奇跡の八甲田山 歓喜の咆哮

2021.10.09(土) 日帰り

チェックポイント

DAY 1
合計時間
6 時間 18
休憩時間
1 時間 29
距離
9.2 km
のぼり / くだり
745 / 745 m

活動詳細

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紅葉前線は酸ヶ湯付近まで降り、毛無岱あたりがまさに見頃だろうと予想して、酸ヶ湯を起点に主峰の八甲田大岳を反時計回りに周遊しました。 登山道が大混雑する早朝の出発を避け、夕日に輝く毛無岱(けなしたい)を見るため、あえて遅い時間の出発でした。 上毛無岱と下毛無岱を結ぶ長い階段に至ると、眼下には草黄葉があざやかに色づく美しい高層湿原が広がっていました。湿原の彼方に見える津軽平野には、ひときわ高く聳え夕焼けに浮かぶ岩木山。この感動は、紅葉の涸沢を初めて訪れた時に匹敵するほど。 陽が傾くにつれ樹木の影が長く伸び、夕陽が湿原の色を濃く染めていきます。湿原は枯草色から、淡黄、黄支子色へと刻々と表情を変え、日没直前の光で黄金色に輝き、その後は急激に色彩を失い、橙色、赤朽葉色、琥珀色と変化していきました。 登山者の誰もが歩みを止め、感嘆のため息をつき、撮影機材を手に直立不動の姿勢とっている光景は、極限の八甲田で凍てつき立ち尽くし、奇跡の生還を果たした後藤房之助伍長の姿に重なりました。ただし、彼は絶望の淵にあり、我々は歓喜の絶頂です。 夕陽が完全に沈むまで絶景を堪能し、Headlightの灯りを頼りに夜間行動しましたが、登山道は濡れて滑りやすく転倒の危険性が高いため、夜間の下山は決しておすすめしません。 写真は全てFUJIFILM X-E4で撮影しています。 現像は、Film写真を暗室で現像する際に使われる覆い焼きと焼き込みのみ。 色表現は、色の再現性にこだわる富士が誇るfilm simulationのASTIAで記憶色に近づけています。鮮やかな原色再現で風景撮影に最適なVelvia/Vividはあえて使わず、やわらかさと高彩度が特徴のASTIA/Softにしていますが、この色はちょっと控え目なので、実際はもっと鮮やかな色です。 余談ですが、暗闇の下山途中、八甲田雪中行軍遭難事件を思い浮かべながら歩いていました。 新田次郎の小説や映画「八甲田山死の彷徨」で知られるこの事件は、1902年(明治35年)1月に日本陸軍第8師団の歩兵第5連隊が、極寒の八甲田山で冬季軍事訓練中に遭難し、参加者210名中199名が死亡した痛ましい惨事で、世界最大級の山岳遭難事故です。 僕は、直立したまま仮死状態で発見され奇跡的に生還された後藤房之助伍長の地元在住で、後藤伍長のお孫さんに良くしてもらっています。 後藤伍長に続きその息子さんも、大東亜戦争時に従軍した日本兵の大部分が死亡した史上最悪の作戦「インパール作戦」に参加させられるという不運な運命に翻弄されましたが、不屈の闘志で九死に一生を得て生還され、107歳の現在もご健在です。 後藤伍長の苦難を思い「どんな事があっても帰って来る」と心に誓っていらしたそう。 苦しい山行の時は、このことを良く思い出します。

この活動日記で通ったコース

八甲田山 八甲田大岳〜毛無岱 周回コース

  • 04:33
  • 8.8 km
  • 749 m
  • コース定数 18

酸ヶ湯温泉上部駐車場の東端に鳥居がある。ここが登山口だ。序盤はブナ林が続くゆるい坂を登っていく。次第に樹林が途切れ、南八甲田の山並みが見えてくる。細くなっていく沢沿いを登ってくと、仙人岱湿原につく。湿原の木道を進み、中央まで行くと、八甲田清水が湧き出ている。小岳分岐を右手に見送ると、湿原のお花畑が広がっている。7月下旬に花が咲くウサギギクの群落や、3〜4年に一度開花するコバイケイソウが見事である。再び樹林に入るが、すぐに抜けて森林限界に出る。火山礫の急登をすぎ、階段道を登ると八甲田大岳山頂だ。東には噴火口が広がっている。大岳からの下山は、これまで来た道を戻らずに北へと抜け、毛無岱と呼ばれる湿原を散策していこう。いたるところに木道が整備された広い湿原だ。最後は、再びブナ林を歩いて酸ヶ湯温泉に戻ってくる。

この活動日記で通った山

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