06:31
14.6 km
673 m
涼夏爽感、大台ヶ原☆未踏ルート、尾鷲道を辿りマブシ嶺へ!
大台ヶ原山・日出ヶ岳・大杉谷 (奈良, 三重)
2025.07.06(日) 日帰り
*ご協力をお願いします!* 絶滅危惧等、貴重な植物の画像を掲載する際には、必ず画像の位置情報を削除(撮影場所を隠す)しましょう!貴重な植物を盗掘や踏み荒らしの被害から守るためです。ご協力のほど、よろしくお願いします! ++++++++++++++++++++++++++++++++++ 連日茹だるような暑さ…(ー ー;) 去年の夏、大台ヶ原が涼しかったので、味をしめて今年も大台ヶ原に向かいます! しかし定番の東大台周回コースはもう3〜4回は歩いている。ということで、今回は趣向を変えて未踏ルートを歩きます!尾鷲辻から尾鷲道を辿り、堂倉山経由でマブシ嶺まで行きましょう!(^^) 今回のルートは東大台の南側に位置する尾鷲辻から、南に伸びる尾根に沿って付けられた尾鷲道を歩きマブシ嶺まで行くというもの。台高山脈の南端を日出ヶ岳、および大台ヶ原だとすると、厳密に言えば今回のルートは台高山脈ではないかもしれません。さらに東大台から南に伸びる尾根歩きなので、大台ヶ原にすら含まれないのかもしれない。 ただ出発は東大台ですし、植生や環境もとてもよく似ているということで、今回辿った山々を「広義」という意味で大台ヶ原の山々としたいと思います。何卒ご了承ください。 今回のルートが面白いのは、歩けば歩くほど標高が下がって行く、ということ。これは一体登山なのか!?(^_^;) ビジターセンターのある大台ヶ原駐車場の標高が1573m。尾鷲辻の手前でさらに10mほど高い地点を通過するんですが、イメージ的には出発地点である駐車場が最高地点。そして堂倉山が1461m、地倉山が手元のデータでおよそ1444m、でマブシ嶺が1411m…最終到達地点が一番低い!実際には地倉山の手前で一旦1313mくらいまで標高を下げてから、最後に少しだけ登り返す感じになるんですが、いずれにせよ往路が下り基調、復路が上り基調という不思議な山行であることに変わりはない。 さらに面白いのは、下り基調、上り基調と言ったって、実際にはほとんど下っても登ってもいないんです! 今回のルートは距離が比較的長い。往復で距離14.6km。それに対して累積標高が670mちょい。復路では堂倉山に寄っていないので厳密には純粋ピストンではありませんが、ざっくり計算すると平均斜度は距離1kmに対して高低差およそ92m!!! これって距離1mだと高低差は9.2cmってこと!2歩歩いて石ころ1個分の高低差ってことです。これはもう全く登っている感覚も下っている感覚もありません。ある意味めっちゃ楽なんですけど、その分距離を歩きますからね。 「山登り」ではなく「山歩き」。ホント不思議な山行でした(^^) それでは時系列のレポートは画像のキャプションに譲るとして、本文では気になったことをかいつまんで紹介していこうと思います☆ まずは植生…大台ヶ原ももちろんですが、今回歩いたルートでも本当に美しい森をたくさん見ることができました。面白いのはたくさんの樹種が入り混じって森を構成している、ということですね。台高山脈でも、例えば明神平辺りには広大ブナ林があるでしょう?そういった単一樹種の森は全く見当たりません。とても木の種類が多い。 正直木が苦手なので自信はありませんが、私が判別できた木だけでも、針葉樹はヒノキ、モミ(ウラジロモミが多い)、それからトウヒ…なんですがほとんど生きているトウヒは無かったですね。完全に枯れて倒れているか、少しですが立ち枯れの木も見受けられました。 広葉樹はブナ、ミズナラ、シナノキの仲間?カエデの仲間はとても多い。それからヒメシャラ、リョウブ(リョウブは花期でたくさんの花を咲かせていました)など。低木ではツツジやアセビですね。林床はミヤコザサ。それらが入り混じって森を構成している。バリエーション豊かで見飽きることがありません。 それから大台ヶ原と言えば何と言ってもコケ!この大台ヶ原というところは全国有数の多雨地域。1年間で400日雨が降る!なんて言われる場所です。地面であろうが木の幹であろうがいたるところにビッシリと苔が張り付いています。なので大台ヶ原の巨木は貫禄がもの凄いんです!ビッシリとコケを纏っていますから。一体何百年生きてきたのか!?なんて思っちゃいます(^-^) それから地質…これがまたとんでもなく面白いんです! 大台ヶ原というところは隆起準平原と呼ばれる地形。海洋プレートが大陸プレートの下へ潜り込む際に、海洋プレートに堆積した岩が大陸プレートの縁へと押し上げられて隆起した地形であると考えられています。いわゆる付加体と呼ばれるものです。 日出ヶ岳のすぐ南側には大峯・大台スラストと呼ばれる断層があり、これは断層の北側の秩父帯と呼ばれる地層と、南の四万十帯を分ける断層です。