苗場山・赤倉山・佐武流山(新潟,長野)
2026.06.05 (金)日帰り
こんにちは~✋
日本百名山シリーズ86❗️
ということで苗場山へ行ってまいりました!
この山を一言で表すなら、「1日待って本当に良かった山」です。まさに晴れは正義。そう言いたくなる山でした。
実は当初、台風一過の翌日に登る予定で登山口まで来ていました。しかし駐車場で天気予報や空の様子を眺めながら少し考え、「ここは無理に登らず、もう1日様子を見よう」と判断。遠征中なので早く登って次へ進みたい気持ちもありましたが、結果的にはこれが大正解でした。
苗場山最大の魅力は山頂付近に広がる広大な湿原です。しかし、この景色は晴れてこそ本領を発揮する景色だと思います。実際に歩いてみて強く感じましたが、もし曇りやガスの中だったら感動は半分どころではなかったはず。山頂に広がる池塘、どこまでも続く木道、そして遠くまで見渡せる山々。その全てが揃って初めて苗場山らしい景色になるのだと思います。
登山は天気も実力のうち、なんて言われることがありますが、苗場山に関しては特にそう感じました。もし行かれるのであれば、ぜひ晴れの日を狙ってみてください。きっと満足度が大きく変わると思います。
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・苗場山ってどんな山?
苗場山は新潟県と長野県の県境に位置する標高2,145mの日本百名山です。比較的登りやすい百名山として知られており、百名山挑戦中の方や初心者の方にも人気があります。
ただ、この山の魅力は単純に登りやすいことではありません。最大の特徴は山頂付近に広がる広大な高層湿原です。
一般的な山頂というと岩が積み重なった狭いピークや、眺望を楽しんですぐ下山するような場所を想像するかもしれません。しかし苗場山は全く違います。山頂へ到着すると、まるで別世界に足を踏み入れたかのような広大な湿原が広がり、その中に池塘と呼ばれる小さな池が無数に点在しています。
この独特な景観から「天空の楽園」と呼ばれることもあり、他の百名山ではなかなか見られない穏やかな雰囲気を持っています。夏には高山植物も咲き、湿原と池塘が織りなす風景を楽しむことができます。
登山道自体は比較的整備されていますが、山頂までの道のりは決して短くありません。特に樹林帯の登りは地味に長く続くため、思った以上に体力を使います。しかし、その先に待っている景色を考えれば十分に歩く価値のある山だと思います。
晴れた日には谷川連峰や上信越の山々を望むことができ、登頂の達成感と湿原の絶景を同時に味わえる人気の百名山です。
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今回僕が利用したのは小赤沢三合目からのルートになります。
駐車場は約80台ほど駐車可能で無料。路面は舗装されておらず砂利敷きのダートです。綺麗な水洗トイレが設置されており、男女別はもちろん、多目的トイレまで整備されています。百名山の登山口としてはかなり快適な部類だと思います。
少し気になったのは、登山口が駐車場の奥にあるのに対し、トイレが駐車場入口側に設置されている点でしょうか。出発直前に利用しようと思うと少し戻る必要があります。
そして個人的にかなりありがたかったのが駐車場入口を流れる沢です。下山後、この沢で登山靴を洗うことができるのですが、なんとタワシが4個も設置されていました。泥だらけになった登山靴をその場で洗えるのは本当に助かります。こういった登山者への配慮はありがたい限りです。
また、前日入りして車中泊する場合は、駐車場中央から奥側が比較的平らで使いやすい印象でした。実際に見た感じでも、そのあたりに停めている方が多かったように思います。
電波状況についてはau回線で確認しましたが、駐車場中央付近であれば1本程度入ることがあります。ただし圏外になることもあり、安定して使えるわけではありません。天気予報の確認や連絡などは、電波が入るタイミングで済ませておくのがおすすめです。
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ピークハント山:苗場山・神楽ヶ峰・龍ノ峰
山レポ
・登山口~苗場山
