27:02
26.2 km
2512 m
厳冬期の光岳は踏み抜き地獄
聖岳・大沢岳・光岳 (長野, 静岡, 山梨)
2025.01.11(土) 2 DAYS
厳冬期の光岳に挑戦しました。 結果的に事故や怪我もなく行って帰ってくることはできたのですが、計画が破綻していました。 恥さらしだとは思いますが、真似する人がいないよう失敗事例として公開することにします。 【当初の計画】 <1日目> 1:00芝沢ゲート 2:30易老渡登山口 11:30易老岳山頂 12:30三吉平 14:00イザルガ岳 14:30光岳小屋 15:00光岳 15:30光石 16:00光岳 16:30光岳小屋 <2日目> 7:00光岳小屋 9:30易老岳 13:30易老渡登山口 15:00芝沢ゲート ※1日目を終えた段階で下記に変更 1:00光岳小屋 8:00易老岳 11:00易老渡登山口 12:00芝沢ゲート 【天気】 1日目:快晴/弱風 2日目:曇天/風あり雪→薄曇り→雪→霰 【道の状況】 芝沢ゲート-易老渡登山口:道路歩き。滑り止め無しでも歩けるが、凍結箇所があるので転倒注意。落石も注意。 易老渡登山口-面平:急登をくねくね登る。薄雪が乗って滑る感覚があったので12本爪アイゼンを着けた。最適なのはチェーンスパイク。 面平-三角点:急登が続く。徐々に雪が深くなっていき、足が沈むようになる。人間のものと思われる踏み跡があったが、しっかり沈んだ。 三角点-易老岳:間のコルがとても急で、しかも両側が急斜面になっているため、アイゼン推奨。 易老岳-三吉平:踏み跡無し。踏み抜いて腰付近まで沈む箇所がほとんどだった。 三吉平-イザルガ岳分岐:沢状の部分に道がある。変わらず踏み抜きはひどい。徐々に木が少なくなり、開けた場所を歩くようになる。雪崩地形 イザルガ岳分岐-光岳小屋:傾斜は少ないが、変わらず踏み抜きは多い。 光岳小屋-光岳:ほとんど樹林帯の中を歩く。最後まで踏み抜きがひどかった。 【結果】 <1日目> 2:41芝沢ゲート → 面平までかなり順調に進むも、雪が深くなりペースダウン。ワカンを着けたが容赦なく足は沈んだ。 10:39易老岳 → この時点で16:30くらいには光岳小屋に着けると見込んだものの、ルート取りと踏み抜きに大苦戦し到着予想が下方修正を続け、イザルガ岳分岐に着く頃には完全に夜となった。 こののち光岳小屋前の樹林帯で道を誤り、更に時間をロスした。 19:35光岳小屋 → この状況で登頂するか悩んだが、向かうことにした。正確な道を歩けず、さらに最後まで踏み抜きに苦しめられた。この結果、山頂着は21:21となった。 かろうじて体力こそ持ったものの、すっかり気力は無くイザルガ岳山頂と光石は断念した。 <2日目> 5:29光岳小屋 → 寝坊により出発が大きく遅れただけなく、いきなり大きく道を間違えてしまい、早くも時間をロスした。 足の装備は小屋から登山口まで12本爪アイゼンで通した。自分の踏み跡を狙って歩いたが、やはりそれでも踏み抜いた。 それでも下りがメインだったこともあり、心配したほどの時間はかからず進むことができた。 9:55易老岳 → 徐々に歩きやすくなっていったこともあり、ここからは順調に進むことができ、13:15には芝沢ゲートへ辿り着くことができた。 【アクシデント】 ・1日目の夜明け前の時点で誤ってカーボン製ストック1本をアイゼンで踏んでしまい、使用できなくなった。 ⇒1日目はピッケル+残りのストックで対応。2日目はストック1本のみ使用。 ・充電器を2つ持参したものの途中でケーブルが断線したらしく、充電できなくなった。充電できなくなったのが2日目昼前のタイミングであったので影響は少なく済んだ。 ・1日目の日没後に木の枝にぶつかりヘッドランプを落としてしまったが、満月の3日前で開けた場所はかなり明るく、しばらく気付くことができなかった。予備を持ってきていたために助かった。