大岳山・御岳山・御前山(東京,山梨)
2026.07.19 (日)日帰り
二人山歩
ワールドカップはスペインが優勝した。対戦相手のアルゼンチンのシュートを前後半で0本におさえた。攻撃は最大の防御になり得るということだろうか。
前夜の三日月は光っていた。奥多摩を丹波山村の方に進むにつれて雲が多くなって、車のヘッドライトが反射していた。作場平口駐車場には車がなかった。星を独り占めできると車から飛び降りてみたが、車の位置がわからなくなるほどに、ただただ真っ暗だった。
多摩川と富士川は山梨県で繋がっている。静岡県に故郷がある自分には接点があって嬉しくなった。分水嶺までのトレイルはなだらかで歩きやすかった。足に怪我を負ったとしてもなんとか帰って来れそうなくらい安全だった。
笠取山の見るからに急な坂を意気揚々と上がると、何も見えない景色が待っていた。山頂標識が左側に鋭角に傾いていた。紙相撲の土俵際のように、あと10人くらい同時に四股を踏めばその振動で折れるかもしれない。
その先はテンションではどうすることもできないくらいに笹の大群にやられた。山の斜面に生える笹の脇に道があり、その道は笹に邪魔されてあまり見えなかった。笹の中を泳ぎ、靴の中を水が満たした。身体から推進力が自然に湧き出て、ただただ流れに身をまかせた。
笠取山から黒槐ノ頭にかけて特にこわかった。最初にやってきた笹漕ぎだった。滑ったり、落ちたり。不意に現れる太い木の根や石が濡れていた。片足が道を踏み外して股まで落ちた。笹の茶色の茎の部分に滑った。滑って笹の葉をつかめば、手は油にまみれた。
山ノ神土から西仙波の往復もまた笹のライン下りだった。片足だけよく落ちた。西仙波から和名倉山の往復はアブとブヨに追われた。東仙波の眺望は良かった。東仙波から和名倉山までの道のりはとても長く感じた。視界はずっと同じだった。細い道の両側にあるシャクナゲの木は低く、身体を目一杯に縮めた。帽子は転げ落ちた。蜘蛛の巣がピンと張っていた。
笛や鈴をしこたま鳴らして……やっと、……やっとの思いで山ノ神土に戻ってきた。帰り道はとても平坦で安全に思えて、メンタルを回復するには十分だった。将監小屋の方に向かわずにそのまま下りた。多摩川の源流で泥まみれの靴を洗った。茶色く染まった水は都心の方を流れる頃にはもっと汚れているのだろう。上流で靴を洗ってるなんて下流の人たちは知らずにいるのだろう。
意識を高く持って、なかなかに攻めた。攻めは最大の防御になり得る。大した怪我もなく、無事に帰ってこられた。笹が枯れる頃に、景色を楽しめる頃にまた歩きたいと思う。