ちょうど今回歩いたルートは砂岩や泥岩を中心とした付加体である四万十帯。当然歩いたルート上の石や岩は堆積岩が多い。見た限りほとんどが砂岩ですね。大蛇嵓辺りにはチャートも多く見られますが、今回はほとんど見ることはありませんでした。ところが…! どう見たってこれ火砕岩だろ!?っていう火山由来の岩をちらほら見かけるんです。特に尾鷲辻から堂倉山に向かう辺りでは集中して多く見られた。 実は1500万年前に、この大台ヶ原を中心とした巨大なカルデラ噴火があったようなんです。半径10kmに及ぶ巨大な陥没構造は地殻変動によって完全に失われ、今は陥没断層に沿って半円状に連なる火砕岩の岩脈でしかその痕跡をうかがうことはできません。これを「大台コールドロン(または大台カルデラ)」と呼んでいます。 ではそのカルデラの中心である日出ヶ岳は中央火山なのか?…いや、そうではないんですねー。日出ヶ岳はカルデラの岩床の堆積岩が隆起し、さらに侵食を受けてできた山です。火山ではないんですよ。調べてみるとカルデラの内側で目立った火山活動はなかったようです。そして不思議なことに外輪山もない。 カルデラの縁に沿って大量の火山砕屑物を吹き出しただけで、火山は形成されなかったようです。しかしその噴出規模は凄まじく、大量の火砕流が発生した…この火砕流が曽爾や室生の山々を作ったんですね。 倶留尊山や鎧岳・兜岳、それから国見山や住塚山に見られる柱状節理。あれは大台カルデラの噴火によってもたらされた火砕流が根源の流紋岩質溶結凝灰岩です。 ところが調べてみると全ての資料で、「カルデラの縁に沿って形成された弧状岩脈の内側に火山の痕跡は無い」と書かれている。じゃあこの火砕岩は一体何なんだ!と…凝灰岩だと思うんだけどなぁ…? ただ私は素人ですし、私の目が節穴なだけで、火砕岩ではないのかもしれません。ただ踏んだ感じも… 我々登山者って足の感覚も敏感だと思うんですよ。岩によって踏んだ感触がまるで違う。例えばチャート、花崗岩、流紋岩…よく踏む岩なので、踏んだだけで感触の違いがわかりますよね。みなさんも当然意識されていると思います。蛇紋岩なんかもビックリするほど踏んだ感触が違う。 そして問題の岩は踏んだ感触も火砕岩…流紋岩質の凝灰岩っぽい…このザラついてソールがよく噛みつき足馴染みがいい感触…明らかに砂岩を踏んだ感触とは違う…これが火砕岩でないなら何が火砕岩?って感じです。 あー、これが火砕岩でなかったら私の面目丸潰れ!今までの地質学研究の成果も水泡に帰す…って感じです。どなたか詳しい方、ぜひ教えていただきたい!私としては…岩脈と言ってもある程度の幅はあるでしょうから、その周辺部の岩も含めて、激しい地殻変動によって露頭した火砕岩ではないかと勘ぐってます。これが的外れだったら地質学は一から勉強し直しです…(ー ー;) 今回初めて見る花を見つけました。地面近くに咲く白い花で、特徴的な葉が印象的です。花をよく見ると、この花の感じはノイチゴの仲間っぽい。その場で調べてみると、バライチゴのようです。初めて見ました。 ところでみなさんは花の名前をどうやって調べてます?よく聞くのはGoogleの画像検索ですが…これは近似画像を羅列するだけで全く役に立たないですね。花に特化しているわけではないですし、正答率も限りなく低い。 私は有料の花検索アプリを使用しているんですが、これがなかなか使い勝手がいい。元々正答率はかなり高いと思うんですが、それでも微妙な時は、候補の花を他サイトで調べれば、かなりの確率で花名を特定することができます。それに何といってもオフラインでも使えるのがいい!データがダウンロード形式なんでしょうね。電波が届かない場所でも使えます。これ大事。登山中って電波の届かない場所が多いですから。電波が届かなければGoogleなんて全く使いようがありませんから! このオフラインで使用できることの利点は、現場で実際の花を見ながら調べられるところです。例えば花以外のところ…葉とか茎とか、もっと細かい部分にその花固有の特徴がある場合、花の写真だけ撮って家で調べようと思っても難しいわけです。でも現場で調べられるということは、実物を見ながら確認できるということ。「茎に細かい毛がある」とか、「総苞片に粘り気がある」なんて特徴も、実際目で見て触って確認できるわけです。 今回の白い花も現場で調べました。するとクサイチゴやニガイチゴが出てくるわけです。これらの花はよく知っている花なので違うことは明確です。そこで特徴的な葉で検索してみるとバライチゴがヒットした。特徴があれば葉の画像からでも検索できるんです。あとは花期と生育分布を確認して、詳細な説明を読みながら一つ一つ特徴をチェック。そしてこの花がバライチゴであると特定したわけです。 それでもわからない時は、正直に「わかりません」と書くようにしています。