大菩薩峠 長峰
大菩薩嶺・鶏冠山・大マテイ山
(山梨)
2025年06月04日(水)
日帰り
小金沢連嶺縦走を計画した時に地図を見ていたら、破線の無い尾根に点々と注意マークがついているのに気がついた。長峰である。長峰といえぱ50年くらい前のガイドブックでは大菩薩の定番コースとして紹介される一方、「戦前はよく歩かれていたが、今は寂れてしまっている・・・」との記述もあったが、「小金沢や大菩薩沢への入谷、帰路によく利用されている・・・」ということで、そこそこ利用者があったようだ。確かに戦前は小菅や丹波には路線バスがなかったようなので、早く下山できるという点では便利だったのだろう。ただ、自分としては牛ノ寝通りに比べ、尾根筋が短いし標高も低いし交通も不便、何よりも多摩川水源を構成していないということで、あまり興味は惹かれなかった。そしていつしかガイドブックの定番コースから外れ、地図からも破線が消えてしまった。その後得た情報では「通行困難」とか「難路」ということだったので、藪が茫々に茂って行く手を阻まれるとか、がけ崩れなどがあったりしてかなり難しい状況との認識であった。そしてこの尾根を歩く機会はもうないだろうと思っていたが、注意マークがあるということはそれなりに歩いている人がいるということで興味を惹かれ、早速ネットで調べたら、ヤマップ、ヤマレコ、山渓その他・・・で続々訪問記録が出てきた。そのいずれもが、危険な場所はないが迷いやすいので気を付けた方が良いと書かれていたので、ついその気になって行きたくなった。そして、上りであれば迷う心配はあまりないし登り切ってしまえば下山コースは楽だけど、下りでは多くの人が実際に迷ったり迷いそうになっているのと、米代からとブナ平からの下りが厳しいことがわかってきた。交通の便は、今では小菅~大月のバス便があるくらいだから格段に便利になっている。楽で無難な方法としては登りコースに使うことだろうけど、昔のガイドブックにこだわって、下りで行きたいと思った。で、どういうコースで米代まで行くかというと、大菩薩の未踏コースである丹波大菩薩道がすぐ浮かんできた。この道もかっては下山路としてよく利用されていたようだが、丹波、小菅のバス便が減って不便になったせいか、利用者も減ったようだ。
丹波大菩薩道は、旧青梅街道だけあって起伏も少なく歩きやすい道だった。尾根上を歩く場面はあまりなく、山腹を巻きながら歩くことが多い。越ダワから藤ダワまでの旧来の街道は随分前から通行止めになっているようだ。天平経由の尾根道とマリコ川沿いの林道が整備されているので、この道の復活はもうないかもしれない。この時期、峠までは緑色濃い樹林帯が続き、所々水の流れとも遭遇し、静かでいい雰囲気だ。この日は、峠まで誰にも会わなかった。小菅道がフルコンバから一気に林道へ出てしまうのに対し、この道は村の人家の直前まで山道が続く。
標高1700mを越えたあたりから雲の中に突入し、峠は霧の中だろうと思ったが、稜線に近づくにつれ明るくなり、峠に出た時は晴れていた。ただ、南アルプスなどの山々は見えなかった。峠着が13時過ぎであれば、長峰をあきらめて上日川峠に下るつもりだったが、12時半前だったのでそのまま小金沢分岐点に向かう。分岐点で後ろを振り返ると、雲が切れ始めて南アルプスが見えていた。見慣れた景色ではあるけど、こういう状況で見ることができるとやはり感動する。分岐点の脇に小平地があり、峠の喧騒を避けてゆっくり南アルプスなどを眺めながら昼食を摂るのもいいものである。
米代からいよいよ長峰に入る。「道跡不明瞭・通行注意」という標識が気持ちを高ぶらせる。最初のうちは、笹原の中を割とはっきりした踏み跡が続き、この状態ならなんてことはないと思ったのだが、そのうち踏み跡が何本にも別れたりして“これは・・・”と気を引き締める。こんな時は、一番高い所を歩いていれば間違いないという信念で歩くことにしている。スマホの地図アプリを確認すると、ドンピシャの尾根の真ん中を指している。尾根左下についている踏み跡が比較的はっきりしているようで気になるが、先の方で一緒になるだろうと勝手に推測して無視。尾根上も行き詰る時があるが、そういう時は一番近い踏み跡を使う。やがて、傾斜がさらに増し、尾根幅も広くなってきたりで不安になるが、そういう時は地図アプリで現在地と方向性を確認する。落ち着いてよく周囲を見渡すと、ピンテやかすかな踏み跡が見えてきたりもする。この先もそうだが、ピンテは道案内になるほど頻繁についている訳でもなく、間違えていないことの確認になる程度のものである。急斜面は、場所によって横滑りしながら下る所もあったが、確かにこの斜面を登るのは相当きついだろう。その点下りは緊張感を伴うものの楽である。
