Trouble Travel 😵晩秋の表銀座縦走🍁
燕岳・餓鬼岳・唐沢岳
(長野, 岐阜, 富山)
2025年10月18日(土)〜20日(月)
3日間
【prologue】
槍ヶ岳。
言わすとしれた北アルプスのシンボルだ。
これまでわざと避けてきた訳ではないが、周囲の山仲間は既に槍ヶ岳を登頂していたため、私だけ未踏のままだった。
せっかく槍ヶ岳に行くのなら
北鎌尾根からのアプローチで
という思いもあったが、8月に登った三俣サーキットで、悪天候により百高山の大天井岳が取れなかった。
そこで今回、テン泊装備で王道の表銀座を縦走し、百高山の大天井岳、赤岩岳、西岳と進み、ヒュッテ西岳の先にあるバリエーションルートで赤沢山を取った後、東鎌尾根から槍ヶ岳にアプローチ。
次いでに近くの大喰岳と中岳も踏み、百高山7座を回収してくる計画だ。
問題は秋の空。
平日を絡めても3日間全て晴れる日がない。
特に土曜日の風速25m/hの強風予報がネック。
来年へのリスケも考えたが、タイミングを逃したらいつまでも登れないため、悪天候覚悟で突っ込むこととした。
そろそろ初冠雪があってもおかしくない時期。
念の為の防寒装備とチェーンスパイク等を含め、ザックの重量は19kgとなってしまった。
【Day-1】
午前4時に穂高神社の登山者用駐車場に到着。
JR大糸線の穂高駅に移動、バス停で午前4時40分始発の中房温泉行きのバスを待つ。
しかし、時間になってもバスが来ない。
どうしたんだろうと思って、バス停の時刻表を改めて確認したところ、この日の始発は午前6時40分。
どうやら、ネットに掲載されたバスの時刻表を読み違えたようだ。
前の週まで週末の始発は午前4時40分だったが、紅葉のベストシーズンを過ぎたためか、今週末から始発の時間が遅くなっていたらしい。
午後から天候が悪化する予報のため、穂高駅での2時間のロスは痛い。
駅舎に移動し、どうしようかと考えていたところ、同じく中房温泉から表銀座をテント泊で縦走される方に出会い、タクシーの相乗りで中房温泉へ。
片道9,000円のところ、2人で割って4,500円となる。
中房温泉に到着し、いざ登山を開始しようとしたところ・・・ない。
胸元のドリンクホルダーに入れておいたはずのウォーターボトルと、ザックの胸元にあるはずのチェストベルトが見当たらない。
自宅を出る時まではあったはずだから、穂高駅かタクシーの中辺りで落としてしまったのだろう。
なくなってしまったものは仕方ない。
幸い、夏場ではないので水分の消費量は抑えられるだろうし、途中の合戦小屋でペットボトルを仕入れれば、ウォーターボトルの代わりになるだろう。
トラブル続きで先が思いやられるが、先を急ごう。
過去に初めての北アルプスとして登ったのが、この燕岳。
私のアイコンとなっているコマクサも、この時、燕岳で撮影したものだ。
思い出の合戦尾根を登り、合戦小屋でペットボトル入りの清涼飲料水を入手。
午前10時前には燕山荘に到着した。
燕岳までそれほど遠くないが、過去に登っているし、午後から強風予報。
風が強くなる前にテントを設営したいので、燕岳は踏まずに先を急ぐ。
既に稜線上は強風。
ハードシェルのフードを被り、防風対策を取るも、ザックの重荷も相まって、徐々に体力を奪われていく。
午後1時半ころに大天荘に到着、テントの受付を済ませる。
小屋番さんからも強風の注意を受け、風の影響が少ないテン場を教えてもらい、テントの設営に向かう。
しかし、既にテン場は暴風。
なんとかグランドシートを固定し、インナーテントを張ろうとするも、風に煽られて張れず。
テントの設営を終えたテン泊の方に手伝っていただき、2馬力で設営を試みるも、風で飛ばされないようにポールを抑えているのがやっとの状態。
最悪、ポールが折れてしまったり、インナーテントが破れてしまう恐れも感じた。
(後で分かったことだが、この時既に頑丈なはずのアルミ製のポールが折れ曲がっていた。)
テントが壊れてしまっては翌日以降の日程にも支障をきたすことから、大天荘での小屋泊に変更。
山小屋のなんと快適なことか!