当てずっぽの花名を記載することは、情報提供の観点からして間違っていると思う。ユーザーさんは優しい人が多いから、「わからない」と書けば教えてくれる方がいらっしゃるので…ありがたく甘えさせていただいてます(^_^;) 展望… ルートの大部分は木々に囲まれた尾根歩きで遠望は効きません。しかし遠望だけが景色じゃない!この美しい森だって本当に美しい景色です。 シラサコの分岐を越えると、振り返るような形で木々の間から大台ヶ原を見ることができます。本当に起伏の少ない平原地形です。そしていきなり断崖絶壁!高低差800〜900mもある断崖絶壁はスゴい迫力!左の絶壁の辺りがおそらく大蛇嵓でしょう。 地倉山の手前まで来ると山頂稜線に乗ります。この稜線は西側が崩落斜面になっているのでとても眺めがいい。大峰山脈を端から端まで眺めることができるんですよ!これは素晴らしい。大菩薩嶺の稜線から南アルプスを眺めたのを思い出す。 南の方には先週登った笠捨山と行仙岳が見えました。少し北に目を移すと鋭い俊峰の釈迦ヶ岳。さらに孔雀岳に仏生嶽。そして正面に見える雄大な山容は、近畿最高峰にして日本百名山の八経ヶ岳。弥山は雲の中。さらに小さな尖峰の行者還岳。ラスボス感たっぷりの大普賢岳には雲がかかっている。かろうじてバリゴヤの頭が見えたので、稲村ヶ岳や山上ヶ岳はその右奥になるのかな?ただこの辺りは雲が多い。 つまり近畿の屋根と呼ばれる紀伊山地…いや、紀伊半島の高い山が一望できるというわけです。本当に山深いし、これこそ絶景ですね☆ マブシ嶺の山頂もすこぶる展望がよい。美しい森の尾根歩きを楽しみたい方はマブシ嶺まで行く必要もないですが、雄大な展望を求めるのであれば、距離はかなり長くなりますがぜひマブシ嶺まで歩いてみてください(^^) 思いついたことをツラツラと書き連ねてまいりましたが、一応総括もしておきましょう。 日出ヶ岳も大蛇嵓も無い大台ヶ原歩き。それでも満足できたのは特殊な植生が彩る美しい森と、開放的な稜線から望み見る雄大な景色があるからでしょうね。しかも人が少なくてとても静か!やっぱり多くの方は見どころ満載の周回コースを歩くでしょうから。 距離がかなり長くなりますので歩いた距離分の疲れは当然ありますが、上り下りを頑張った分の疲れははっきり言って全くありません。登った感覚も下った感覚もほとんどないですねー。ただただ気持ちよく歩いただけです(^_^;) だからこそ…気持ちと体力に余裕があるからこそ、一つ一つの木々をじっくり観察したり、石や岩を丹念に調べたり、そういうことができるわけで、それがまたたまらなく楽しいんです☆ 少しだけ大台ヶ原について話します。 初めて大台ヶ原を訪れたのは、おそらく16年前かな?特殊な地形が育む特別な自然とその風景に感動したのを覚えています。それから2回、3回と定期的にこの地を訪れて来ましたが…はっきり言って大台ヶ原は全く変わってしまった。 大台ヶ原を象徴するようなトウヒの白骨化林もほとんど見られなくなってしまったし、そもそも生きたトウヒはほとんどない。トウヒの分布の南限はこの大台ヶ原なんですが、それも変わってしまうかもしれませんね。 これまでも大きな変化を乗り越えながら今の風景を作り出している大台ヶ原ですが、近年の変化の原因はササの繁殖、鹿の増加による食害、そして我々登山者や観光客が増えたことも一つの要因です。 この山は間違いなく弱っている。年々弱っていった伊吹山と同じように感じます。このままだと大台ヶ原には何も無くなる。ただの笹原の平原になってしまうかもしれません。私たちにできることは何か?…その答えはわかりません。 しかるべき方法で行われるであろう森林再生プランにできる限り協力し、見守っていくしかなさそうです。 大台ヶ原は全国のみなさんが近畿を訪れた際にはぜひ訪れていただきたい場所だと思っています。このような特殊な地形とそれが育む唯一無二の特別な自然は他にはありません。近畿の誇りです。 だからこそ私たちはこの特別な自然を守るために、小さなことでもいいからできることをしていかなければなりません。 当たり前のことですが、歩行禁止エリアに立ち入らないとか、火器の使用は禁止されていますので火を使わないとか、できればストックも無闇に突かない方がいいかもしれません。その当たり前のことが守れない人が多過ぎる! みんなの意識をね…少しずつ変えていくことでこの特別な自然を守れるかもしれない。ぜひみなさんにもご協力をお願いしたいところです。 さあ、いよいよ夏本番!毎日暑い!暑い!…と思ったら東日本はまだ梅雨明けしてないのね?(^_^;) 仕事も繁忙期で忙しいし、暑いし、しんどいし…でもそろそろ夏の遠征計画も考えなくてはいけません。この考えることがすでに楽しい☆ 暑い夏ですけど、今年も楽しく乗り越えましょう!*\(^o^)/*