登山口から夜叉神峠(やしゃじんとうげ)までの夜の道中、森の天上の隙間からきらきらの光が降り注ぐ下、ストックを規則的に突きながら、この数週間を漠然と思い返していました。 ⛰ 東京駅でメトロからの階段を駆け上がり(気持ちだけ)自宅に向かう最終電車になんとか乗り込み、良い方に転ばない案件に部下からのTeamsチャットが無く、そのままうなだれて帰宅する日もありました。そして、退職、転出を控えた先輩、同僚、部下と苦労をねぎらう、あるいは旅立ちを祝うと称した飲みが続き有楽町と新橋の似たような居酒屋で過ごす時間がことのほか増えたと思う一方、4月になると人が入れ代わり立ち代わりやって来て、不在にすることも出来ず30代後半にスリップしたような慌ただしい日々を過ごしていました。 ⛰ これまで南アルプスに向かおうとして、向かえなかったり向かわなかったりしたことが数回ありました。富士に次ぐ3,000mを超える北岳のとんがりに登ってみたいという思いが強くあって、秋の好天を狙ったタイミングで自宅にハードシェルを忘れるというなんともお粗末な結末を迎えてからは及び腰になっていました。その後も、機会は作れたと思うのですが冬の北岳にチャレンジできるほどテン泊経験や、日帰りできる健脚もなく、3,000mを超える高度順応にも一抹の不安があります。ならば、まずは見に行くべって南アルプスにGO🚗 ⛰ ルートは白峰三山(しらねさんざん)の東に並行して南北に聳える鳳凰三山(ほうおうさんざん)、なかでも”オベリスク”と呼ばれる地蔵ヶ岳はどうしても間近で見てみたくて、夜叉神峠から登って天候の急変や体調が思わしくなければ観音ヶ岳で引き返すことにして臨みました▶深夜の中央高速は、空いていてほぼナビの時間どおり夜叉神ヒュッテの目の前にある駐車場まで来ることができました▶駐車場のキャパはざっくり30~40台ぐらいでしょうか?10台ぐらいが停まっていました。そこに車を停めて、素敵な星空を観察してからサンドイッチをほおばり、ほどなくヘッデン点けて登山口からSTRTです▶ 5-6分登った頃に車にサングラスを忘れたことに気づき、後悔よりもそれに気づけたことを喜び、引き返して駐車場まで取りに下ると、なんとおにぎり他コンビニで買ったおやつ一式も助手席に忘れておりました。「おーっ、ラッキーじゃねっ?」と前向きに捉えました。 ⛰ 夜叉神峠(1,766m)までの道中、甲府の東側が朱に染まりだすまでが、あっという間でした▶ そして夜叉神峠の展望スポットでは、南北に長く横たわる白峰三山に見とれていると、後ろからご来光が差し込んできて、高台で望むことが出来ませんでした(悲)▶ もう気温が春で高度2,000mまでは雪がなく、2,400mぐらいまでは快適な歩みでした。辻山(2,584m)の少し手前から雪に滑りを感じたのでチェンスパを履いて砂払岳(2,735m)まで行きましたが、そこからは砂地と岩稜が続いたのと陽に当たる雪面も柔らかくなってチェンスパなしでもOKでした。 ⛰ 睡眠不足もあったのですが、相変わらず体が高度に順応するのが苦手なようで、2,500mを超えた辺りから鼓動が咽喉から耳に伝わり呼吸が荒くなっているのがわかるぐらいでした。これを機に山行中の心拍を把握できるようCOROS(カロス)の時計をポチるか迷っているところです。 ⛰ 砂払岳(2,735m)までは森の中を歩き続けるので、少しかったるいのですがそこから観音ヶ岳(2,841m)までの尾根道歩きは、もうっ、アメージングっの一言です▶ 左に白峰三山、右に南八ヶ岳、観音まで来ると正面に甲斐駒がバーンと見えてきます。極めつけは観音から一旦下って、赤抜沢ノ頭(2,750m)まで上り詰めてから嫌でも目に飛び込んでくる、まるで古代神殿に聳えるオベリスク(2,764m)です。体力的な不安や靴擦れの痛みも重なり、精神的に少しだけきつかったのですがオベリスクを観て感じた”安堵感”ってなんだろうと思いました。 ⛰ 陽のある内に夜叉神ヒュッテ前の駐車場まで戻ってくることが出来ました。天候に恵まれたのが一番でした。厳冬期にシューを使って、この尾根をトレイルしてみたいですが、できれば南御室小屋ぐらいでテン泊して夜をゆっくり過ごしてもみたいです。下りの時に南御室小屋の前で休憩をとったのですが、そこでくつろぎながら自由に過ごされている方々を観て、単純に「いいなぁーっ」て、思っちゃいました。 ⛰ 下りの苺平からの森歩きの長いこと長いこと、辻山近くからはチェンスパを履いてガチガチの雪道が無くなるまで降りました▶ 今日は山業が長くなることを見越して、車中泊ができるように準備していたので大正解でした▶ 写真に少し詳しいコメントを入れていますので、山行の参考にして頂けたら幸いです。 【備忘録】 ● 夜叉神ヒュッテの少し上に冬季トイレ(どっぽん)有り、紙有り(持ち帰り不要) ● 朝早くから活動するならチェンスパか軽アイゼンが必須かと思いました。 ● ストックがあれば、ピッケル不要だと思います。 ● 水分は、ハイドレーション1㍑、湯750ml、アクエリアス500ml、苺ジュース350ml → 湯が300mlほど残 ● カップヌードル1個、コンビニおにぎり2個、バナナ1本、カスタードどら焼き1個、アミノバイタルゼリー1個 → 完食 ● 観音から地蔵までは急登の雪面の上り下りに注意。
高度3,000mでも強風の予報がなく、上々の天気
2.6㍑の水分多めの春仕様のザックは8kg
夜叉神ヒュッテ前の登山口からヘッデンを灯してSTRT
駐車場で何度か星空を撮ったものの成果なし、山道で見上げたこの星空が見せられる唯一でした。でも本当にきれいな星空でした。
早朝の道中をヘッデンを灯しながら
甲府市の灯し火を朱の陽かりが薄めてゆく最高の時間
白峰三山っ、これを見に来たんです
でも、先は長いから筋肉疲労に備えてこれを摂ります
夜叉神峠小屋は休業中です
この山道をひたすらノースバウンドします
時間と場所を予測してなかったので、ご来光が少し林に遮られちゃいました。
モルゲンに染まる白峰三山を林の外から見て、とても損した気分に・・😢 もっと高度を上げておけば絶景が・・と後悔
朝陽が高度をあげて山道を照らす範囲を広げてゆきます
8℃って暖かいやっ
気持ちの良い山道が続きます
高度で2,000mを超えると残雪が少しずつ見えてきます
個性的な山標です
🍓平って遠くねっ?
山道と緑のコントラストは綺麗ですが、雪はガッチガチでずるんずるんなのでチェンスパ履くか、土面を歩くか要注意でした。下りは特に危ない感じがしました。
この辺りから山道はほぼ雪道になります
尾根筋に出るとこれが見られるので、物凄い力になります。できればもっと寒い時期に見たかった。
雪面が少しずつ固く滑るようになってきた感じがしてツボは危ない感じでした
気温と高度を確認。0℃近辺、ALT 2,300mオーバーを記憶してチェンスパを履く。
やっと🍓に到着
下りに寄るのはしんどそうなので往路で辻山へベクターする
途中踏み跡を無視して感覚的に方向を定めて辻山へ向かうもあえなくロスポジしてGPSを頼る
展望場所から薬師岳方面を望む。まだあれだけ高度を上げるのかと思うと帰りが不安になる
少しずつ西に目を向けると小太郎山から・・
白峰三山、右から北岳、間ノ岳、農鳥岳が展望できるっ、サイコー
なんといっても北岳(3,192m)が圧巻
辻山の展望エリアはこんな感じです
山道に戻るとこんな親切な看板も
南御室小屋が見えてきます(冬季休業)
冬季トイレが設置されています。要100円
すぐ近くに水場があるのでテン泊に優しいですね
テン泊や小屋使用の料金箱が設置されています
到着した時にテントは1張りでしたが、帰りには6、7張ありました
山道を塞ぐ倒木も切り開かれていました(凄)
砂払岳の少し手前の巨岩の隙間から白峰三山を覗く
少し登るとこんな感じに
距離感が分かるように写してみるとこんな感じ
写真中央の観音まではまだ距離がある
この辺り山頂に巨岩が点在するのは何故?
砂払岳手前の開かれたところから北岳を覗く
砂払岳山頂までのルートを→で案内してくれます
砂払岳から左手に観音ヶ岳、右手に薬師ヶ岳と、この眺めがとても素敵でした
南側を振り返ると、見通しが効かずとも富士が望めます
薬師ヶ岳を築く巨岩群
薬師ヶ岳山荘に向けて下って行きます
小屋の標識が埋まっています
小屋に冬季トイレがあります。アイゼンを外してから使うように注意書きがあります。
薬師ヶ岳山荘
山荘からほどなく薬師ヶ岳山頂が広がっています
物理的な山頂はこの巨岩群か・・
この巨岩群のような気がしました
こここからも白峰三山が美しく望めます
白根三山をバックに
観音ヶ岳へ続く稜線、右(東)に八ヶ岳、左(西)に白峰三山を望む絶景が望める稜線歩きって凄い。ここからチェンスパを外しました。
南八ヶ岳がくっきり、そして雪が無いっ
白峰の向こうに見えるのは・・なんという山でしょうか?山座同定ができませんでした
尾根のハイ松の東側を辿るのは雪崩れそうで危なげでした。
薬師岳と辿った稜線を振り返ります。
強風が作り上げた作品?
