ここまでひどいのは2008年以来だろう。結果として連日の精神力の枯渇と睡眠時間の減少で久々に限界に近づいていた。そしてなぜだか、限界すれすれの雪山登山をしたいという変な欲求が沸いてきていた。まさに自暴自棄のような状態で今から考えればかなり危険な精神状態だった。 1月に大失態を犯した塩見岳チャレンジがふつふつと頭をもたげていた。「これ、雪が締まってれば1泊2日で行けないかな。。。」あまりに日本の祝日が海外対比多過ぎるので、さらに有休をとりにくい雰囲気だったからだ。しかし、Widny等を見ると、直前に降雪がありそうだし、この土日も高気圧が北側にあるらしいので南アルプスは天気が微妙だった。「また半泣きになりそうだな。。。」一方で、船山十字路からの南八ヶ岳周回(南)のほうが天気がよさそうに見える。このコースはほとんどレコが見つからず、その理由が分からなかったので、センシブルな登山家からの意見が欲しくてモーメントの泉に石を投げ込んでみた。すると非常に貴重なアドバイス・ご意見を賜り、YMAPのみならずSunntoアプリとKomootでもルートを作成し温めていた。「よし、行けるところまでやってみよう。」 日付が変わってすぐの0時30分に起きた。急いで準備をして1時に自宅出発。コンビニとガソリンスタンド経由のいつものパターンで1時20分頃、近くのインターから高速道路に入った。いつも経由するガソリンスタンドは少し単価が安いのか、普通の時間に行くといつも大渋滞になっているが、この時間は当たり前だが貸し切り状態だ。道中もなんの障害もなく、1時間50分で小淵沢インターに到着した。料金も深夜割引で2460円で激安だ。3時35分頃船山十字路に到着した。前回来た時は、阿弥陀岳登山口ゲートの手前からびっしりと車が並んでいたが、今回は一台もいなかった。そして、その時はその最後尾に駐車したので気にもしていなかったが、その駐車スペースのすぐ手前に西岳への登山口へと続く道があり、その前も広場のようになっている。そこに一台だけ車が止まっていた。その広場に来た時にグーグル先生が「目的地に到着しました。」と言って案内を終了したので、「あれ、船山十字路の駐車スペースこんなんやったっけ??」とまず本日最初の戸惑い。すでに止まっていた一台の車の横にとりあえずジムニーを付け、一度車から下りてみる。以前に止めた普通の駐車スペースの方に歩いていくと、路面状態も特に問題ない。「単純に誰も止めてないだけか。この先行車は西岳の方に行くから手前に止めたんかな。。」 気を取り直して、エンジンを再びかけ、いつもの駐車スペースの比較的手前側(阿弥陀岳登山ゲートから離れる側)に寂しく駐車した。なんか嫌な予感がした。地蔵岳から仙丈ケ岳にチャレンジしたときの完ソロを思い出していた。「しかし、あの一台はあそこに止めてるから同じルート行ってるかもな。。」 まず駐車するところから戸惑ったせいで、少し予定の4時よりは遅れ、4時20分頃、船山十字路をスタートした。始めは少し地面が滑って危ないくらいで問題なし。すぐに、水場があり、神社の手水舎を思わせるような平たい木の筒といつものグレーのパイプからと二口水が豊富に流れ出ていた。その後、小さい沢が登山道を横切っているところを越えて、すぐに一回目の渡渉。少し石がぐらつき危ない。そこを越えていきなり道が分からなくなる。渡渉がもう一度あるのをすっかり忘れいて、沢の左手に踏み跡らしきものがあるように感じたのでそちらに向かう。しかしすぐに行き詰ってしまったので、元に戻り、それなりに右往左往し、やっと2回目の渡渉ポイントを発見し向こう岸に渡った。そこからちょっとした土手を少し苦労して上がると、その先に標識のようなものが見えた。「ふーっ。。ブラックだとムズイな。。。」と、ここからもっと迷うとは知らずやれやれと安堵した。そのままその標識の近くまで進むも、この辺りからちょっと嫌な感じのラッセルになる。楽ではないレベルのラッセルだ。標識は登山道を示すものではなかったが、ここが広河原ではあるようだった。そこを左に曲がり少し進むと、低い木がゲートの様に両側に地面に埋められ、「関係者以外立ち入り禁止」とある。「登山者は関係者なんかな。。。?」と思いつつ、先に進む。嫌なラッセルは続いていた。標識が出てきたのでそれを見ると、「旭小屋」とある。