出発前、駐車場上部を見上げると、山の上部にはすでに朝日が当たり始めていました。空にはまだ月も残っており、まるでモルゲンロートの始まりを見ているかのような美しい光景です。台風一過の翌朝とは思えないほど空は澄み渡り、静かな朝の空気が漂っています。ただ、そんな景色とは裏腹に登山口方面を見ると、樹林帯はまだ薄暗く、水たまりも多く残っていました。昨日まで荒れていた天候の名残を感じながらスタート準備を整えます。
登山口には「小赤沢三合目登山口」の看板と登山ポストが設置されており、場所は非常に分かりやすいです。看板を眺めながら、忘れ物はないか、装備は揃っているかと最後の確認をします。こういう瞬間は何度百名山を登っても少し緊張します。登山口脇にはふきのとうがすでに花を咲かせていました。春の代表格とも言える植物ですが、花が開いている姿を見ると、季節は確実に春から初夏へ移り変わっていることを感じます。
山道へ入るとすぐに「告!!」と大きく書かれた警告看板が目に飛び込んできます。おそらく山菜採りに関する警告でしょう。かなり強い表現なので思わず目を引かれます。足元はすでにぬかるみが目立ち、歩き始めて間もなく三合目へ到着しました。標高1310m。ここから本格的な登山の始まりです。
三合目を過ぎると笹やダケカンバが広がる緑豊かな樹林帯になります。まだ傾斜も緩く歩きやすい道が続くため、「このままずっと続いてくれたら楽なんだけどな」と都合の良いことを考えてしまいます。しかし山はそんなに甘くありません。徐々に地面から顔を出す岩が増え始め、自然と足を置く場所を考えながら進むようになります。登山というより、脳が勝手にルートファインディングを始める感覚です。
ふと右手を見ると、大きなオシダが生い茂っていました。日当たりの少ない森らしく、地面には十分な湿気が保たれているようです。登山道には排水のためのゴム板が埋め込まれており、山道整備に携わる方々の努力を感じます。もしこれが無ければ、雨水はそのまま登山道を削り、さらに泥だらけの道になっていたことでしょう。
足元にはエンレイソウも咲いていました。派手さはありませんが、こういう山野草を見ると足が止まります。そして丸太で整備された階段が現れます。土嚢で補強された段差や木の根を活かした階段など、自然と人工物がうまく共存しています。厳しい自然環境の中でも、人の手が入ることで歩きやすい登山道が維持されていることを改めて感じます。
やがて、まるで精霊の入口のような場所が現れます。樹齢100年は超えていそうな二本の大木の間を抜けるのです。森の主のような存在感を放つ木々は圧倒的で、生命力そのものを感じます。その先は木の根階段が続き、徐々に傾斜も強くなっていきます。
右手を見ると隣の山肌にはすでに朝日が当たっていました。「あそこまで光が来ているなら、こちらももうすぐだろう。」そんなことを考えながら進みます。足元にはピンク色のイワカガミが咲いており、小さな花が風に揺れていました。厳しい環境の中で咲く姿はどこか健気です。
そして四合目へ到着します。標高1470m。三合目から160m上がった地点です。広さは2〜3人が休憩できる程度ですが、水場への分岐にもなっています。せっかくなので水場を見に行ってみました。沢水のため、そのまま飲むのはおすすめできません。利用するなら煮沸か浄水器が必要でしょう。今回は見学だけして先へ進みます。
再び歩き出し、先ほどから見えていた山容を見上げると、今度は尾根の上に月が浮かんでいました。青空に残る月はどこか幻想的で、朝の山ならではの雰囲気を感じさせてくれます。
四合目以降はさらに人の手による整備が目立つようになります。排水用のゴム板、丸太ステップ、木道などが次々と現れます。ただ、この日は台風一過の翌日です。濡れた丸太は非常によく滑ります。特に下山時はかなり注意が必要だと感じました。
さらに立派な木道も現れます。ここまで資材を運び整備する労力を考えると本当に頭が下がります。登山道脇にはミツバツツジの鮮やかなピンクが広がり、つい足を止めて見入ってしまいました。
この四合目から五合目の区間は、今回のルートの中でも特に人の手のありがたさを感じる区間だったと思います。ぬかるみが多く、整備がなければ靴は泥だらけになっていたことでしょう。
