54:11
71.5 km
3843 m
白い<ピラ・カム> ─── 続・札内川散策、ガケ尾根より
カムイエクウチカウシ山(カムエク) (北海道)
2024.02.04(日) 5 DAYS
ピラミッド峰 ─── なんて凛々しい名前 。 カムイエクウチカウシ山 ─── 読めても書けない漢字があるように<カムエク>と認識できてもこのカタカナ10文字を見ずには読めるようになれない長い名前。 私が耐えられる冬の装備・・・おそらく5日分だろうか?月末の仕事も目途がたち、北海道の中央山地で稀な2連日山日和予報 ─── おまけに日高地方では前後風も穏やかな日が続くらしい ─── 昨冬下見もしたことだし出掛けてみるか?札内川。 少し前に「中札内で大雪」と道内ニュースで聞いた記憶があり、当日の除雪最終地点の状況次第では南日高・野塚峠へ移動する代案も念頭に取り合えず「ビョウタンの滝~カムエク方面」で警察に登山届を提出。早朝、「この先、通行止めゲートあり」と中札内村を通過してからしばらくして数箇所かでヘッドライトに浮き上がって見える道路案内があったものの一向にゲートは現れず、見事に除雪された道路を走ること、ビョウタンの滝を知らぬ間通過して札内ダムへ到着。お?野塚峠への変更は無しでいいってことかな?ここまではがいに「大雪」だった気配も感じられず、3日目正午を折り返し時点として稜線どこぞを目指すも良し、1日札内川偵察/4日野塚峠周辺に山行5日を分けるも良し、取り合えずダムのゲートを超え歩き始めることにしました。 5日間の登山道状況概況: 道路除雪状況 ─── 下山日に除雪請負会社の若者二人と遭遇、ビョウタンの滝までは冬期除雪あり、1月末もしくは積雪70㎝越えでその先へのゲートが閉まるのが通常、今年は雪が少なかったために2月上旬も開放されたままだったが、現在は冬季閉鎖期間に入りビョウタンの滝より先は通行止め、とのこと。 1日目・・・ビョウタンの滝~八ノ沢まで20㎞弱歩く予定だったのでトンネル9か所+覆道2か所の着脱&運搬は厄介だとは思いつつもスキーハイクを選択。結局時間的に七ノ沢までしか進めず、ダムからのトンネル区間8.3㎞(トンネル内の舗装道路合計距離は長く着脱回数9回)+林道ハイク6.6㎞のみとスキー利用価値は下がっていることに後で気付く・・・スキーだと踵程度、スノーシューだと脹脛くらい沈む程度だろうか、思ったより歩き易い林道で15時に七ノ沢へ到着、八ノ沢まで移動するより翌日尾根に取り付く道作りを選択して七ノ沢泊とする ─── この時点でガケ尾根~1807稜線到着くらいの5日間となるかのう、と目標が大いにガタ落ち。 2日目・・・これよりスノーシュー頼みの3日間。5時半600m沢出発~13時半1200m急尾根終了=75m/hr、まずまず予想通り。1歩=3度踏みでサラサラ雪を固めながら美しいジグザクトレースを作りつつ前進。単純作業が苦にならないのは職人気質と自負。笹は埋まり疎林とは言えないまでも木々まばらで藪尾根感はゼロなのが救いです。1227~1297までの揺細尾根は足元のツツジ植生が可哀想だが雪は固く歩き易い/もしくはダケカンバの際で雪庇の背骨の上もしっかりしているところ多く何とか幕営予定地のコルに16時到着。翌日ヘッドランプで早朝歩ける斜面かどうかだけ30分ほど下見をして、まだまだしばらくは膝丈ラッセル続くが尾根幅広く暗闇歩行もさほど困難でないことを確認、本日終了。あ。そう言えば山行5日を野塚峠と分け合う代案はいつしか無くなっていたぞ。 3日目・・・穏やか満天の星空、どこまで行けるか皆目見当もつかないが、昨日より更に1時間出発を早めたということは ─── お主、まさかピラミッド峰くらいまで内心期待しちゃあいまいか?兎にも角にも1807mの稜線上に立つことを目指そうよ。背後、美しい暁に痺れを感じながら1650m尾根肩までの膝下ラッセルを経て9時過ぎスノーシューのまま予想外に早く1807m到着。稜線直下の急登はアイゼンの方が楽かと思われるほど雪も凍っており、これくらいの雪面が続くのならペースも上がり、もしかして・・・本当にもしかするとカムエクまで行けてしまうんじゃないか?とほんの少しだけ期待してしいまう自分の図々しさに目が丸くなる南日高のど真ん中。八ノ沢カールからの登山道と出合うコルまでは岩場区間が多くナイフの上を歩くこともあり気は抜けないにしても、雪・風・太陽と三者総出で私をカムエクへ送り届けようとしてくれていることを体全身で感じるほど今日の日高の山神は機嫌が良い。ピラ・カム間のコル11時半に到着した時は「皆さんに甘えてもいい?稜線1807で最後に夕暮れ佇むつもりでのんびり歩いても許してもらえる?」と飼い主にお腹を見せてゴロゴロ甘えている老犬気分の私。核心部・ピラミッド峰からの岩場下りも視界良好にてコルまで岩巻きながら進む白い「私の路」がはっきり見え蹴り込みやすい西側斜面の雪壁と各所にある岩ホールドに助けられさして恐ろしい思いをすることはありませんでした。。これ、本日に限ってのこと ─── 次もこうだとはゆめゆめ思うなよ ─── コル周辺は面倒でも背負っているくらいならスノーシューに履き替えた方が歩き易い不規則にぶかっと沈む雪面が続き、カムエク山頂直下の岩場区間手前でアイゼンに履き替え・・・と道具替えを休憩の口実に13時過ぎにフルネームでやはり呼べない大いなる山頂に到着。復路は夕陽と競争することを諦めると気持ちも楽になり、1807m下のスノーシュー優勢地点にてトワイライト夜景を眺めながら最後休憩の装備替え、休み休みザーザー下りでテントへ到着。 4日目・・・薄日射す小雪の一日。9時半下山開始、固く締まった我がトレースに感謝しながら1227mへ、そして急斜面のジグザクトレースを串刺しにするが如く13時半七ノ沢到着。ヒュッテまで進めそうな時間ではあるが午後は札内川散策として重い荷物を下ろし解体することに。 5日目・・・昨日同様の空模様、上空風は強い様子。6時出発。荷物は軽くなったような気もするが、別段急ぐ必要もなく、往路と同じくらいの時間をかけて南日高での4日間を名残惜しみながら ─── と夢心地の私を叩き起こすような長方形の人工灯がトンネルの出口に見え、谷を吹き下る風の轟音ではないどこか聞き覚えのある人工音にギョッとさせられた札内川ヒュッテで、この時季毎年水質調査で除雪を頼まれるという業者さんに出会います。除雪はされてもヒュッテまで自家用車は入れないとのことでダムまで私はフル装備で歩く必要があっても残りのトンネル7本をスキー着脱無しで帰れることに驚喜したのでした。ありがとう、町のために働く皆さん、ほんとに有難うございます。ダム🅿で除雪車に追いつかれ、既に閉鎖されたゲートを一緒に脱出させてもらう算段に慌て、スマホをいじり忘れましたが、ダムには13時頃到着、最終日歩行距離は初日同様15.6㎞のはずです。