山と高原地図を見ると、登山道とは全く違う方向だった。「全然ちゃうな。。」またゲートまで引き返すと、ゲートを前に見て右手の登山道の方向に少し踏み跡のようなものがあるように見えた。「ここか?」と思いそこを行くと登山者のトレースらしきものが出てきた。「これか?」と自信のないまま、そのトレースの方向に行く。すると嫌なラッセルに拍車がかかって来た。しかも登山道とは並行していはいるものの、一段低い。このまままっすぐ行くと沢に行ってしまうので一段登らないといけないが、あまりに急すぎて登山道とは思えない。少し前にワカンをアイゼンを付けずに装着していて、その状態で登ると真面目に滑落してしまいそうだ。急斜面の中腹ぐらいの場所にいったんザックを降ろし、狭いスペースだがワカンを外し、アイゼンを付けた。そこにザックをデポし、その上の急斜面を登ったり、右手の崖になっているトラバースを行ったりと色々探ってみたが、どうにも先が続かない。そのうち足を滑らせて大怪我しそうだった。「これ、阿弥陀岳の南陵を(無雪期に)行った時と同じパターンやな。。」いつもトレイルに乗るまでに苦労してしまう。しかも今回は雪があり滑ってしまうので、かなり身の危険を感じていた。今回はこの先も時間がかなりタイトなので「何やってんねん。。」という自分に対する苛立ちも募る。どう考えてもここから先に行くのは常識ではありえないので、絶対に間違っていると確信し、最初のゲートのところまでラッセルに苦しみながら引き返した。もうこの頃には明るくなってきて、ヘッデンがなくても回りがよく見えるようになっていた。ゲートまで何とか戻り、冷静になり辺りを見回してみた。すると、ゲートをくぐったすぐ右手に、ピンクテープがあるのが目に入った!「これやん?」とかなり急で狭い道だったがそこを登って行くと、やっとトラバースに乗れたようだった。「やれやれやっと登山開始かいな。。。」そのトラバースはかなり狭く危険極まりなかったが、先ほどの様な明らかに無理な感じでははく、頻繁にピンクテープもつけられていた。山と高原地図では破線になっているので、多少危険なのは仕方がないのだろう。 そのトラバースの後、信玄の隠岩を越えると地味な林道になる。しかし、獣の足跡の様な細いトレースあるものの、人の足跡はなかった。地味に辛いラッセルで進んで行く。やはり昨日の降雪でトレースは全部消えてしまったのか。。徐々に登山道らしくなるも、すごいだだっ広くあまり木々のない雪原を進んで行く。視界が悪いとかなり道に迷いそうだった。たまに出てくるピンクテープと方向だけを頼りに地味ラッセルを継続する。また途中からワカンを装着していた。しばらくすると雪の少ないトラバースが始まり、またワカンを外す。今回はこのワカンの付け外しを繰り返した。その後、また雪がしっかり出てくるものの、尾根らしくはなかなかならなかった。道も相変わらずあまり明確ではなくSunnto9Baroに従い方向を合わせながら進んで行く。面倒くさがって、「西岳までは一本道だからコンパス合わせなくてもいいか。」と思ったのが大失敗だった。今まで完全ノートレースの道を一人で切り開いたことがなく、しょっちゅう方向に自信が持てず軌道修正を繰り返した。 1950メートくらいからやっと尾根にしっかり乗ったようだった。しかし、ここから今までにあまりやっとことがない踏み抜き続けるラッセルが始まる。一度ずぼる地帯にはまってしまうと、次の一歩もずぼり足元にある雪を自分でかき集めて階段を作って抜け出るしかない。これを延々と繰り返した。途中でたまらずワカンを付けたが、あまり状況は改善しなかった。もうこの頃には西岳に到達するのが精一杯かなと感じ始めていた。一度はまるとその場所から抜け出るのに停滞、もがき苦しみ、次の場所へ移動する。こんなことをみんなやっていたんだな。。。ワカンを付けると踏み抜いた時にワカンが抜けずに往生した。一度、左足を抜こうとしたときに股関節が「くわっ」と伸びるような感覚になった。普通の人ならなんてことないこの感覚も、僕は股関節を骨折したときにチタンで骨を固定しそのままにしているので、地味に恐怖する。謎だったのが、普通歩きやすいのであまり木々が密集していないところを歩きたいし、得てしてそういうところが夏道のはずなのに、そちらに向かうと間違いなく猛烈に踏み抜き、抜け出すのにかなりの時間を浪費した。