活動データ
タイム
38:06
距離
58.0km
のぼり
4323m
くだり
3741m
チェックポイント
活動詳細
すべて見るオプタテシケ周辺は大雪山塊の中でも最も手つかず。通行人もいない。エスケープルートもない。美瑛富士からヒサゴ沼まで18時間の行程に小屋がない。降雨だと悲惨。水場がない。熊もいる。だがこのルート、自然はすごい。日本で最高のロングトレイルの一つだ。本州の偉そうな北アルプスがまるでちんけに見える(笑)。 これまで大雪は3回行ったが、今回初めて十勝岳方面から旭岳まで縦走した。2日目から快晴が続き、幸運だった(私が下山してからも数日好天が続いた)。 雪上歩行は皆無。他の人たちの記録から、ヒサゴ沼に降りるならその区間のみチェーンスパイク必携かと思ったが、持っていかなかった。結局ヒサゴ沼にも行かず。遠目から見た感じ、その区間も雪はなくチェンスパ不要な感じ。裏旭の登りも雪上は通らない。 踏み跡は全区間明瞭。だが、南の区間ほどマーキングが少ない。だだっ広い場所が多いので、視界が悪いとき岩ゴロゴロの場所は道がわからなくなりやすい。GPSスマホ地図必携。トムラウシ以北は人が多い。 今回のヤマップの平均ペースは「ややゆっくり」になっているが、私としてはできるだけ速く歩き続けた。毎日12-14時間の歩行なので、歩行ペースを落とすと予定通りに泊まっていけない。素晴らしい景色を楽しむ余裕がなかった。また行く時のためにとっておく。 「チェックポイント」の2日目が途中で切れている。実際は18時前まで歩いた。3日目は朝3時半から歩いている。 【1日目。吹上温泉から美瑛富士避難小屋】 縦走なので車だと回収が大変。レンタカーはやめた。上富良野駅から町営バスで十勝岳麓の吹上温泉まで行き13時半に登山開始。吹上温泉キャンプ場の水場で給水。4.5リットル持参した(これで3日目までもった)。 初日はわりと平坦な山麓の道。バスが13時しかなく時間がなかったので、ピークは十勝岳も美瑛岳も美瑛富士も登らない。望岳台から十勝岳への登山道を通るところだけ人が多かった。他の区間は誰もいない。 雲ノ平の先にある「函状の深い枯れ沢」は、登り返しのハシゴの下が、土がかぶった残雪の塊を登らねばならず、登っても足元が崩れ続け、ハシゴにたどり着けず苦労した。ここだけ要注意。 その後雨が降り出した。すぐやむだろうと思って雨具ズボンをはかなかったので、すぐずぶ濡れに。雨具はズボンもこまめな着脱が必須だと思い知った。日暮れの30分後ぐらいに小屋に到着。3人のソロの先客。オプタテシケ方向の人はいない。この小屋は水場が貧弱だそうだが、降雨したので水たまりがたくさん。 【2日目。美瑛富士小屋からトムラウシ南沼の手前まで】 丸一日、誰にも会わなかった。夜明け少し前に出発。ガスガスの強風。視界3メートル。石垣山に登るあたりがだだっ広く、マーキングがなく少し道に迷う。オプタテシケから双子池に下る最初が、横が切れ落ちており、やや恐ろしい。双子池のテント場は、前日の降雨で水たまりと化した部分が多く、良い野営場でなかった。双子池のあたりは道も深い水たまりの連続になっており迂回困難、靴がズボスボに。このあたりからガスが晴れ、好天になった。 コスマヌプリの手前、山と高原地図にヒグマ注意と書いてあるあたりで、熊の臭いがした。熊が風上にいると、犬の体臭を強めたような野獣の臭いがする。トレッキングポールの先に大き目の鈴を付け、鳴らして歩く。 ツリガネ山からの下山道に鎖があるが、岩場でなく溝状の土の急斜面なので危険はない。ツリガネ山の手前や、三川台に登り返す手前、三川台の上に、平たい砂地があってビバークできる。日没直後ぐらいにトムラウシ南沼に着けそうだったが、無理をせず、1時間ほど手前のハイマツ地帯で平たい場所を見つけてビバークした。