奥多摩ラバーズ

日々の囚われから逃れるために、長い距離を歩きたかった。 選んだのは奥多摩。 何も考えずに、ただただ夢中になって歩く。 ひっそりとした奥多摩の森に溶け込むようにして歩く。 そんなトレイルをしようと思った。 山に来てさえも、 「ここにピークがあるよ」 「君のペースはこうだよ」 「あと何分で着くよ」 期待され、正解を求められ、操られ… 昔からずっと変わらない日々が、形を変えて繰り返される。 だから今回は、携帯電話をなるべく見ないようにした。 大筋は決め、あとは紙地図を見ながら気の向くままに歩く。 好きなペースで歩き、疲れたら休み、腹が減れば食べる。終電など存在しない。満足したところをゴールにしよう。足りなければ歩き続ければよい。 それと今回、僕は新しい相棒をいくつか連れてきた。 襟付きのトレイルシャツは、街から山へと違和感なく僕を導いてくれたし、 待望の日帰りザックは僕の背中と相性が良いようだ。 すっかり履き慣らした靴は、僕をどこまでも運んでくれる気がした。 １人じゃない。 怖いものなんてないさ。 ～さあ行こう、 今宵僕らは、 奥多摩ラバーズ～