景鶴山 雪の尾瀬DAY3〜4
尾瀬・燧ヶ岳
(福島, 群馬, 栃木)
2025年05月05日(月)〜06日(火)
2日間
色んなアクシデントあったが、無事に至仏山と燧ヶ岳を登れた。予定はそれしかなくて、3日目は予備日だから、用事なくなる。
それを言ったら、小屋のご主人のひげくまさんも、周りの登山者の方々も、口を揃えて、景鶴山を推してくる。
正直に言うと、前日あんな酷い目にあって、3日目は休んでもいいような気もするが、今の時期にしか登れない山だよーと言われると、いと容易く動揺する。
悲しい登山者がここに_(:3 」∠)_
とにかく情報収集したら、どうも山頂手前の岩を越えるにはかなり危ない状態になっているらしくて、夕食で同じテーブルになったグループはそこで撤退したという。
でも景色はいいから、行く価値はあるし、そこに行って判断してダメだったら撤退すればいいよ、と言われた。
まあどうせやることないし……
ダメだったら撤退で……
どこかで聞いたことあるセリフだなぁー気のせいかなー
朝支度して、登山口になる東電小屋へ出発。
出る前に、やはりひげくまさんに、必ず帰ってきなさいよ、と念押される。
本日は強風予報だが、天気そのものは良く、前日のガスはなく、青い空と白い雪山のアクセントが美しい。
前日の体力消費が激しすぎて、歩き始めたら明らかに疲労を感じる。
ちなみにGarminの時計を使っているが、毎日ハードル高いトレーニングメニューを勧めてくる鬼教官Garminさんの、今日のメニューは「休憩」なので、かなりダメになっているのが分かる。
今日は時間あるから、もうお散歩でいいやー
っていうか山頂に行かなくていいやー目標は景鶴の手前にある与作岳にしよう。もう与作で撤退しよう。とさっさと撤退案を組んでいた。
東電小屋から登り始める。そもそも登山禁止で正規ルートがない山なので、トレースがめっちゃくちゃ。でもちゃんと付いているから、今日は慎重に、迷わずに行こうと思って、ゆっくりと登っていく。
久しぶりだよなあ、この力のない感じ……こんなの縦走なんかできない。やはり更なるトレーニングが必要だよね……
いつものペースより遅いの分かるし、そもそもコースタイムより大分遅いかも。それでも時間あるから、ゆっくり歩いて行こうと思った。
途中で飴の紙を発見して拾った。ヤマップの清掃登山に参加しているが、日本の山はやはり綺麗だ。でも確かに飴の紙はよく落ちている。こういうウッカリがないように、自分もかなり気をつけるようになった。
ダラダラ歩いて、眺望のいいところに着いたら時間をかけて景色を見て、なんか久しぶりにのんびりと登山できた気分だ。スピードばかり意識していたが、今日はもう無理だ。無理ってことは無理だと受け入れて、焦らずに行こう。
10時半、与作岳到着。
撤退するか?今撤退したら、山小屋でご飯食べられる。テラスで優雅に過ごす午後も悪くない。
頭を上げて、山頂の方に視線を向けた。
撤退するんだと、最初から決めたんだ。
体力もさほどないし、今撤退しなければ、昨日の二の舞じゃないか……
うう……
誰か止めてくれないのかなー(もはら他力本願。)
祈ったところで、やっとすれ違いの人が!
スノーシューとストックの方だった。
山頂やばそうですか、と聞いてみた。
いや、全然行けますよ!僕でも行けたから、君ピッケルじゃないか、大丈夫ですよ!と。
……うっ。
ちょっとは予想してたけど、そんなに全力の笑顔で言われるとは……
まだ早いし、とにかくどういう風になっているのか、見るだけ見に行こうかな。
しぶしぶと歩き出す。
与作岳の山頂は平坦でなだらかだけど、見上げると景鶴山の山頂は尖っている。美しい形だが、怖いなぁ……
本当に行けるのかな……
山頂間近に到着。
やはり、やばそう。
激しい傾斜を登らされて、目の前には細尾根。それを通れば巨大な岩があり、昨日言われた通り、かなりの段差があるため、岩を登って越えるのは基本的に不可能。なのに曲げ道がギリギリの登山靴の幅くらいで、左に滑落する場合、かなりの高さを落ちる。そこもふわふわ雪に見えるし、ほぼ垂直だから停止しにくそうだ。
一歩踏み違えば……いや、自分が踏む瞬間に運悪く雪解けが進んでしまって崩落する可能性すらあるのに……
山頂が目の前なのに、ここに来て撤退してしまう気持ちがすごくわかる……
ちなみに圧倒されて写真を撮ることすら覚えていない。この日の前後に色んな方が登ったから、皆さんの写真をご覧ください🤣
これは危なさそうだ。
躊躇っているところ、ちょうど向かい側に人が来た。すれ違いが無理なところだし、待っていた。
さすがにこの人は止めてくれるのでしょう……!
