大岳山・御岳山・御前山(東京,山梨)
2026.06.13 (土)日帰り
前回とは打って変わって快晴だ。
バスに乗るまでは、先週ガスに包まれたあの山にもう一度登り、景色の貸しを返してもらおうかとも考えていた。
だが、なるほど奥多摩には山がいくつもある。
同じ山にもう一度答えを求めるより、今日は別の山に呼ばれてみるのも悪くない。
そういうわけで、奥多摩三山のひとつ、御前山だ。
源流の巨大なダムから山に入る。
湖の青と、空の青と、山の緑が、まるでこちらの機嫌をとっているような朝だった。
だが、御前山はそんな爽やかな顔をしながら、不意に急登を差し出してくる。
当たり前のことだが、美しいものはいつも別の顔を隠し持っているものだ。
湖を背にして高度を上げていく。これもいつものことだが、最初の1ピッチがキツい。いきなりの急登に身体が喘ぐ。俺はなるロナウドの尻ロナウドの尻、未来少年コナンのような足槍でも何でも摑める足、などと何度も唱えながら最初のピークへ辿り着く。
2ndピッチで勝手に順応した両脚で、いくつかのピークを越えていく。最後は鋸山から一気に多摩川源流の街へ降りていく。
先週と全く同じルートでやって来た奥多摩だったが、そこにあったのは先週のやり直しではなく、まったく別の新しい一日だった。
しかし、山の天気というものは最後まで人との馴れ合いを良しとしないようだ。天狗のあたりで、突然の雷雨に遭った。
さっきまでの晴天が嘘のように空が暗くなり、大粒の雨が落ちてきた。
しかたがないので、愛宕神社でしばらく雨宿りさせてもらう。そこにいた見知らぬハイカーと賽銭箱を挟んで座り同時に空を見上げる。
下界へ戻ると、また嘘のように晴れている。
またしても、だ。
秩父や奥多摩の山には、どこか天気までこちらを試してくるようなところがある。
奥多摩湖から登り、御前山を越え鋸山から急勾配を降り、最後に雷雨をやり過ごして、また同じ多摩川源流の街へ戻ってきた。
その後、そのまま愛車を引き取りに行くことになっている。
ここ数週間、電車に揺られバスを待ち知らないハイカーたちのザックを眺めながら同じ山域へ運ばれてきた。
そうして自分の足で山を歩く前に、まず誰かに身を預ける時間がある。こんな登山も、案外嫌いではない。
けれど、やはり自分の愛車が戻ってくるとなれば話は別だ。
山から下りたあと、今度は愛車を迎えに行く。
二ヶ月振りの再会は、いったいどんな感情を呼び起こすのだろうか。
山は終わったはずなのに、一日はまだ終わっていない。そしてたぶん次からは、また新しい登山が始まるのだろう。
~89 / マウンテンボーイの憂鬱 より