「希少野生植物(絶滅危惧種等)の掲載」が原因で全国で多発している盗掘への対策について
はじめまして。いつもYAMAPを利用させていただいております。とある公共機関にて希少野生植物(絶滅危惧種)の保全に関わる仕事をしております。大変素晴らしいアプリで、山の情報共有により楽しみから安全まで、さまざまな可能性が広がったと思います。私も、調査からプライベートに至るまで大変便利に利用させていただいております。YAMAPのスタッフさまには、心より感謝いたしております。さて、今回はいち専門家として気になることがありましたので、個人として意見させていただこうと思います。長文で申し訳ございませんが、お読みいただければ幸いです。 新型コロナの影響で登山者増に加え、登山系アプリによる情報共有により、登山の安全性が高まる一方で、絶滅危惧種に代表される希少野生植物の場所特定につながり、盗掘・乱獲に一役買ってしまっている事例がますます増えています。はじめに申し上げますが、植物を盗掘する人間が悪いのであって、登山系アプリおよび掲載した方々が悪いのではありません。しかし、あまりの被害の多さにから、専門家による有識者会議などでは「害悪アプリ」と問題視され、保護ボランティアの間では「HANAP」などと揶揄されています。これまでも、希少種の盗掘というものはありました。YAMAPの掲示板にあげられていた希少種の掲載について危惧されるユーザーさんのご意見やYAMAPさんの対応にすべて目を通しながらも、一定仕方のないことだとしてこれまで静観してきましたが、今では被害の数が違います。YAMAPで連鎖する複数人により自生地がさらされた直後、希少種の群落が乱獲された事例に今年だけで4件遭遇しました。これら偶然ではありません。大変なことが起きています。 ●問題点● 「Q:なぜ希少種の掲載が相次ぐのか、」の答えは、①運営側もユーザー側もほとんどの人も、どれが絶滅危惧種なのか判断できない。②希少種の大切さ、保全する理由を知らない(失われた植物は戻ってこない)。③盗掘されて高額で販売されている事実を知らない(花をみんなに共有したいという一見正当な思いが、植物の乱獲に貢献していることを知らない)ことがあげられると思います。リストを掲げられても同定が難しく判別できない。もしくはそういうことも知らず気軽にアップしている。そもそもリストを見ないだろうし、見たとしてもYAMAPさんが用意しているリストはただの羅列で見づらく(しかも「絶滅した植物」の掲載からはじまっているので専門家が入っていないのでは?と思えます)、写真のものが希少種かどうかの判断をユーザーに委ねる内容になっています。植物に関心が薄いかたも一定数おられることを考えると、これでは全く解決になりません。AIで同定する試みがあるようですが、最近は分子生物学的分類が主流で、見分けがつきにくいものもあり、一定の部位に毛があるかないか、細かなところまで観察しないとわからないものもあります(疑わしきはすべて掲載させない、ということであれば問題ありませんが)。そして、ここが大変重要ですが、たとえ画像のGPSを掲載しなくても、軌跡と画像があれば、プロであればだいたいどのあたりか見当がつきますし、軌跡がなくても、山の名前がわかれば、国土地理院の地図と照らし合わせながら画像にある背景やまわりの植生から場所を特定するのは大変容易です。 希少種の写真を検知して通知がいくという試みは、ずいぶん反発があったようですが、わかっていないユーザーの反発に反応してやめてしまうのはいかがなものかと思います。植物は画像だけで見分けられるほど簡単じゃないものも多いので、限界がありますし、誤報が多発するのは仕方ありません。多くのかたは希少種の現状を本当にわかってらっしゃらない、認識が甘いかたがほとんどです。もちろん、悪いのは盗掘者や販売者ですが、思い出の共有をして、その思い出の植物がそこから永遠になくなってもよいというのは、ただのエゴでしかないと思います。そこを防ぐのが、大変ですが、運営サイドの責任だと思います。 また、YAMAP側も、もう少し専門家を入れるなりして努力いただきたいです。現在、絶滅危惧種の投稿の制限について、都道府県(自治体)ごとでは無く、環境省が定めるレッドリスト掲載種の投稿を対象としているとのことですが、この考え方は間違っています。長野県にはいっぱいあっても神奈川で絶滅寸前という植物はあり、地域ごとに遺伝的に異なる系統であることも多く、多様性の維持という点でそれらは守られねばなりません。 以上のとおり、現在のYAMAPさんのご対応では、正直、防げないと思います。そもそも希少種の種類だけではなく、様々な知識を得ないと対応できないので、酷な話だと思います。ですので、私なりに現段階での解決案を考えてみました。よろしければ参考になさってください。 【解決策のご提案】 1:希少種を含む花の画像の投稿はモーメントで行うよう促し、県・地域に留め具体的な山名の掲載を避けさせる(ルール化する)。規約違反には数ヶ月利用停止など、ペナルティを設けないとユーザー側が努力することはないと思います。 2:活動日記で掲載したい場合は軌跡を掲載せず、画像の撮影地情報をOFFにした場合に限り公開を許可する。前述のとおり、多くのかたが画像のGPSをOFFにするだけで大丈夫と思っていますが、全く無意味です(専門家や盗掘者にはわかる)。 3:絶滅危惧種掲載の疑いで通知を受けた人は、自分で調べて非公開か公開を判断せよ、というYAMAPさん側の対応に不満をおっしゃっているかたがいました。確かに、植物が好きな人ならよいですが、普通は敬遠すると思います。なので、「不適切なコンテンツを通報する」に並列して、「希少野生植物の掲載を通報する」を設けてはいかがでしょうか。通報には植物名、カテゴリー(ランク(都道府県・環境省)、などいろいろ書かなくてはいけないようにしていたずら防止をします。誤報が多いでしょうし、勘違い、同定違いがあるとは思いますが、即時いったん非公開にするのがよいと思います。運営側から通知をもらったり、通報制度があれば、少しは気を遣うようになると思います(確認方法は自身で確認させるのか専門家を雇うなど)ので、抑止力にはつながると考えます。 以上が案です。これらが難しければ、植物の写真掲載を禁止すべきです。そんなのはつまらないですし、YAMAPの意義が損なわれると思います。私自身がユーザーとして、YAMAPのいい点を理解しているからこそ、国関係の有識者会議などで「害悪アプリ」と認識されていることを悲しく思います。守秘義務があって詳しくはお伝えできないのですが、私も国の機関との会議においてこの件は懸念事項としてお伝えさせていただいております。どうか、対応のご検討よろしくお願いいたします。日本の消えゆく野生植物保護のため、どうぞよろしくお願いいたします。
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