笠ヶ岳・抜戸岳・大ノマ岳・弓折岳
槍ヶ岳・穂高岳・上高地
(長野, 岐阜, 富山)
2024.11.16(土)
日帰り
先日の槍ヶ岳で見た笠ヶ岳の稜線に行ってみよう。
もちろんサーキット。のんびりテント泊もいいなと思ったが、ヤマテンの予報では土曜は良いが日曜は崩れるそうなので日帰りとする。YAMAPで計画すると標準CTで17:40となり、そんなにかかるの?と不安になって活動日記を検索すると、12時間程で何とかなりそう(なって欲しい)。ならなくても翌日は休みだしバスの縛りもない。急登と評判の笠新道は登りで使いたいし眺望も欲しい、帰りの小池新道と林道は真っ暗でもいいや、と腹が決まる。
土曜早朝の新穂高駐車場は人の気配があって嬉しい。6時前に歩き出し、程なく空が白んで小鳥が囀り始める。気温は8℃。笠新道の登山口に着いた頃にはヘッデンは要らなくなっていた。
踏み石と落ち葉のつづら折りを登っていく。笹と朝露を心配したが、しっかり刈り払われている。疲れると振り向いて穂高の山並みを見て息を整える。木が低くなり山肌が枯れ草の黄色に覆われていき、ハイマツの門を抜けるとカール状に開けた杓子平に出て、笠ヶ岳の山並みが現れる。綺麗だなぁとテンションが上がり、握りひつまぶし①を腹に入れて抜戸岳への急勾配を登っていく。
稜線は風があり、日陰には雪も残っていたが、滑落するような所はないので結局チェーンスパイクは使わなかった(持っていくと使わない)。
燕岳のように緑と白が美しい笠ヶ岳に近づいていく。燕岳が北アルプスの女王なら、一人離れて立つこの山は側室かなと考える。
お腹が空いて笠ヶ岳山荘で梅おにぎりを食べる。冬期避難小屋を探すと物置が開放されていた。空き缶が置かれ燃料の臭いがして、非常時以外はお世話になりたくないなぁと扉を閉める。
山頂へは屋根瓦みたいな石が積み重なり、何度も名を変えてきたこの山にまた名を付けるとしたら瓦岳だなと考える。北峰の社に手を合わせ、南峰の突端からぐるりを見渡す。高曇りの穏やかな秋の日で、枯れ草色の播隆平の先には槍ヶ岳。
テント場のサヨナラに見送られ、東面が波頭のように崩れた抜戸岳へ向かう。ガレた山頂には年季の入った木の棒が突き立っていただけで、予報通りの時刻に谷から雲が上がってきて眺望を遮る。笠ヶ岳も隠れてしまった。大ノマ岳の手前で完全に雲の中に入り、こうなるともうどこを歩いても同じだなと消沈してよもぎ大福を頬張る。気温も2℃まで下がった。でも秋らしい侘び寂びを感じる山歩きでもあるなと気持ちを入れ替えたら、足取りが軽くなる。
台地状の弓折岳の山頂で振り向くと、海坊主みたいな丸い山が霧から顔を出している。おおっと驚き、お前が大ノマか、挨拶してくれたのかいと話し掛ける。弓折乗越から下っていくと鏡平山荘の赤い屋根が見えるが、穂高の面々は一様に雲に頭を突っ込んでいる。
山荘で一服して更に下ると、苔むした石の間を流れる枯れ草がミレーのオフィーリアのよう(イメージ)。
双六小屋グループが管理する小池新道は過保護なくらい整備されていて助かる。
秩父沢出会の手前で立ったまま握りひつまぶし②を食んでいたら抜戸岳の斜面で落石があった。頭より大きな石が乾いた音を立てながら落ちていく。上部に動くものはおらず、きっかけがなくても落ちるのだと縮み上がる。
沢沿いを更に下っていくが、緩やかなだけに長い。林道に入っても長い。今日の行程の三分の一はこの下りで、山を歩いてきた距離を一気に戻るのだからしょうがないと思いつつ飽きる。気温は5℃。
わさび平小屋を過ぎ、笠新道登山口を過ぎてもまだ日が残っており、結局ヘッデンは使わずインフォメーションセンターへ戻った。暖かなホテルの明かりが目に残り、暮れていく日の侘びしさを味わいながら車へと向かった。