こっちに渡ってきたら、すぐ聞いてみた。
あそこやばそうですかね。撤退した方がいいですかね、と。
いや、行けますよ!と、やはり。
ここに来て、ちょっと怖気が付いたんです。もう撤退しようかなと……
いやいや、もったいないですよ!ここを越えるだけですよ!もったいないです!山頂すごくいいですよ!全然行けますよ!とめっちゃくちゃ強い口調で説得して来た。
マジかー思ったんだけどなー思ったのより推しが強くて笑ってしまうほどだけどなーやっぱりつくづく思うけど山登りは命知らずばかりだなー人のことを言う資格はないけど……
分かりました。行きます。と。
深呼吸して、踏み出す。
直前までは怖くて震えていたが、行くと決心したら、怖がっちゃいけないんだ。
一歩一歩だけに集中して、バランスをとって、ちゃんと踏んで、進む。
パニックったら本当に落ちるから、恐怖を忘れるんだ。万が一崩落したら、ピッケルで止めてやると自分を信じて行くしかない。
運良く無事に怖いところ通過、山頂に着いた。さすが尖っている山、山頂もスペースが狭くて、眺望はいいけど、途中のとさほど変わらずと感じて、怖いからとにかくはやく下りようと思って、ささっと退散。
下山も慎重にトレースを追って行ったが、終わりそうなところで気が抜けて、変なことろから出てきて、わけわからなくなってしまった。
もはや定番になった道迷い……
雪の下には沼だと思うと気が気じゃなくて、落ちったらどうしようと焦ってぐるぐる回ったら、たまたま東電小屋が目に入って、助かった気持ちで小屋に逃げ込んだ。
平野であるし、目印になるものないし、踏み抜けたら沼に落ちるし。昔は尾瀬のガイドさんに、雪の尾瀬は危ないと話されてたが、確かにこれホワイトアウトしたらどうしようもなくなるかな。今日は天気が良くてよかったよ。
くたびれて、足を引きずるように見晴へ。
小屋に到着したら、ひげくまさんはまた、よかった、帰ってきてよかったと連発。
どうも、この日に燧ヶ岳で救助を呼んだ人がいたらしくて、それも道迷いらしく、ルートから外れたからヘリが見つからなくて時間がかかったと聞いた。
もし昨日の自分が……と思ったら、ゾッとする。
心配しながらも景鶴山を薦めてくれるひげくまさんのことを思うと、山小屋も本当に大変だなぁ。よほどの悪天候じゃなければ、登るな、とも言えないし、っていうか止めても行く人は行くんだし、帰ってこなかったら、知らん顔できないし、昨日笑顔で話してくれる人も、いきなり山から帰ってこなくなるし、私はとてもこんな仕事を務まらない。
部屋に戻り、布団に潜って動けなくなった。
テラスで優雅にコーヒーを飲むくらいの体力も残らなかった。
ちょっと複雑な気分だけど、結局今日は山頂に行けたこと、単純に嬉しかった。
浅はかだ。命をかけるものでもないのに。
これは無理をしたか、してなかったか。山頂には行くべきか、撤退すべきか。
正解がわからない。でも生きていることが嬉しい。
下界では、生きてよかったと感じる場面がさほどなかった。それでここに来たと思うが、この心理状態を改めないと、また冒険をしていまう。また無理をしてしまう。
死の深淵を覗かないと、生の喜びを感じないならば、いつかは本当に淵に落ちてしまう。
危険だとわかっても制御できなかった。こんな自分をどうするか。
晩ご飯まで体力を回復させようと、とにかく目を閉じた。
今日のご飯もきっと美味しいだろう。山にいるとき、ご飯はいつも美味しいから。
DAY4
雨の降る日、最終日でよかった。今回の山行は総じて天気が良く、ありがたい。
あやめ平を登って帰る計画だったが、もう無理だ。普通に竜宮をへて、山の鼻経由で鳩待峠に戻ると決めた。
せめて最終日は無理しないでおこう。
山小屋を出ると、ひげくまさんが見送りに来てくれた。
今度はね、もう一人連れてきてくれないか、と。
まるで娘の結婚をせがんでいる父親のようなセリフで、一瞬笑ってしまった。
わかりました。山岳会を探して入りますよ。雪山は一人で登るもんじゃないって、今回思うようになりましたから、と約束した。
単独行は好きだけど、一人だけだから、すごく心配されてしまった。これを解決するにはやはり山岳会かな。安全性も上がるし、できることも増える。いつかはアルパインクライミングなどもできるようになるかもしれない。
夢が大きすぎるかな。でも夢は大きく見る方が面白いじゃん。
お世話になりました。ありがとうございます。と手を振って、帰路へ。
雨のせいか、雪解けがかなり進んで、踏み抜けがところどころあって怖かった。精神を尖らせて慎重に歩く。身体的にも精神的にも辛い。やはり山側じゃなくてよかった。平地すらこんなに苦しいのだから。
道がとんでもなく長く感じる。風が強くて、雨もしとしと降っている。どんどん体力が奪われていく。平坦なところはまだよくて、山の鼻から鳩待峠には登りもあり、普段ならへっちゃらなのに、弱ってきた今は時々休憩しないと歩けない。
ここまで衰弱してくるとは、こんなの縦走できるわけないじゃん。やはりトレーニングが足りないな……
もし予定より10分早く到着できれば、鳩待山荘でお土産を買えたのに、時間通りに到着してしまったから、買い物もできず急いでバスへ向かった。
つぶ濡れた状態でバスに倒れ込んで、一休み。
まあ下界に着いたらきっと……
バスターミナルに到着。お土産屋さん見当たらず。
マジか!じゃあ沼田で……!
沼田到着。お土産屋さん見当たらず。
マジかーと頭を抱えた。
しょうがなくて帰路へ。
たかが10分さえも節約できない自分の体力のなさに悔しく思った。反省だな。
まとめ
今回は、自分の限界を知ってしまった山行である。
色々無理をして、やらかして、ミスって、遭難しかけて、反省点満載。生きて帰ってきて、本当によかったなぁ。
でも尾瀬はやっぱり美しかった。夏、秋、春で見た尾瀬の違う景色、本当にこの山域好きだなぁ。今度は、テント泊もやってみたい。雪の尾瀬に憧れて、来てみたら、また違う夢を見てしまう。これだから登山は楽しい。
楽しいから、好きだから、山からは生きて帰ろう。
生きて、また山を登りに行こう。
(雪の尾瀬、おわり)