三角点の上にステキな山標です
かわいらしい地蔵様がいらっしゃいました
地蔵様をバックに一応の自撮り
鉄の標識が朽ちてゆくのか?自然に還るというのか?微妙ですが・・
この角度の北岳が美しく感じました
この距離感が実にイイ感じです。厳冬期の晴れ間に見たらもっとサイコーだったろうと思いました
そして薬師岳の南の遠く向こうにやっぱり富士
赤抜沢ノ頭の奥には甲斐駒そして右手には今日の目的地のオベリスク(地蔵ヶ岳)
観音ヶ岳から少し下って、オベリスクまでの距離感と上下感を見て、体力的に少し不安を感じて、ストックとスマホを携行し、ザックをデポることにしました。何事もなく戻れたので良しとしますが、観音ヶ岳~赤抜沢ノ頭~オベリスクは、私にとって難所でした。思ったよりも登り下りが急なだけでなく踏み跡のほぼない腐れ雪の急斜面をトラバースしたりと、戻りに水分がほしくなったり、チェンスパを外して行きましたがチェンスパが欲しい局面もありました。身軽が良いのか、何かあった時のリスクに重きを置くのが良いのかは、個々人の判断かと思います。※日毎に雪の状態が変わるので、コメントは参考程度に願います。
参考になりませんが、オベリスクまでは、写真の標識に従い一端下って鳳凰小屋から登り返すルートもありとは思いますが、かなり時間を要すのと辿っていないので困難さがかいもくわかりません。
観音ヶ岳から下って、そのコルから赤抜沢ノ頭(写真左手)を見上げて、本当に行けるか?とここに来て迷う・・
もう一度、北岳を見て自身を元気づける
赤抜沢ノ頭まで上り詰め、甲斐駒を見定める・・スマホの電池が8%なのに気づく(予備バッテリはデポしたザックの中😨)。ログは残らなくて良いから、オベリスクの写真は近くから撮りたい。以降、スマホは見ない様にする。
うーんっ、圧巻! そしてここからの下りが、むちゃ怖いー。腐れ雪の斜面を滑落せずに降りられました。夏道が全く見えません。
宮之浦、鳥海と頂部が巨岩に覆われているのは、どうしてなのだろう?ずーっと見たかった山頂を目の前で見ることができて、心がシーんとなった。
この山標から左に巻いて登れるところまで行きます。途中、賽の河原に沢山の小さな仏像がまつられていました。これがフォローさせてもらっている方が日記に書いていた「子授け地蔵」なんだと写真を撮って良いモノか、判別つかず NO Photo です。
真ん中ぐらいまで登ったところに祠がありました。
オベリスクから北側を覗くと、甲斐駒が綺麗に見えます
私には、とても頂部まで登り詰めることが出来ません。
神々しくも奇観ゆえに人を惹きつけるのか?改めて見つめて達成感よりも安堵感を感じたのは何ゆえか?
地蔵側から観音を見上げる。またこれを登り返すのか?と体力的な不安が頭をよぎる。
なんとかザックをデポした地点に戻り、スムージーを一気飲みして、今日のおやつのカスタードどらをほおばる。 カスタードが重く、山登りでなければ食べ切らなかったと思う。
甲斐駒の手前右にオベ、カッコイイ構図だなぁと、あらためて思った。
ここ(観音)から、夜叉まで戻るぞーって一人気勢をあげる。一人しかいないから・・
息があがると、何度も立ち止まって見つめる。You are Nr.2って言われるのは嫌だよな?きっと
夜叉に戻る手前で、ゆっくり通り過ぎると向こうもじーっと見返していました
陽があるうちに戻れてよかった。雪の残る山道で何度もズボリまくって、その度に心が折れそうになったけれど、この構図がなんとも素敵で心をパシパシしてくれました。⛰に(謝)!
出発前は真っ暗だったので、戻ってから登山口をパチリ
少し谷を下った芦安温泉岩園館で♨、¥1,000-でしたが、とてもきれいでさっぱりとした泉質でした。
今日は車に泊まれるよう、愛車内にピッタリはまるマットを買って、シュラフも積み込んで車中泊を万全にしてきました。 山行よりも帰りの高速の渋滞が困難なので、境川PAでカツカレーを食してから少し仮眠をとって、渋滞なくその日のうちにお家にたどり着くことが出来ました。 めでたしめでたし
この活動日記で通ったコース
夜叉神峠登山口-夜叉神峠 往復コース
- 15:15
- 23.5 km
- 2419 m
- コース定数 60