急斜面を下り終えるとそこから幅広い尾根が続くようになる。そして踏み跡も落ち葉で隠れたりでかなりわかりにくくなる。しかし、笹薮や倒木もほとんどないのでどこを歩いても同じようなものだ。ピンテは目で追える範囲にないことが多く、たまに現れるとホッとする。この尾根は、地形的に右の方へ引き込まれやすい感じで、過去に通った方の記録でもそのような傾向にある。特に地図の注意マークの付近は要注意で、尾根の高みに登ったらそのまま真直ぐ行きそうになるが、一番高い所から見渡すと、左斜面にピンテがぶら下がっているのが見える。急斜面を下り切ってからの方が踏み跡はわかりにくい。白草の頭の手前で尾根道が岩場混じりの急登となるようなので、右側にかすかな巻道を見つけ、巻きながら頂上へ行くかもしれないと思いそちらへ行ったが見事にハズレ。登るほどに足元が危うくなり、ピークを巻いて稜線に出てしまった。しょうがないのでピークへ逆行して登ったが、三角点があるのみで展望は無し。次のカネツケの頭は割と簡単についた。道は下りベースとなり、道ははっきりしないけど、尾根らしいところをとにかく歩く。七本木山の神の先で支尾根が右に分岐するあたり、地形的にかなりわかりにくい。踏み跡らしきものが支尾根上を続いているのだが、左側を見ると幅広い斜面が広がっていてそちらにも尾根筋らしきものがあるのに気が付いた。地図アプリで確認するとやはり支尾根の方へ引き込まれそうになっていた。強引に元に戻ろうとしたら行き過ぎて右手に尾根状の高みが見えたので、そちらに向かったらピンテが現れた。その先のピークを越え、ブナ平(八丁坂)の三角点までは楽勝。三角点の手前で左側の尾根に向かい左側にあるはずの下降点に注意しながら歩いて行くと、左斜面にピンテが現れたので、そこを下り始めた。ここから急斜面が始まるが、この先は踏み跡が幾筋にも別れ、訳が分からなくなる。時たまピンテも現れるがあまり当てにならない。場所によっては横滑りで下る所もあった。地図アプリで左に延びる尾根を目やすに適当に進むが概ね左側に進路を取る感じで丁度いいかもしれない。何となく尾根状になった高みを進んでいくと、岩場が現れるが、岩場を避けて右側の方に下る踏み跡もあった。既に右下に林道が見え始めたけど、そちらは結構な急斜面だ。そしてピンテが岩場の方へ進むようについている。確かに斜面を下るより岩尾根の方が楽そうだ。ただしそのまま真直ぐ進むと道路擁壁に出そうなので、途中から右手に降りる場所を見つけなければならないが、幸い下降地点にピンテがあった。見つけられなくても右下を見れば林道がもう間近に見えているので、急斜面を覚悟で下ればいいだけの事である。登山口の階段部分は倒木に覆われていた。
拓道橋を渡った所で17:30を過ぎていた。竹ノ向発17:20のバスには間に合わなかったし、次のバスは18:15分頃この付近を通過する。非常に中途半端な時間で最終バスでは家に着くのがかなり遅くなってしまう。今からタクシーを呼んで大月に向かえば、特急電車に乗れる可能性もあったので、早速電話する。待ち合わせは、どうせ30分くらいかかると思ったので、7~8分歩いた先にある小金沢公園にした。ベンチに座って休んでいると、思ったより早く18時前に来てくれた。親切な運転手さん(大月タクシー)で、大月よりも猿橋の方が早くて安く着くし、この時間電車も頻繁に出ている(20~30間隔?)と教えてくれたのでその通りにしたら、17:20発バスで予定していた電車に乗ることができた。(公園から駅まで20分かからなかった)
長峰はいつの間にかガイドブックや地図から破線が消えてしまい、自分にとっては忘れ去られた存在だったが、ひょんなことから歩くことになってしまった。しかし、久しぶりに本格的なルートファインディングをすることになって面白かった。他の方が書いているように、上りであれば、高い所を目指せばいいので、迷っても容易に修正できるだろうけど、下りの場合、迷って支尾根に入りこんでしまったら、登り返すのがかなり大変だと思う。悪場の多いことで知られる葛野川まで降りてしまうと、とんでもないことになりかねない。下る途中で実際に迷ってしまったという記述のある活動記録も何本か見た。幅広い場所では地図アプリをフル活用して進行方向を確かめながら行くのが良いと思う。
こういうコースのために、一般コースでは着用をはばかられるような大きい音の出る熊鈴を最近購入して初めて使用したが、この時は本当に心強く感じられ、熊に対する恐怖心も感じなくなっていた。途中、急斜面を下る時に人の靴ではない大きな新しい足跡が点々としているのを見つけた時も、平常心で歩き続けられた。
※写真のマークと実際の位置に100~150mほどのズレが生じています。
長峰分岐点付近を写した写真は、地図上の分岐点より下のマークにあります。