同じく、ピンクテープが出てきて反射的にそっちに進むと、間違いなく踏み抜き地獄に捕まった。一番確実だったのは、理由は不明だが、木々が密集している所を狙って進んで行くことだった。ザックにピッケルを付けているで、その木々にピッケルがひっかかり、毎回膝をつきながら通り抜けないといけなかったが、踏み抜き地獄に比べれば数段ましだった。 しばらくそんな感じで進んで行くと、日が出てきて眩しそうになる部分にさしかかる所に来た。2270メート付近だった。「サングラスかけるか。」とモンベルの2-Way グラスストラップで首から吊り下げているはずのサングラスをまさぐると、ない。。。。この2-Way グラスストラップは単純にゴムの穴にサングラスの柄の先を突っ込んでいるだけなので、いつも取れるんじゃないかと不安だったが、その不安が的中した。多分胸までラッセル中に手で引っ張ってしまったんだろう。夏に農鳥岳をピストンした時にサングラスを紛失し、すぐに買った2-Way グラスストラップだったが、ラッセル時は使えないことが判明した。「またサングラス失くすか。。。。」ここまでのラッセルが猛烈に大変だったので、それを下りて探しに行くことをかなり躊躇した。「ただ、あれ1万もするしな。。どうせ西岳までしか今日は行けないし、ラッセルデーにするか。。」と意を決し、探しに行くことに。しかし、2150mまで探しに行ったが、見つからなかった。「登山って登ることに余裕がないと色んなもの失くすよな。。。」と失意のうちに2270mまで登り返し、ふと足元を見ると、サングラスが雪に埋もれいているのが目に入った。「よっしゃー!!」我を忘れて吠えていた。 そこからも、格闘しながら高度を上げていくと、徐々に踏み抜きの頻度が減って来た。やはり高度が高い方が雪が締まりやすいのか。帰りには気付かず非常に後悔したのだが、2300mから2350mで眺望がかなり開けるところがある。乗鞍岳から北アルプスがすっきり見えた。このすっきり眺望は西岳の山頂からは見えない。その時は、後でどうせ写真に撮れるだろうからと思って、写真には収めなかった。やはり一期一会のごとく、「今見えて綺麗なら今撮るべし」の重要性を再認識する。この西岳に続く稜線、ラッセルしているからには違いないが、予想以上に歯ごたえがあった。そして、やっとの思いで山頂への短いビクトリーロードを歩いていた。久々に登頂の感動を噛みしめながら歩く。ふと右側を見るとゴリゴリのトレースが見える。山頂標識に辿り着きそのトレースを振り返って見ていると、登山者が一人そこから上がって来た。富士見高原から続くトレースと教えてもらう。「やっぱり普通そっちからだよなぁ。。。」 山頂で、その富士見高原から登ってこられた登山者の方と写真を撮りあい、気持ちよく談笑した。なかなか経験値が高そうな方なように感じ取った。本当はここから縦走する気でいたが、編笠山がぎりぎりになってしまった。最低でも権現岳に登頂する気でいたが、時間よりも体力が持ちそうにない。後から考えればここで引き返していれば、時間的にも体力的にもそれなりに余裕のある山行になり得たし、これから起こる悲劇にも遭遇しなくて済んだはずだった。しかし、常に欲張りな性格が災いし、青年小屋をめざして西岳を後にする意思決定をしてしまう。この判断がここまで最低の結果につながるとは予想だにしていなかった。 幸いなことに、西岳からはトレースがしっかりあった。しかし、雪量がすごく、ほやほやトレースを辿るだけでも今の自分にはかなり辛い。青年小屋まで半分くらい行った所で先ほどの登山者の方が、「先頭交替しますよ。」とおっしゃってくださり、前後を交替する。ただおそらく僕のペースがかなり遅かったようで、前後交替してからその方はかなり先に行ってしまう。「やはり、オレ相当疲れとるな。。」その後もトレースはあるものの、非常に足が重い。そこで、やはりそういう体力状況かつ精神力の低下から、愚かなことを思いついてしまう。「ワカン外すかな。。ここら辺にデポして行くか。」ともうトレースがガチガチになっていると感じていたので、無造作にそのトレースの脇にワカンを刺してしまった。さしたる見印もなく、写真に撮りもしなかった。ワカンを付けるのも面倒だが、ザックに取り付けるのが非常にストレスに感じていた。