時刻は6時。ついに木漏れ日が差し込み始めます。樹林帯で迎える朝日は不思議な安心感があります。しかしその直後、一番ぬかるんでいる場所だけステップが設置されていない場所に遭遇しました。さらに泥水には朝日が反射し、足元が全く見えません。結局どこに足を置いても泥だらけです。そんな状況の直後に再び丸太ステップが現れるので、ありがたみも倍増します。
そして五合目へ到着。標高1580m。四合目から110m上昇した地点です。看板には六合目まで25分と書かれていました。ここから徐々に登山道の雰囲気が変わり始めます。人の手による整備は減り、自然そのままの岩場や木の根が目立つようになってきます。
登山道の雰囲気も少しずつ変化し始め、「いよいよ苗場山らしい登りが始まるな」と感じる区間です。
ふと登山道脇へ目をやると、笹薮の奥に白いものが見えました。近づいてみると雪渓です。まだ五合目付近にも関わらず、しっかりと雪が残っています。登山道上には雪はありませんが、「この標高でこの残り方か……。」と思わず先の状況を想像してしまいます。雪渓は無いに越したことはありません。後半の苦労を予感させるような景色でした。
木の根が複雑に入り組んだ階段を登っていくと、やがて樹林帯の向こうにこれから登る山容が見え始めます。森林限界が近づいている証拠です。周囲の植生も徐々に変化し、背の高い木々は減り、笹や低木が増えていきます。ようやく太陽の光も直接差し込むようになり、空の青さが際立って見えるようになりました。
もちろん上ばかり見ているわけにはいきません。足元にはオオバキスミレが群生しており、鮮やかな黄色が目を楽しませてくれます。山の花は不思議なもので、どんなに疲れていてもつい足を止めてしまいます。
道は徐々にトラバース気味になり、谷筋が見える場所へと出ました。その谷には長く残る雪渓が広がっています。一瞬「まさかあそこを登るのか?」と身構えますが、ルートは谷筋を横切るだけで、そのまま安全な方向へ続いていました。とはいえ、この辺りから景色と引き換えに足元の難易度は確実に上がっていきます。
右手には谷が広がり、遠くの山々も見渡せるようになってきました。雲一つない青空が本当に気持ち良く、サングラスと日焼け止めのありがたみを実感します。しかし足元の岩はどんどん大きくなり、歩きやすさとは逆方向へ進んでいきます。
そして現れるのがロープ場や鎖場です。岩場の急登も増え始め、残雪もところどころ顔を出します。なるべくロープや鎖に頼らず、自分の足でバランスを取りながら登ることを意識して進みました。
そんな登りを続けていると六合目へ到着します。標高1750m。五合目から170m上昇した地点です。看板には七合目まで15分と書かれていました。
しかし六合目を過ぎると、いよいよ本格的な雪渓トラバースが始まります。最初に現れたのは2〜3m程度の短い雪渓でしたが、6月とはいえ雪はしっかり圧雪されており、見た目以上によく滑ります。前日のトレースはほとんど消えていますが、逆に雪が硬く新しいトレースも作りづらい状態でした。
雪渓を渡るたびに足元へ神経を集中させます。転倒しても大事故になる場所ではありませんが、気持ち良いものではありません。
その後も鎖場が現れますが、よく見ると鎖を使わず通過できるルートもあります。無理に鎖へ頼らず、自分に合ったラインを探しながら進みました。
再び現れる雪渓トラバース。距離は短いものの、毎回緊張します。渡る前に一度立ち止まり、景色を眺めながら呼吸を整えるのも悪くありません。焦って良いことは何もありません。
鎖場と雪渓を繰り返しているうちに、気付けば七合目へ到着しました。標高1810m。六合目からは60mしか上がっていません。看板には次の八合目まで50分と書かれていました。
ここで改めて合目の基準を考えますが、やはりよく分かりません。15分だったり25分だったり50分だったり。等間隔ではないのでペース配分の参考程度に考えた方が良さそうです。
周囲を見ると植生も明らかに変化しています。ブナやミズナラは減り、コメツガやシラビソといった針葉樹が目立つようになっていました。標高を上げてきたことを景色から実感する瞬間です。
足元にはスギゴケがびっしりと広がっています。まるで小さな森を上空から眺めているような景色で、しゃがみ込んで見たくなるほど見事でした。
やがて長いロープが張られた場所へ出ます。何だろうと思って見上げると、少し長めの雪渓トラバースが待っていました。確かにここはロープがあるだけで安心感が全く違います。