(翌朝、落としたヘッドランプが光り続けていたために容易に発見することができた) ※昨年11月の六甲全山縦走大会時にヘッドランプを家に忘れてしまい、三ノ宮駅前で急遽購入していたために持っていました。予備が大切なのはその通りなのですが、この時家に忘れていなければ持っていなかったと思います。 ・風を感じる場面がほとんどなく、短時間なら素手になっても冷たくならないことからグローブを外してしまうことが多かった。この結果、親指と人差し指がすっかり荒れてしまい、とにかく痛くて仕方ない。 …一方で、冬季避難小屋があったこと、両日とも風の影響はほとんど無かったこと、どうにか体力は持ったこと、喉が渇くことも少なく食料・飲料ともに余る程度だったこと、寒さに震えることもなかった点は、大きく有利に作用したと思います。 【感想】 訪問ハードルの高い南アルプス南部。 特に、悪沢岳・赤石岳・聖岳・光岳を縦走しようとすると位置関係的にネックになるのが光岳です。 結局昨年の夏は南アルプス南部へ行けなかったし、今度の夏に計画するにしても簡単でないのはわかりきっています。 一方で、調べてみると冬に登っている人もいるようです。 夏なら単体で登るのは勿体なく感じてしまうのですが、冬なら自分を納得させることもできます。 気になる三連休の天気予報も悪くはありません。 夏でも距離が長いことは有名だし、ラッセルで覚悟が必要だということでしたが、これらを理解した上で、この土日で挑戦することにしました。 腹ごしらえと買い出しを済ませ、芝沢ゲートの駐車場に着いてみると、他に車はありません。 今まで登った山で完全に自分ひとりしかいないということは無く、きっと後続の方が現れると思っていたのですが、一向に人の気配は感じられません。 易老岳から先は完全にまっさらな雪です。膝上を越えて腰辺りまで沈んでいきます。 また、大きく道を外れないにしても、最適解を探しながら進まなくてはいけない点も難易度を上げていきます。 誰か人に会えることを期待してしまったのですが、とうとうこの日は誰にも会うことはありませんでした。 今回最大の失敗は、単独行動で臨んでしまったことだと思います。 到着予想は下方修正を続け、小屋に着いたのは出発から17時間後です。 寝る時間や、翌日中に帰ることを考えると目的地自体も見直さないといけません。 光石とイザルガ岳は早い段階で諦めましたが、山頂へ向かうかどうかはかなり悩みました。 潔く小屋を最終地点とするのが客観的には正解な気がしますが、向かったのは意地だったと思います。 最後の最後まで踏み抜きに苦しめられ、途中身動きも難しくなるくらいでした。 山頂に到達できても、普段のような気持ちのいい達成感とは違います。 まるで来るものを拒み続けているようにさえ感じられます。 それでも小屋上部から見えた雲の無い景色は見事です。 月明かりに照らされた雪原の向こうに、赤石岳や聖岳が恐ろしいくらいにくっきりと厳めしい姿を見せています。 そして南側に見えている夜景は静岡県の市街地でしょうか。 こんなに人里離れた山深い場所から海に近い街(おそらく)が見えているとは、想像もしませんでした。 綺麗に写真に収められないのが悔しくて仕方ありません。 (あいにく翌日の出発時は雲の中でした) どうにか2日目は心配していたほど時間はかからず、面平の手前で5人組パーティーの方とお会いすることができたときには心底安心し、下山直前で一気に疲れが押し寄せました。 無事に下山できたのはよかったし忘れられない体験になったと思いますが、人様には到底お勧めはできません。 最終的には自己責任であるにしても、この時期にソロで一泊二日を前提にしない方がいいです。 そしてどうにか無事でいられたのは、冬季避難小屋の存在が何より大きいです。 テントに泊まるのもいいかもしれませんが、安心感が段違いです。 冬季休業期間中に荒らされてしまった小屋の報道もある中、それでも開放いただいているのは感謝しかありません。 今回はイザルガ岳も光石も行けませんでした。 ぜひ夏の営業中に訪問し、直接お礼を言いたいです。 本当にありがとうございました。