ヒル下がりの不老山
「ヒルは木から落ちてこない。」という本が面白い。まだ読み途中だけど、ヤマビルって意外とかわいい生き物なのかもしれない。山登り歴が浅いこともあって自分はまだヤマビルに出会ったことがないのでそろそろ経験として会っていかなければ。ということで雨続きからの曇予報でヤマビル出現率UP中の不老山へ行くことにした。とはいえ血は吸われたくないので、ヒル下がりのジョニー(キャンプ用に数年前に購入)と念のため塩を持参。 小田急線新松田駅から御殿場線に乗り換えて駿河小山駅へ。登山者らしきひとは皆無。とりあえず駅前のコミュニティセンターに入ったら登山バッジが売っていたのでゲット。不老山と以前に登った高松山と三国山も購入してから山行開始。舗装路を歩いて金時公園から湿った山道を登っていく。そして枯れ葉多く湿っているポイントをじっと眺めてみると、うようよと動くものがあちこちに。ヒル遭遇ミッションはやくも達成。本によると二酸化炭素と温度に反応するとのことだったので、息を地面に向けて吹きかけると、ヒルたちが一斉に頭を上げてキョロキョロと獲物を探すように動き始めた。これが噂のヒルダンスか。確かにこれはちょっとかわいいかもしれない。 しかしその一方で足元をみると早速靴に何匹かくっついてよじ登ろうとしてきた。吸着力が強く、デコピンだとなかなか離れない。足で何度か弾いてようやく離れる。指でつまむとすぐに手に吸着してくる。塩をかけるのが最適なんだろうけど、まずは物理でやりあった。次から次へと靴にのぼってくるのできりがない。 このまま止まっているといずれ吸血されそうだったので早々に退散して歩を進める。林道が中心だが、広々としていてほどよく植物が茂り雰囲気がよい。乾燥している場所にはあまりヒルはいないようだったが、濡れた枯れ葉の上などを歩くといつのまにかヒルが靴についている。やつらは動きが早くて反射神経がよさそうなので、地面に着地した瞬間に足裏に吸盤で吸い付いてくるのだと思う。安易に休憩もできず、度々足元や靴にヒルがついてないか確認する必要がある。 山頂までの道は登山道と林道の分かれ道などが多く迷いやすい場所もちらほら。判断に迷って止まっているとヒルたちが寄ってくる。ゾンビに追われているような気分になってくる。いつのまにか追い込まれ登山モード。 山頂近くの場所に白いものが見えて、よく見てみたらなんとギンリュウソウ!先日の西丹沢でも見つけられなかったのでテンション上がる。葉緑体を持たず光合成を行わないために真っ白の体をしていて、幽霊のような怪しさがある不思議な花。別名ユウレイタケともいうらしい。ただ生えている場所がじめついた落ち葉だらけで、とうぜんやつらもうごめいていた。覚悟を決めて2〜3分ほど止まってギョリンソウの写真を撮る。その後足をみると数匹はスネ辺りまでのぼってきていた。 不老山の山頂はベンチがあるだけで眺望はない。ただ陽が差し込んでいてヒルの気配はなかったので、安心して休むことができた。周囲は針葉樹の植林になっている。植林以前はどんな景観だったのだろう。ファミマのおにぎりを食べ、下山へと向かう。登りよりもペースが早まることもあってヒルにつかれることはほとんどなかったが、それでもたまに靴にへばりついているやつを見かけた。下山路が乾いた林道に変わると、そこから先はヒルを見かけなくなった。 神縄断層の少し手前に良い感じの滝があった。看板もとくになく、地図にも名前は載っていない。この辺りはいたるところで湧いた水が林道を流れており、渓流もあって水が豊富だ。神縄断層は伊豆半島が50〜100万年前に本州と衝突したときにできたらしく、垂直に岩が変わっている断層を見ることができる。そのときから丹沢はいまでも隆起を続けているようだ。 だんだん渓流の音が大きくなってきて、水の流れをみていてふと目をあげると、目の前に鹿が立ってこちらを見ていた。微動だにしない。もしかしたら超絶リアルにつくられた置物なのかもしれないと思い始めたころ、顔がわずかに動いたのでやっぱり本物だった。「ヒルにやられちまってよう」とでも言いたげな顔をし、山の中へ消えていった。 そんな感じで駿河小山駅まで戻り、靴を脱いだりしてヒルにやられていないか確認したら大丈夫そうだった。念願のヒルにもギョリンソウにも、おまけに鹿にも会えた山行で満足。ただヒルは今回でお腹いっぱいなのでおかわりはいらない。そういえば最初から最後まで誰一人とも会わなかった山行は今回が初めて。理由は言わずもがな。





