【事故報告】伊藤新道遭難死亡事故

2021.10.09(土) 2 DAYS

チェックポイント

DAY 1
合計時間
3 時間 21
休憩時間
10
距離
9.4 km
のぼり / くだり
315 / 201 m
DAY 2
合計時間
9 時間 37
休憩時間
22
距離
14.6 km
のぼり / くだり
516 / 656 m

活動詳細

すべて見る

2021年10月10日朝、長野県大町市の北アルプス、湯俣川沿いの伊藤新道を遡上中の6名パーティ(私もっちとパートナーを含む)のうち、1名が旧第一吊橋跡(当時)上流側左岸(下流から見て右)、標高約1480m付近の岩場(通称「ガンダム岩」)付近にて10数m墜落する遭難事故が起こった。 遭難者(以下「A氏」)は約3時間半後に県警山岳救助隊によりヘリコプターへ収容され、県内の病院へ搬送されるも、出血多量により昼前に死亡が確認された。 伊藤新道は、高瀬ダムから約10kmほど奥に進んだ、高瀬川が湯俣川と水俣川とに分岐した地点から始まる。湯俣川に入ってまもなくの所にある噴湯丘から、湯俣川の右岸(下流から見て左)を遡上すること約30分でガンダム岩に到着する。3枚目の写真にある、高さ5mほどの巨大な岩である。 翌2022年の三俣山荘のご関係者による整備前まで、この場所を通過する手段は「①岩の下の空洞を水線沿いにくぐる」のが主流で、増水時は「②岩右側の土壁を超える」か、「③左岸のザレ場を高巻く」かする必要があった。 私たち6名全員が、ガンダム岩は初見だった。事故現場の川面は急流、右岸は垂直の岸壁に阻まれ、左岸は急峻なザレ場であった。 そこで、経験豊富なクライマーであるパーティリーダーのA氏を中心として、メンバー間でルートファインディングを10数分間に渡って協議した。その結果、ガンダム岩を小さく高巻くルートを選択した。その後、フォロワーのビレイによりロープを伸ばしてルート工作を行ったA氏だが、ランニングビレイをかけた岩が突如崩れ、10数m下の岩場へほぼ垂直に墜落した。 事故発生から11分後に県警への連絡を行なうとともに、応急処置を施したものの、複数箇所の骨折や大量出血があると見受けられ、事故から1時間半ほどで意識レベル低下の徴候が顕れ始めた。 県警ヘリコプターへ収容される直前まで辛うじて意識があったものの、収容時に心肺停止状態に陥った。 A氏を除いた5名は、A氏がヘリコプターに収容された後、自力下山を開始した。サブリーダーのみ先行して病院へ、残り4名は管轄警察署で事情聴取を受け、夕方にA氏のご家族(以下「A夫人」)とメンバー5名が搬送先の病院にて合流し、A氏と無言の対面をした。 A夫人から事故報告書の提出を求められたため、メンバー間で協議の上、サブリーダーと私が中心となって報告書を作成し、事故から4日後に第一版を提出した。その後、A夫人による校閲、修正依頼を経て、事故から2週間後に完成させた。 事故から約3週間後、ご対応いただいた警察署と病院へ、A夫人、サブリーダー、私の3名で訪問し、事故報告と、ご迷惑をおかけしたことに対する謝罪を行なった。 私は、そこで交わされた意見を元に内容をまとめ、山岳遭難救助の実態と遭難防止の観点、事故による身体状況や応急処置、救助活動による身体的影響などについて考察した文書を作成し、翌年1月下旬にA夫人に提出した。 以上をもって、本事故の一通りの事後処理は終了となった。 翌年秋に、私とパートナーが伊藤新道を再訪したことで、一区切りとなった。 https://yamap.com/activities/20324239 追記 2023年4月、上記の報告書と考察文書を基に、再度考察を加えた文書を作成した。 https://drive.google.com/file/d/1Ovr1vXeLCuG4QmmcX2nsn1U8hX-i0jcV/view?usp=sharing ※著作物ですので、転載時はDMにてご一報ください