約5mほどの雪渓を横断しますが、終点が少し低くなっており、そのまま進むと笹薮を掴みながら強引に登り返すことになります。下山時もなかなか神経を使いそうな場所です。
緊張感のある雪渓を抜けると、一気に雄大な景色が広がります。しかし休ませてはくれません。今度は玉石混じりの急登が待っています。鎖場も再び現れ、息を整えながら一歩ずつ高度を稼ぎます。
見上げればさらに上部には雪渓が残っているのが分かります。
そしてその予感通り、次に待っていたのは雪渓の登りでした。雪自体はかなり締まっていますが、登山者が歩いた跡はビッグフットの足跡のように大きくえぐれて残っています。ただ表面は少しずつ緩み始めており、足を置くと微妙に沈み込みます。そのため、ただ歩くというより、つま先を軽く蹴り込みながら足場を作るような感覚で進みました。
雪渓を登り切ると八合目へ到着です。標高1940m。七合目から130m上がった地点になります。看板には50分とありましたが、実際にはそこまで時間は掛かりませんでした。八合目を過ぎると正面に笹薮へ吸い込まれていくような細い道が見えてきます。一瞬「あれがルートか?」と思いますが、よく見ると立入禁止テープが外れて垂れ下がっており、おそらく旧道なのでしょう。這うように進まなければならないほど笹が濃く、とても正常な登山道には見えません。素直に現在のルートへ戻り先へ進みます。
再び雪渓が現れると登山道は完全に雪の下へ隠れてしまいます。しかし、これまで歩いてきた登山者たちの痕跡がそこら中に残っています。問題は、その痕跡の多くが踏み抜き跡だということです。一歩踏み出すたびに「ここは大丈夫だろうか」と考えながら進みます。誰かが踏み抜いた穴を避けて足を置くと今度はそこが抜ける。まるでモグラ叩きのような状態です。正直、この区間は今回のルートの中でもかなり嫌な部類でした。雪は残っているのに厚さが均一ではなく、下に空洞がある場所もあります。かといって登山道は雪の下。結局は雪の厚そうな場所を探しながら慎重に進むしかありません。
振り返ると遠くの山々がさらに見渡せるようになっていました。登っている最中は気づきませんが、こうして後ろを振り返ると自分がしっかり高度を上げてきたことを実感できます。しかし景色を楽しんでばかりもいられません。この先には今回のルート最大の難関かもしれない急傾斜の雪渓が待っていました。斜面全体が雪で覆われており登山道も雪の下です。チェーンスパイクを装着すればかなり楽になると思いますが、正直なところキックでも行けそうな気がします。
そう思って試してみた結果・・・失敗しました。
足を蹴り込んだつもりが十分に刺さらず、そのままズルッと滑ります。「やっぱりそう簡単にはいかないか。」と思わず苦笑いしながら、今度はしっかりとつま先を雪面へ蹴り込み、一歩一歩足場を作りながら慎重に進みます。焦らず確実に。結果的には無事に突破することができましたが、ここは雪の状態によってはチェーンスパイクを装着した方が安心だと思います。
そして、この雪渓を越えた瞬間でした。目の前の景色が一変します。これまで続いていた急登や岩場、雪渓地帯が嘘のように消え去り、代わりに広大な湿原が姿を現しました。どこまでも続く木道。左右へ広がる湿地帯。そして無数の池塘。ここまでの苦労を全て回収してくれるような景色です。木道は二列に整備されており、登山者同士がすれ違いやすいようになっています。苗場山といえばこの景色。多くの人が思い浮かべるのもこの場所でしょう。正直なところ、八合目の途中からここまで急激に景色が変わるとは思っていませんでした。それほどまでに世界が変わります。
やがて「苗場山頂付近案内図」の看板が現れます。現在地は坪場。ここから苗場山山頂を経由し、さらに神楽ヶ峰方面へ向かうことになります。開けた湿原からは一気に眺望が広がり、歩き始めるとすぐに池塘が点在する景色が現れました。この日は風が非常に強く、水面には絶えず波が立っています。本来であれば鏡のような池塘を楽しめるのでしょうが、この日は池の中を覗こうとしても波紋でよく見えません。それでも全く残念な気持ちにはなりませんでした。なぜなら、池塘の数が圧倒的だからです。左右を見ても前を見ても池塘。雪渓の残る場所では木道だけが雪の上に浮かんでいるようにも見えます。おそらく雪の下にも湿原と池塘が広がっているのでしょう。