荷物整理をした後、時折、雨交じりの強風が吹き荒ぶ中、空荷で大天井岳を踏む。
小屋に戻り、懐かしいだるまストーブの温もりに包まれて、いつの間にか心地よい眠りに誘われた。
【Day-2】
小屋で朝食を取り、まだ周囲が暗い中、ヘッデンの灯りを頼りにして、午前5時に大天荘を出立する。
テン場に向かうと、勇者が2名。
昨晩、何とかテントは持ちこたえたものの、雨と風でまったく眠れなかったという。
大天井岳の南側を回り込んで喜作新道に至る。
日の出時間を迎え、谷間には壮大な雲海が広がり、目の前には北鎌尾根と東鎌尾根を携えた雄大な槍ヶ岳が鎮座する。
時折、雲の切れ間から日光が差し込み、槍穂が光り輝く。
赤岩岳からヒュッテ西岳へと進み、ザックをデポして西岳に登頂。
さらにヒュッテ西岳のテン場にザックをデポして、バリエーションルートで百高山の赤沢山へ。
一部藪漕ぎ等があるものの、赤沢山まではしっかりピンテが取り付けられており、迷うことはない。
赤沢山からは槍ヶ岳の勇姿はもちろん、前穂高岳の北尾根やジャンダルムの眺望が素晴らしい。
ヒュッテ西岳まで戻り、ヘルメットを装着したら、東鎌尾根を進み、長い梯子やゴツゴツした岩場を通過して、いよいよ槍ヶ岳基部へ。
途中、空から霰が降ってくる。
槍ヶ岳山荘でテントの受付待ちをしていたところ、私の前で受付していたのが、小説「小窓の王」の作者、原岳広さん。
山岳ガイド中で、ちょうど東鎌尾根で抜きつ抜かれつしていたのが氏のガイドするパーティーだったようだ。
夏場なら熾烈なテン場争奪戦が繰り広げられる槍ヶ岳も、この時期なら選びたい放題。
槍ヶ岳を目の前に望むFの区画にテントを設営。
空荷で百高山の大喰岳、中岳を踏んだ後、いよいよ槍ヶ岳へ。
やや風が出てきた槍ヶ岳は終始貸し切り。
午後5時までに小屋に戻らないとアルコールや水が買えなくなってしまうため、急ぎ足で登って降りて約30分。
高度感はあるものの、難易度はそれほどでもなく、早々にテン場に戻り、晩酌に興じた。
【Day-3】
テントを揺らす強風に、フライシートに打ち付ける雨。
耳栓をしていても眠れない。
事前の予報ではこんな荒れた天気ではなかったはずたが、山の天気は分からない。
ウイスキーを飲みながら、読書をして夜を明かした。
夜間、風に煽られて、ペグが1本吹き飛び、フライシートが風に煽られ、突貫工事。
明るくなって確認すると、強風の影響で、アルミ製のペグ3本が折れ曲がっていた。
今日は上高地に向けて下山するだけの予定なので、雨が止みそうな午前7時まで出発時間を遅らせる。
本来ならテントの窓を開けると槍ヶ岳が正面に見えるはずだが、ガスで山小屋さえも見えない。
当然、当初予定していた槍ヶ岳での御来光コーヒーも悪天候により中止。
やや小康状態となった槍ヶ岳を後にし、槍沢ロッジに向かって下山すると、山頂とは打って変わって青空が広がる。
下山あるあるだ。
横尾、徳沢と進むと徐々に観光客が増え、河童橋まで来ると、平日にも関わらず、たくさんの観光客。
特に中華系と東南アジア圏の方が多い。
大きな荷物を背負った登山者はなんだか肩身が狭い。
上高地からはバスで新島々駅まで向かい、そこからは電車で松本駅を経由して穂高駅に至り、いよいよ今回の山旅も終演だ。
トラブルの数だけ、刻まれた記憶。
順調では得られぬ、深い感謝。
山に試され、未熟な己を知り、それでもまた歩き続ける。
表銀座縦走終え、下界に降りて安堵の一息。
北アルプスよ、また会う日まで。
(日本百高山 65/100座)