自分の中の雪山満足度がまだ足りていないような気がしていて、どこか雪山に行きたいと思い、幾つか候補を挙げていた。とにかく、広い雪原が見たいのだ。 上州武尊山、日光白根山、北横岳……しかしなんだかピンと来ない。ふと、フォローしている方の活動日誌を見ていたら、乗鞍岳に登られていた。 乗鞍岳か……。 遠いけど、3,000m峰で雪山、なおかつ雪原もある。調べると、麓のスキー場のリフト営業は4月3日までと言うのではないか。 良いかも…と思った瞬間、他の候補の山が頭からきれいさっぱり抜け落ちて、乗鞍岳に言い様の知れぬ期待と興奮を抱いてしまった。 しまった。これはもう、行くしか無くなってしまった。 スキー場までの道は雪は全く無くなっていて、ノーマルタイヤでも登れそうだった。 第三駐車場に車を停め、リフト券売場に並んで一回券を2枚購入する。土曜日で、明日が営業終了日であるせいなのか、登山客はとても多い。今日はソロなので、心なしが人が居ることに安心する。 夢の平クワッドリフト、かもしかリフトの二つを乗り継いで登山口に降り立つ。アイゼンを履き、バックカントリーに足を踏み入れていく。 雪はパウダーの箇所とアイスバーンの箇所があって、疲労を極力抑えるために他の人のトレースを辿っていく。 気温は手元の温度計で10℃超え。暑すぎる。登っているとすぐに汗だくになってしまった。 登山道は基本は緩やかな登りが続き、ところどころ斜度がきつめの場所がある。景色は全く変わらない。 樹林帯の間の開けた場所をひたすら登っていくが、遠くに乗鞍岳のピークはずっと見えているものの一向に近付いている気配がない。 中々に気力を削られる登山道だったが、森林限界を超えた辺りから景色が一変した。 見渡す限りに広がる緩やかな傾斜のある雪原、そしてその向こうには雄大に鎮座する乗鞍岳の峰々。そうだ、これだ。この景色が見たかったんだ。 疲れが一気に吹き飛んで、嬉々としてカメラのシャッターを切りまくる。喜び勇んで歩き出し、いざ剣ヶ峰の頂上を目指して進み始める。 が……。 全く景色が変わらない! いや、変わってはいるのだけど、全く近付いている気がしない……。さっきの比ではない! 結局、ここからが本番だった。斜度がぐんと上がり、トレースもまばらでルート取りに余計な思考を持っていかれる。アイゼンの重さを次第に足に感じ始め、進めども進めども目標は近付かない。 朝日岳へのアタックルートが、思い返せば本日の核心部だった。 無心。無心で登るが辛い。 うんと時間をかけて登り切り、ようやく本日最初のピーク、朝日岳に登頂。朝日岳の頂上から見た景色は言葉に出来ないものだった。 まず、圧倒的に剣ヶ峰が美しい。剣ヶ峰に続く稜線といい、剣ヶ峰自身の形といい、筆舌に尽くしがたい。夢中でシャッターを切り続ける。 続いて剣ヶ峰へアタック。実はこの時雲量が多くなって頂上が隠れがちになっていたのだが、ここまで来て3,000m峰に行かない理由が自分の中に無かったので、歩を進める。 3,000m峰は、学生のとき仙丈ヶ岳に登ったのみ。それ以来約13年振りのこの標高にやってきて、なんだか感慨深いものを感じた。 景色も抜群。山頂からはガスがかかって見えなかったけれど、道中、北アルプスから南アルプスまで(御嶽山も見えたらしいが、僕は見落とした)見渡せて大満足。 本当に、本当に良い山行だった。 途中、気さくに応じてくれた青いシェルの方、裏山が北アルプスのスキーヤーの方、ただ一本の滑走に魅入られてしまったBCボーダーの方、山頂でお互いの師匠のお話をした方、とても楽しく会話してくださり、良い時間をありがとうございました。山頂で写真を撮ってくださった二人組の方も感謝です。 ちなみに、下山は辛かった。スキー場内での下山は当分やりたくない……
今回、行動食はボトルに入れてみた。結果的には、何となく食べにくかった
スキー場第三駐車場から。すでに目標となるピークが見えていて興奮を誘う
驚異の気温13℃。この時、汗だくになる未来が見えた
まずは夢の平クワッドリフトに乗る
続いて、かもしかリフトに
ウィンタースポーツを辞めて数年。こうしてリフトに乗るのも久し振りである
スキー場の一番上に到着。この格安中華製アイゼン、きちんとしたものを買うまでの繋ぎに考えていたけれど、何だかんだ使い続けている
いきなりの急登。山はいつだってこうだ
雪解けの雰囲気、残雪期である
大勢の登山客と共に登っていく
誘うように、目線のはるか向こうに乗鞍岳が鎮座している。それにしても最高の天気
振り返った後ろ側も最高の景色だった
中央アルプス。まだ行ったことないから山名までは同定できない・・・
南アルプス。甲斐駒ヶ岳と仙丈ヶ岳、北岳も見える。富士山まではたぶん見えない?
あんなところに人が
ぐんぐん高度を上げていく
ようやく森林限界に到着
本日会った唯一の動物。ホシガラスかな
偶然、飛ぶ姿を写真に収めることができた
自然の造形美。どれだけ見ていても飽きない
乗鞍岳剣ヶ峰、そして蚕玉岳に朝日岳
森林限界を越えた先は、絶景。圧倒的な雪原が眼前に広がる
北アルプス。よくよく考えてみると、穂高連峰をこの目で見たのは初めてかもしれない・・・。いつか行ってみたい
延々と連なる登山客と乗鞍岳
バックカントリー勢もこの日は大勢おられた
ガリッガリの雪。いい感じにアイゼンが食い込んだ
本日の個人的核心部、朝日岳への直登ルート。このえげつない斜度。
朝日岳へと到着。ちょうどガスる
晴れ間にパシャリ。蚕玉岳、剣ヶ峰、大日岳
圧倒的威容。ここからの眺めが最高にカッコいい
ガスってしまって北アルプスが見えない・・・
蚕玉岳に到着。ここからビクトリーロード
心の汚い僕には読めなかった
小屋は雪に埋まっていた
ビクトリーロードというにはちょっと斜度きつめ?
遂に、剣ヶ峰へ到着!
おつかれさまです、相棒
歩いてきた稜線。岩と雪のまだら模様が本当にきれい
とりあえず一枚
この日は雲がとても多くて、雲好きな僕には最高の景色だった
下山。蚕玉岳と朝日岳のコルから下山したが、本当に怖すぎた
日がだんだん傾き始め、背後から差す陽光が雪原を美しく照らしていた
本日登った山々。これで見納め