やがて現れるのが「苗場山頂1.4km」の標識です。しかし数字以上に景色へ目を奪われます。広大な湿原の中を木道が伸び、その周囲には大小様々な池塘が散りばめられています。まさに天空の庭園です。ただし苗場山は遮るものがありません。風が吹けば真正面から受けることになります。この日はかなりの強風だったため、防風対策は必須でした。風が強いと感じたら早めにレインウェアを着ることをおすすめします。
木道が雪に埋もれている場所を抜けていくと九合目の看板が現れます。八合目からはわずか60mしか標高を上げていません。しかし、この九合目付近がある意味で今回最も厄介な場所だったかもしれません。看板を背にしてそのまま雪渓を登っていくと、やがて道が消えてしまうのです。
「あれ?おかしいな。」
そのまま進むには違和感があり、一度九合目まで戻って周囲を見回してみます。すると右手奥に細い踏み跡を発見しました。どうやら九合目の看板から右へ進むのが正解だったようです。雪が残っていると本当に分かりづらく、初見では気付きにくいポイントだと思います。細い山道へ入ると雪渓は途切れ、再び木道が姿を現しました。思わず胸をなで下ろします。
しかし安心したのも束の間です。今度は踏み抜き地獄が始まりました。昨日歩いた登山者のものなのか、大きな踏み抜き跡があちこちに残っています。そこを避けて歩こうとすると、今度は自分の足元が抜ける。雪の厚みが均一ではなく、どこに空洞があるのか見た目では判断できません。中途半端に木々が生え、中途半端に雪が残っているという、この時期ならではの嫌らしいコンディションです。
木道も雪の下に隠れているため、頼りになるのはピンクテープだけ。テープを追いながら慎重に進みます。周囲を見渡すと、遠くの山並みの中にまだ真っ白な雪をまとった山々も見えていました。おそらく百名山クラスの山々でしょう。標高を上げたからこそ見える景色です。
やがて細い樹林帯の道を抜けると、再び世界が開けました。目の前には広大な湿原が広がり、山頂まで800mの標識が現れます。周囲には数え切れないほどの池塘が点在し、その景色はまさに天空の楽園そのものです。これまでの雪渓歩きや急登の苦労を忘れさせてくれるような光景でした。
ここから先は木道歩きが中心となります。歩きやすく、景色も素晴らしいため自然と足取りも軽くなります。やがて山頂まで600mの看板が現れますが、その先では再び雪渓が登場します。おそらく本来は木道が続いているのでしょう。雪の切れ目を探しながら進むと、ところどころ雪の中から木道や標識が顔を出しています。それだけでもルートを外していないという安心感につながります。
雪渓の下には湿原が広がり、その奥にはシラビソ帯、さらに遠くには雲海まで見え始めました。本当に空の上を歩いているような感覚です。これまで多くの山を歩いてきましたが、この独特の景観は苗場山ならではだと思います。
しばらく進むと役行者の碑石が現れます。この碑石が見えれば山頂はもう目前です。案内図を確認すると、山頂までは本当にあとわずか。ところがこの日は風が非常に強く、体温をどんどん奪われていきます。一旦小屋の横で立ち止まり、レインウェアを重ね着しました。やはり防風性能は絶大です。同じ気温でも体感温度が全く変わります。改めて山でのレイヤリングの大切さを実感する瞬間でした。
目の前には立派な苗場山頂ヒュッテがあります。正式には苗場山自然体験交流センターとも呼ばれているようです。二階建ての立派な建物で、手ぬぐいやバッジなどのオリジナルグッズも販売されています。宿泊料金は素泊まり8000円から二食付き12000円程度。トイレは200円のチップ制で利用でき、ビールやワンカップ、日本酒、ジュース、カップ麺なども販売されていました。外には自動販売機まで設置されており、ポカリスエットやCCレモン、ビールなども購入可能です。新500円玉は利用できないようですが、小屋内で両替対応してもらえるとのことでした。
また、小屋周辺ではauとdocomoの電波が入るという情報もありました。実際にauを試してみましたが、1本立ったり圏外になったりとかなり不安定です。それでも完全圏外ではないというだけで安心感があります。
そして「山頂1分」の看板に従って少し登ると、ついに苗場山山頂へ到着しました。標高2145m。山頂には立派な山頂標識と三角点が設置されています。ただ、正直なところ山頂そのものの眺望はそこまで良くありません。周囲の7割ほどがシラビソなどの針葉樹に囲まれているためです。
