白き衝天「槍ヶ岳:VR大喰岳西尾根」
槍ヶ岳・穂高岳・上高地
(長野, 岐阜, 富山)
2025.04.04(金)
日帰り
息を切らして大喰岳に上がると、白銀の稜線に、天を衝く槍の威風堂々たる姿を見た。たとえ記憶が色あせてゆくものだとしても、この時の感情は薄れることなくずっと僕を支えるものとなるだろう。
・
去年5月、槍ヶ岳への単独行を実行。敬愛と孤高の岩峰は、厳しくも美しい姿を魅せた。もっと雪の多い4月に、かねてから気になっていた大喰岳西尾根よりアタックしよう。
・
雪の槍ヶ岳へのアクセスは、無雪期ルートである飛騨沢の雪崩リスクを回避するため、①大喰岳西尾根②中崎尾根③南岳西尾根④西鎌尾根などが挙げられる。その中でも①は、槍ヶ岳の南にある3101mの大喰岳から西に延びる尾根で,冬期槍ヶ岳へのルートの中で最も短く最も安全なルートとされている。とは言え、一般登山道では無い、バリエーションルートだ。気を引き締めて挑む。
・
気合いのフライングにより、23:52開始。相変わらずの睡眠不足だ。林道は淡々と早歩きで歩を進める。開始時に-3℃、その後白出沢で-6℃まで下がった。ここで、ハードシェルパンツ、ゲイターを装備。その後適当な所で沢筋に降り、長い長い飛騨沢を詰めていく。滝谷は知らぬ間に通過していた。道中、賞味期限ギリギリのスノーブリッジがあった。そろそろ、夏道を使った方が良い時期になってきたのかもしれない。いくつかのデブリを越えるうちに、突如開けた雪原に出る。槍平だ😳 え、あの槍平って冬はこんなに広くて白いんだ!小屋の1階は雪に埋まり、冬季小屋も雪の重みに耐えていた。
・
さぁ、ここまで来れば林道区間終了、徐々に飛騨沢が開けてくる。標高2400~500mあたりで西尾根の末端に近づくが、尾根にはもう少し飛騨沢を登ってから取付いたほうが容易である。やがて、『宝の木』と呼ばれるダケカンバが出現する。飛騨沢自体、上部は斜度のある斜面で十分雪崩が起こりうる地形だが、この雪崩地形の中,奇跡的に雪崩を回避しているこの宝の木は、昔から大喰岳西尾根の目印となっている。
・
大喰岳西尾根は、体感非常に長い尾根だった。序盤は斜度50°ほどの雪面をひたすら這い上がるのだが、ここがクラストしておらず、膝上まで沈む💦 もがきながら何とか岩場に乗り上げると、緩やかだが時折岩場のある尾根に乗る。特段危険箇所は無いが、凍結している箇所やアイゼンの前爪を立てて4速で登る急斜面も見られるため、臨機応変な通過が求られる。やがて幽玄な笠ヶ岳、奥深い裏銀座が白銀の雪を纏って輝き始めた。上部まで上がると槍ヶ岳、穂高岳、焼岳、乗鞍が揃った。ここで、ビーナスベルトの帳が降り、まず笠の山頂にスポットライトが当たる。夜明けだ。長い夜だった。
・
夜が明けても、この西尾根には太陽光が届かない。また春疾風の西風を喰らい続けることで、足先は冷たく、指も凍えてきた。気温は-12℃、早く陽の光を浴びたい一心で1歩ずつ進み続ける。そしてついに、、、
・
息を切らして大喰岳に上がると、白銀の稜線に、天を衝く槍の威風堂々たる姿を見た。たとえ記憶が色あせてゆくものだとしても、この時の感情は薄れることなくずっと僕を支えるものとなるだろう。
・
絶景に背中を押され、槍ヶ岳へ!尾根には雪庇が出ていたので、敢えて西側斜面をトラバースしながら槍へ向かう。大喰岳の山頂標識もだったが、飛騨乗越の標識も雪に埋まっていた。稜線上でも風に飛ばされず、これだけ積もっているのは珍しいのでは👀 やがて、念願の槍ヶ岳に対峙する。
・
氷食先鋒は天に向かって圧倒的な存在感を放っていた。先行者のクライムダウンする姿を見ながら装備を整え、いざ尋常に、出撃。個人的核心部分は、中腹のアイス&岩のミックス帯と、梯子直下の雪壁だ。前者は慎重なルート取りをしないとアイスやロックに次の一手を阻まれる。後者は掴むものがないため、確実な支持を取らないといけない。時折バラバラと氷塊が降ってくる。1部手の甲に直撃したが、怪我には至らなかった。これらの核心を越え、2連ハシゴを登りきると穂先へ。
・
残雪期槍ヶ岳登頂!空気は澄んでおり、どこまでも見通せる絶景だ。裏銀座はクリーミーな雪のホイップに塗られ、全ての面が繋がって見える👀 どこの山からも見える槍ヶ岳からは、逆に全ての山が見えるのだ。ここで、今日笠ヶ岳を登っている相棒のRyotaとビデオ通話📸 これから4の沢を下るらしい。名残惜しいが、お互い下りこそが核心であることを肝に命じて下山する。
・
前述の核心が、下りでは数段難しくなる。だがこの冬は、ロングにもバリエーションにも耐えてきた。これまでの雪山スキルを駆使して、無事に山荘へ戻り、胸を撫で下ろすε-(´∀`;)ホッ
・
雪も落ち着いており、雪崩の心配が無いと判断したので、下山は飛騨沢から!自己誘発雪崩を起こさぬよう、ライン取りを意識しながらトレランで走り抜ける。この時、適当に接地するとズボった足が雪や岩にハマり、骨折する可能性がある。爆速下山にも技術が必要なのだ。ナイトハイク時には見られなかった穂高の絶景を拝みながら、走れるところは全て走り、無事12時に下山完了🗻
・
今回も達成感の大きい山行となった。敬愛と孤高の岩峰は、親愛なる憧れの山頂へと変わった。
・
※ この後、帰宅して1時間仮眠したあと、金華山帰れまテンへ🏃♂️ 詳しくはログを見てください。