重量だけならデポしなかったが、それがデポした大きな理由だった。 そのまま、アイゼンでゴリゴリのトレースを行き、少し危険な大きく左から右回りに巻くトラバースを越え、青年小屋に到着した。ここで編笠山と権現岳へ登山道が分かれる。編笠山方面へ小屋の裏手に回りこんだ。西岳からここまで夏道のコースタイムが50分なのに1時間15分もかかっていた。ここから編笠山までは往復1時間の行程だが、今日の体力と西岳から帰りにかかる時間への不安から、編笠山は断念した。少しの間、ここで休憩し、また西岳へと戻り始めた。ここからの帰り、先ほどデポしたワカンを回収するので、トレースの右手を見ながら歩いていた。途中、ゴープロを自撮り棒からチェストマウントに付け替えるのに止まっていると、後ろから男女の二人組が来た。「お先どうぞ。」と言ったが、「よかったら待ってますので。」と言われる。「編笠山登られたんですか?」と聞くと、「ええ、権現岳登られたんですか?」とおそらくピッケル・ヘルメットをザックに付けているからか逆に質問された。「いえ、本当は行きたかったんですが、西岳まで全ラッセルで体力も時間も無くなってしまいました。編笠山は登りたかったんですが、諦めました。」そこで気になっていた質問をする。「編笠山って眺望ありますか?」もし眺望がなければ、登らなったことに対する後悔が減ると思ったからだ。すると、男性の方が「ありますよ!特に八ヶ岳の眺望は西岳よりいいですよ。」と言うのを聞いて、ガックリ。やはり、無理してでも登るべきだったな。 その後も右手に注意しながら黙々と歩く。なんだか帰り道だからなのか、体力がかなり回復して歩くペースが自然と上がってきていた。しかしワカンがなかなか出てこない。そしてとうとう、西岳でお会いした登山者の方と前後交替した所まで戻ってきてしまった。「なんでないんや。。。見落としたんか。」ヤマップやSunntoアプリの軌跡などを確認しても、いまいちデポした場所が分からない。写真でも撮っていれば、YMAPを終了して、写真をアップロードすれば場所がわかるのに。。。自分の馬鹿さ加減を悔やんだ。「しゃーない。探しに行くか。。」と、そこでまた青年小屋へと引き返す。先ほど僕を待ってくれた男女二人組とすぐすれ違い、「ワカンがデポされているのを見ませんでしたか?」と聞くも見なかったという。途中もう一組とすれ違って同じ質問をするも、彼らも見ていないという。仕方がないので、確実にワカンを履いていなかった「大きく左から右回りに巻きながらトラバースする地点」を目指して引き返す。しかし、その地点に到着するも、とうとうワカンは見つからなかった。誰かが取るとは考えれないし、やはりゴリゴリのトレースと思っていたが、行きに自分がたどったトレースは別のものだったのかもしれない。2度目の帰りは近くに別のトレースがないか注意しながら歩いてみたが、そういうトレースは見あたらず、泣く泣く諦めざるを得なかった。「まだ数えるくらいしか使ってないのに。。。」しかも、この時期ワカンは完売でお金でも解決できない。「明日また来るかな。。。?」とも思ったが、体力がもう残されていなかった。3時間の睡眠で今日は13時間登山になりそうなので、明日は休養が絶対に必要だったからだ。 西岳に到着し、誰もいない山頂で撮り忘れていた「西岳」だけの山頂標識を写真に収めた。自分の曇りな気分とは裏腹に、相変わらず天気は最高だった。やはりデポするなら、山頂標識や小屋の近辺など位置が変わりようのない場所にしなければいけないと痛感した。これも一種の「他人のトレースは信じてはいけない。」だなと、高い授業料を払ったことを悔いた。西岳からの帰りも途中まで非常に苦労した。皮肉だが、行きに自分が苦労しもがいた部分では楽をし、ワカンで踏み抜かず楽をしたところでアイゼンで踏み抜いた。中盤を過ぎると踏み抜きもなくなり(それだけ行きに踏み抜いたわけだが。。)アイゼンでも楽に降りられるようになる。その後も単調な地味ラッセル道を自分のトレースを完全に辿り歩て行く。いつも、そしてみんなが思う、「よう、こんな歩いたもんやな、オレ。。」を感じながら、カラカラになった喉と悲しみに苦しみながら歩くしかなかった。
この活動日記で通った山
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