しかし、それは山頂標識の正面側だけの話でした。
振り返った瞬間、目の前にはこれまで歩いてきた湿原と池塘、そして遥か彼方まで続く山並みが広がっています。まさに苗場山の本当の主役は山頂そのものではなく、この山頂一帯に広がる広大な湿原なのだと感じました。
もし台風通過翌日に無理をして登っていたら、この景色は見られなかったかもしれません。1日待った判断は本当に正解でした。苗場山は間違いなく晴れの日にこそ登りたい山です。そして、この広大な湿原と池塘の景色は、その価値を十分に感じさせてくれるものでした。
・苗場山~神楽ヶ峰~龍ノ峰
山頂標識を後にして進むと、すぐ右手にコの字型の木造休憩所が現れます。さらに左手にも休憩スペースが設けられており、おそらくここが苗場山頂周辺で最も人が集まる展望ポイントなのでしょう。実際、目の前には思わず足を止めてしまうような景色が広がっていました。
広大な湿原の中に無数の池塘が散りばめられ、その向こうにはシラビソ帯がどこまでも続いています。まだ雪渓も多く残っており、雪と湿原と池塘が同じ景色の中に共存しているのが何とも不思議です。湿原の奥には雲海が広がり、条件が良ければ谷川連峰や平標山、仙ノ倉山、巻機山なども望むことができます。まさに苗場山らしい景色と言えるでしょう。
しばらく景色を堪能した後、次の目的地である神楽ヶ峰方面へ向かいます。木道はところどころ雪の下へ隠れており、踏み抜かないよう慎重に位置を探しながら進みます。池塘の中には茶色い泥炭が堆積しているように見える場所もあり、この広大な山頂台地を眺めていると、苗場山が火山活動によって形成された山であることを改めて実感します。
やがて木道が再び雪の下へ消え、そのまま短い雪渓登りが始まります。ここだけ雪が小さな丘のように盛り上がっており、少し戸惑うポイントです。チェーンスパイクがあれば安心ですが、雪は比較的締まっていたためキックでも十分登ることができました。登り切ると反対側に再び木道が現れます。そして、この場所こそ神楽ヶ峰方面へ続く尾根を最も美しく見下ろせるポイントでした。
目の前には一本の尾根がコルへ向かって伸び、その先に神楽ヶ峰が堂々と構えています。景色としては非常に美しいのですが、登山者目線では少し複雑です。なぜなら、これから一度大きく下り、その後に登り返さなければならないことがよく分かるからです。しかも今日はピストン。帰りには再びこの登り返しが待っています。
それでも進むしかありません。
下り始めるとすぐに枯れた白樺の木が目印のように立っています。山道脇ではオオカメノキが風に揺れ、先ほど見下ろしていたコルがどんどん近づいてきます。正直なところ、あまり標高を下げてほしくない気持ちもありますが、山はそういうものです。
苗場山頂から20分ほど下ると雲尾坂へ到着します。さらに20分ほど進むとお花畑との表記もありました。ここからは立派な角材階段の下りが始まります。歩く前から分かります。これは帰りの登り返しが絶対にキツいやつです。
周囲にはシラネアオイが咲き誇っています。紫色の花びらが点々と広がり、疲れを少し和らげてくれます。しかし足元への注意は欠かせません。崩落した箇所には木板が設置されており、慎重に通過します。ミツバツツジもまだ多く残っており、足元や斜面に鮮やかなピンク色を添えていました。
さらに進むとバイケイソウの群生が現れます。まだ花は咲いていませんが、独特な大きな葉が存在感を放っています。そして転がった角材を越えると、いよいよ登り返しが始まりました。
コルを抜けた場所には雷清水という水場があります。しかし期待して近づくと、パイプからは一滴一滴ゆっくりと水が垂れているだけでした。喉を潤そうと思うとかなり時間が掛かりそうです。奥では雪解け水らしき流れも見えますが、そのまま飲むのは避けた方が良いでしょう。利用するなら濾過は必須だと思います。
振り返ると苗場山が大きな存在感を放ちながらそびえています。
「帰りはまたあそこまで登るのか。」
そんな現実を改めて突き付けられます。
登山道自体は歩きやすいガリー状ですが、標高を上げるにつれて角材階段が増えてきます。幅45cmほどの階段が続き、じわじわと脚を削ってきます。