野口五郎岳・真砂岳・湯俣岳 晴嵐荘への橋は、2019年の台風で流失。下流側で渡渉しないと晴嵐荘へ行けなかった。2022年に吊橋が再架橋され、渡渉せずとも行けるようになった。
晴嵐荘への橋は、2019年の台風で流失。下流側で渡渉しないと晴嵐荘へ行けなかった。2022年に吊橋が再架橋され、渡渉せずとも行けるようになった。
野口五郎岳・真砂岳・湯俣岳 高巻きを降りたところ。このすぐ上流が、新第一吊橋の架橋予定場所。
高巻きを降りたところ。このすぐ上流が、新第一吊橋の架橋予定場所。
野口五郎岳・真砂岳・湯俣岳 そこからまもなく、事故現場のガンダム岩。翌年の写真と比較すると一目瞭然だが、ガンダムの下の水量はかなり少ない。

翌年のガンダム岩
https://yamap.com/activities/20324239/article#image-275678270
そこからまもなく、事故現場のガンダム岩。翌年の写真と比較すると一目瞭然だが、ガンダムの下の水量はかなり少ない。 翌年のガンダム岩 https://yamap.com/activities/20324239/article#image-275678270
野口五郎岳・真砂岳・湯俣岳 左奥のガレ場。高巻きルートとして検討された。
左奥のガレ場。高巻きルートとして検討された。
野口五郎岳・真砂岳・湯俣岳 正面の土壁も同様に検討された。
正面の土壁も同様に検討された。
野口五郎岳・真砂岳・湯俣岳 後で識者に訪ねたところ、この土壁は5.6程度のグレードであるそうだ。
後で識者に訪ねたところ、この土壁は5.6程度のグレードであるそうだ。
野口五郎岳・真砂岳・湯俣岳 結局、大高巻案も却下となり、リーダーが小高巻きのルート工作を始めた。
結局、大高巻案も却下となり、リーダーが小高巻きのルート工作を始めた。
野口五郎岳・真砂岳・湯俣岳 事故から約45分経過。既にサブリーダーが警察へ通報し、私が身体評価と応急処置を施した後。
事故から約45分経過。既にサブリーダーが警察へ通報し、私が身体評価と応急処置を施した後。
野口五郎岳・真砂岳・湯俣岳 事故地点。左が事故発生前で右が発生後。
事故地点。左が事故発生前で右が発生後。
野口五郎岳・真砂岳・湯俣岳 県警の救助隊が到着し、A氏の収容作業中。右側に写っているのは私。この時点ではまだA氏は呼びかけに応じていた。5分後にホイストでヘリコプターへ収容された。ヘリが去った後、残った5名で自力下山した。
県警の救助隊が到着し、A氏の収容作業中。右側に写っているのは私。この時点ではまだA氏は呼びかけに応じていた。5分後にホイストでヘリコプターへ収容された。ヘリが去った後、残った5名で自力下山した。
野口五郎岳・真砂岳・湯俣岳 それから4時間後に高瀬ダムへ下山した。その間、警察署からの携帯電話への不在着信が多数入っていたが、実際に鳴動したのはサブリーダーの1回と私の1回だけだった。高瀬ダムも携帯電話は圏外であり、タクシー会社へ連絡するには、この10円玉専用の公衆電話を使う必要がある。
それから4時間後に高瀬ダムへ下山した。その間、警察署からの携帯電話への不在着信が多数入っていたが、実際に鳴動したのはサブリーダーの1回と私の1回だけだった。高瀬ダムも携帯電話は圏外であり、タクシー会社へ連絡するには、この10円玉専用の公衆電話を使う必要がある。

もしも不適切なコンテンツをお見かけした場合はお知らせください。