06:03
6.1 km
920 m
冬季百名山60座目:羅臼岳~Star Burst Stream~
羅臼岳・硫黄山(知床)・羅臼湖 (北海道)
2025.05.12(月) 日帰り
25.05.12 登山やってて知床峠に来た人は誰もが思っただろう。 『なんでここから羅臼岳登れないんだよ』と。 羅臼岳の登山道はウトロと羅臼の海から登る2本のみ。 山頂まで3キロという最短距離にある知床峠からは なぜか登山道が無く登れないのだ。 だがそれは無雪期の話。 残雪期には雪の上を歩いて登頂が可能とな!? この噂を聞きつけ羊蹄山を諦め知床峠の 開通に合わせて帯広から再び道東へ移動。 共にルスツでの激務を乗り切った戦友・植村さんが経営する 弟子屈のゲストハウスにて英気を養いアタックの日を迎えた。 快晴の朝、9:30のゲートオープンに合わせて峠を攻める。 道中に見えた羅臼岳は西斜面の雪は少ないものの谷筋には残雪あり。 前日雨だったこともあり山頂付近には霧氷の痕跡も確認できた。 知床峠からのコースは山の南西側にある 『南西ルンゼ』と呼ばれる谷を経由して登るらしい。 峠から見た感じ完全に壁なんだが… まぁ東斜里岳の急斜面登った経験あればいけるよな? 挑戦は気軽に!装備を整え10:20に入山。 登山道は無いものの適当に木を 搔い潜りながら進むと雪原に出て歩きやすくなる。 雪も締まってて登山靴のみでガンガンイケる。 だがその雪原に残るは横断したヒグマの足跡… うわぁ…やっぱもう目覚めてるよなぁ。 今回冬装備のままだから ヒグマ対策の三種の神器何も持ってないわ。 もし出会ったらピッケルで戦うしかない…! 雪原の切れ目には藪の海が広がる。 南西ルンゼに向かうためにはここを通らねば。 あの足跡見た後だとマジで入りたくない… ホイッスルが無いなら自分の声帯を使うまで! 奇声を上げながら藪漕ぎを繰り返した← どうにか熊とは出会わずに南西ルンゼの下に到着。 見上げるような雪壁が1㎞以上続いている核心部だ。 ここで使わないワカンとストックをデポし装備チェンジ。 両足にはアイゼン 【ブラックダイヤモンド・セラックプロ】 左手にはいつものピッケル 【ぺツル・ガリーハンマー】 そして右手に持つのは新装備! 【ブラックダイヤモンド・スウィフト!】 いつか冬の西穂高岳を登ろうと購入したテクニカルアックス。 全く使わずに5年以上経っちまった… いい加減封印を解いて手に馴染ませるとしよう。 なんたって二刀流は男のロマンだからな。 さぁ行くぜ、南西ルンゼ。 スターバースト…ストリーム!!← ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ダブルアックスで南西ルンゼの討伐スタート! 見た目ほど角度はキツくなく40~45°といった所だろうか。 余裕で50°を越えてそうな東斜里岳ほどではなく心に余裕が。 雪も締まっててアイゼンもピッケルも良く刺さる。 このまま一気に進むぜ! と思った瞬間右上の岩場が突如崩落。 轟音を立てて岩雪崩が襲い来る! 幸い隣に谷に落ちていきルンゼ方向に被害は無かったが もう心臓バックバク。 登っていくと雪面にはクラックが多数あり 踏み抜きや雪崩の予兆を感じさせる。 更に左には藪がありいつヒグマで出てきてもおかしくない状況。 このルートやべぇじゃん… 警戒しなきゃならん要素が多すぎる。 プレッシャーに負けペース大幅ダウン。 気合で南西ルンゼの上に辿り着いたものの また藪が行く手を阻んでおりルートファイ再開。 正解を見つけられず藪の海を泳ぐ羽目に。 死に物狂いで泳ぎ切ると再び雪原が現れ漸く頂上が見えてきた… 前日の荒天で烈風に晒されたようで岩塊はエビの尻尾だらけ。 氷雪の作品群を愉しみながら 急登の岩場をピッケルで制し14:20に山頂に立った。 4時間…だと。 たった3キロに想定以上に時間かかっちまった。 やっぱ冬のバリエーションルートは甘くないわ。 だが珍しい羅臼岳の快晴‥ 2年ぶりの頂を存分に愉しむとしよう。 東には残雪美しい知床連山。 南には伸びやかな国後島。 西には知西別岳、遠音別岳、海別岳、斜里岳。 北にはオホーツク海の海岸線。 相変わらず素晴らしい景色だった。 このままのんびりと山頂で寛ぎたい所だがそうはいかない。 春季の知床峠にはタイムリミットがあり 16:00で入口ゲートが閉まってしまうのだ。 山頂で最低限の写真と動画を撮って時計を見たら既に15:00。 うーん、ギリギリアウトだなこれw 多分間に合わねぇけど流れに身を任せて下山開始。 急登な分下りは爆速で南西ルンゼ下のデポ地点までわずか30分で到着。 藪を強引に突破し雪原を突き進み16:20に下山完了。 峠にはまだ数台車があり管理車が待機している状態。 ギリゲートクローズには間に合った。 南西ルンゼルートは ①常にルーファイ状態 ②ヒグマ対策 ③落石の警戒 ④雪面のクラックと雪崩の警戒 ⑤16:00のタイムリミット というプレッシャーのかかる要素が5つもあり とにかく心理的に疲れる山でペースが思うように上がらなかった。 決して運動サボって体力落ちたわけでも ビール飲みすぎて体重3キロ増えた影響じゃないからね?← 難易度は高いけど常にスタートの知床峠と ゴールの南西ルンゼが常に見えている分迷うことは無いのが救い。 無理だと思ったらすぐに引き返せる間口の広さがある。 バリエーションルートの経験を積むにはうってつけの山と言えよう。 とりあえずこれで北海道の冬山は終わり。 羊蹄山獲れなかったのが心残りではあるが また冬に来る理由ができたってことで。 過酷な北海道の冬山とバリエーションルートを攻略して またひとつ冬山のレベルは上がったと思う。 冬季百名山60座目・踏破!