やがて富士見坂へ到着しました。名前からすると富士山が見える場所なのでしょうか。大きなセメント製のケルンが置かれており、「和田小屋2時間」「苗場山1時間20分」と書かれています。ただし、この時間表示はあまり信用しない方が良いかもしれません。少なくとも僕が歩いた感覚では1時間20分も掛かりませんでした。
途中には雪渓も残っており、雪の切れ目が登山道から浮いている場所もあります。踏み抜きを前提に足で雪を崩しながら進みます。豪雪地帯らしく、折れたコメツガが登山道へ覆い被さるように倒れている場所もありました。おそらく豪雪と強風に耐え切れなかったのでしょう。
やがて登り返しが緩やかになると、「神楽ヶ峰(八合目)」の看板が現れます。ここが今回の次なるピークです。
目の前には新潟方面の山々が広がり、ところどころスキー場も確認できます。純粋な山岳展望だけで言えば、神楽ヶ峰の方が好きという登山者がいるのも納得できる景色でした。
しばらく景色を楽しんだ後は再び苗場山方面へ戻ります。
そして下山時だからこそ気づく景色がありました。
九合目付近まで下ると、目の前に北アルプスの山々が連なっているのです。まるで巨大な山岳絵巻を横一列に並べたような景色で、思わず立ち止まってしまいます。登りでは足元ばかり見ていて気づかなかった景色でした。
その後、苗場神社分岐へ到着し、神社方面へ進みます。途中の池塘には立派な木橋が架けられており、まるで沢を渡るような雰囲気です。真上から池塘を覗いてみましたが、生き物の姿は確認できませんでした。
やがて左手に木製の祠が現れます。近づくと「苗場神社」と書かれているのが確認できました。ここで引き返しても良いのですが、せっかくなのでさらに先へ進みます。
すると再び雪渓の壁が現れました。
登って周囲を見渡してみるものの登山道が見当たりません。左へ進んでも違和感があり、右へ視線を向けると遠くに雪渓の下から伸びる木道を発見しました。笹薮に隠れて非常に見つけづらく、この辺りも少し迷いやすい印象です。
その後は針葉樹林と笹薮に囲まれた静かな道が続きます。途中、一か所だけ湿原が広がる場所がありました。木道の上には乾燥した動物のフンも落ちており、人だけでなく様々な生き物たちもこの環境を利用していることが分かります。
雪渓と木道が交互に現れる道を進んでいくと、3〜4畳ほどの木製休憩スペースが現れました。そして、その少し先が龍ノ峰の山頂です。
周囲は針葉樹に囲まれており眺望はありません。しかし休憩スペースから見下ろす大きな雪渓は印象的でした。雪解けが進んだ雪渓は青く染まり、その下にはおそらく大きな池塘が隠れているのでしょう。
その姿はまるで小さなドラゴンアイのようにも見えました。
というわけで山レポでした!
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苗場山は非常に歩きやすく、初心者にも自信を持っておすすめできる山だと感じました。登山道はよく整備されており、危険箇所も少なく、広大な山頂湿原へ向かって歩いていく過程そのものが楽しい山です。訪れる前は、水芭蕉がもっと咲き誇る景色を想像していたため、少し時期が遅かったことに残念な気持ちもありました。しかし、実際に山頂へ立ってみると、その気持ちはすぐに消え去ります。そこには尾瀬ともまた違う、無数の池塘が点在する独特の世界が広がっていたからです。広大な湿原と池塘がどこまでも続く光景は圧巻で、これほど開放的な湿原が山頂に広がる山は他にあまり思い浮かびません。
また、苗場山はルートの選択肢も多く、小赤沢ルート、祓川ルート、和田小屋ルートなど、それぞれ異なる魅力を持っています。樹林帯をじっくり楽しめるルートもあれば、展望を楽しみながら歩けるルートもあり、どのルートを選んでも苗場山らしい魅力を味わうことができるでしょう。
ただし、今回は山頂付近で爆風に見舞われました。広大な湿原が広がるということは、それだけ風を遮るものが少ないということでもあります。天候が良くても風が強くなることは珍しくなく、体感温度も大きく下がります。実際に僕も風の冷たさを強く感じました。苗場山を訪れる際は、防寒着やレインウェアなどの風を防げる装備を必ず持参し、万全の準備でこの天空の楽園を楽しんでいただきたいと思います!
インスタグラムで毎日山の動画を上げているので、良ければ是非ご覧ください😄
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