この時点で水は、途中給水なしで3リットル残っていた。 ビバークは、できるだけペグを打たず、トレッキングポールを立てず、ツェルト内で持参した傘をさし、息ができる空間を作って寝た。安眠できた。ペグを打つほど「テント泊」に近づくので「不正行為」とされがち。できるだけペグを打たず、合法にビバークする。この方式なら、有料有人の小屋の近くで「正しく」無賃野宿することもできる。 【3日目。トムラウシ南沼から白雲岳避難小屋の先まで】 この日も好天。トムラウシ南沼のキャンプ場の水は枯れていた。キャンプ場は5時すぎの時点で3張だけ。トムラウシ山頂に行くつもりが、地図を確認せず、巻き道を歩き出していた。5分後に気づいたが、これも何かの運命かと思い、引き返さず、トムラウシ山頂は行かなかった。トムラウシ山頂はすでに行ったことがあるし、山頂周辺は岩ばかりの嫌らしい道だし、行かなくても良いかと。私は「ロングトレイルを歩く」のが楽しく、登頂は重要でない。山は頂上だけでない。ピークを踏まないとその山に行ったことにならないという、ヤマップや百名山ハンターらのあり方は間違いだ。 化雲岳あたりから多くの人とすれ違う。この日は土曜日。1日で20-30人と会った。化雲岳の下の湿地帯に流れ込む水を浄水して給水した。湿地の水は鉄くさい。 化雲岳の手前や、忠別岳頂上の手前で、熊の臭いがした。いずれの場所も、下の方に広大な緩斜面のハイマツ地帯があり、熊はそこに住んでいるのだろう。 忠別沼の手前で「この先に熊がいた」と言う人とすれ違った。平が岳の手前の湿地帯脇に、流水と登山道が並行する区間があるが、そこに大人の熊がいたと。水を飲みにきていたらしい。20分後ぐらいに私が通った時はもういなかったが、そのあたりで3回ほど熊の臭いがした。まだ近くにいるのだろう。大雪に何度もくるほど、熊が近くにいても怖いと思わなくなっている。ただ、鈴は盛んに鳴らして歩く。鈴の音を聞いて熊が近づかないでくれるのかどうか不明だけど。 週末なので白雲岳避難小屋は予想通り、テント場も20張ほどで混雑しており、小屋も人があふれている。「コロナ対策(笑)」を重視して、ここに泊まらず、テント場の下で水だけいただき、少し先でビバークすることにした。白雲岳分岐に平地があるが、日暮れ前だったのでもう少し先の北海岳の下の方まで行き、平たい木のベンチの四方にツェルトを引っかけて固定し、中で傘をさして泊った。夜中に強風になったが、まあ安眠できた。ツェルトがバタバタいうので耳栓は必携。夜中に耳栓がとれてしまい、探すのが大変なので複数必携。 【4日目。北海岳の手前から旭岳ロープウェーまで】 この日はもともと層雲峡に降りる予定だったが、朝起きてみると、旭岳が美しく立っている。行くしかない。夕方に札幌の友達と会う約束をしており、11時半旭岳温泉発のバスに乗れば良い(実際は9時半のバスにちょうど乗れた)。裏旭に雪渓が残っているが登山道はその横を通るだけ。快晴の旭岳山頂には誰もいない。こんなの初めて。十勝岳からオプタテシケ、トムラウシ、忠別岳。通ってきた山々が全部見える。大いなる感慨と充足感。 下山していくと、ロープウェーから人がどんどんのぼってきた。人々とすれ違う時、繰り返しハッカやカラタチのような匂いがした。これはもしかして、人々が使うボディソープの香料の匂いでないか。熊は犬の臭い。人はハッカの匂い。もしかすると4日間、人に会わず、においのあるものをほとんど食べていないので、私の嗅覚が敏感になり、熊だけでなく人のにおいも感じるようになっていたのかも。この状態は一時的で、下山してロープウェーとバスを乗り継いで旭川に降りるころには、人の匂いなど感じなくなっていた。
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