還暦の挑戦💦矢筈岳🙋♂️
矢筈岳・青里岳・魚止山
(新潟, 福島)
2024年04月13日(土)〜14日(日)
2日間
矢筈岳(△1257m)は、私にとって大きな大きな憧れの山である。コンプリートを目指している新潟百名山(新潟県山岳協会)に選定されているが、登頂するには往復21キロを歩き通す体力、濃い薮を前にしてもひるまず突入できる気力、越後特有の残雪に対する技術力、そして何よりも残雪状況と天候のタイミングに恵まれる運が必要だろう。
矢筈岳は、川内山塊の最奥の秘境の山であり、登山道は無く、残雪期のみに許されたバリエーションルートとなる。『新潟100名山』によれば、柴倉沢登山口から五剣谷岳、青里岳の2泊3日のルートが紹介されているが、仕事を持つ身にはなかなか3日間の山行は難しい。
yamapを参照すると、室谷洞窟から日帰りで登頂する健脚の強者の記録があがっているが、還暦を過ぎた自分には絶対に無理と考えた。特に令和6年3月27日に魚止山の途中まで足を進めたが、それを再認識する機会に過ぎなかった。
4月の第1土・日曜は仕事のため、山行は不可能である。第2土・日曜を利用して1泊2日で、魚止山経由で狙うこととした。準備を進める上で、かつて行った残雪期の奥穂高や八海山の八つ峰を狙う時よりも緊張している自分を感じた。
当日の朝、室谷洞窟からの2時間の林道歩きを覚悟して、5時30分を目安に登山口に行ってみると、通行止めの掲示も無く、落石に注意しながら車を進めることができた。途中、路肩に4台ほど車が止まっている。自分もその最後尾に車を止めて残りの林道を歩き出す。3月27日と異なり、本当に雪がない、あっという間に魚止山の取り付きに着き、雪のない夏道を登っていく。美しいイワウチワが「よう来なさったね」と急登を登る自分を励ましてくれる。854m地点あたりから頂上までは残雪が7割程となる。
魚止山(△1078.6m 新潟百名山+10)の頂上に久々(2007年4月27日以来)立つ。美しい青空の下、遥か彼方に凛々しく聳える矢筈岳が見える、素晴らしい天気に恵まれた。雪はもう腐り始めており、持参した12本爪のアイゼンはここでは不要である。P1055m地点を過ぎ、痩せ尾根になると本格的な藪漕ぎが強いられる。SCARPAの冬靴は防水がしっかり効いており、残雪登山でも全く沁みてこないが、ハードソールは木の根を踏むと滑り、重いテント泊山行のリュックに揺られるのを注意しながら歩く。
P1066m地点あたりで先行のパーティーに追いつく、何とこの矢筈岳にてY山岳会御一行とお会いした。鉈を振るい薮に道をつけていただく、私のような一般登山者にとってこれほどありがたいことはない。ただただ感謝しかない。Y山岳会の方は、かつて浅草岳から矢筈岳に縦走されたお話しを目を細めながらされる、矢筈岳を目指しながらこのような武勇伝を聞くのは本当に至福の時を過ごした。
当日は、三川分水峰をテン場にしようと思っていたが、Y山岳会御一行も同計画であった。三川分水峰に着くとリーダーの方が、まだまだ日は高く今日のうちに矢筈岳を登頂できるとお話しされる。自分も便乗させていただくことにした。初めての矢筈岳である、Y山岳会の方とご一緒できるなんてこんな有難いことはない。
ストックをピッケルに持ち替え、念の為12本アイゼンをアタックザックに入れ、意気軒高に出発する、しかし、残念かな猛烈な薮が行く手を阻み、遺憾ながら途中撤退せざるを得なかった。明朝5時出発で仕切り直すことにした。テン場に戻り、天幕を仕込み、水作りを行う。Y山岳会の方が、晩の集いに誘っていただいたが、もう疲労困憊でテントで横になったらそのまま不覚にも寝てしまった。Y山岳会の方のお話しを聞ける機会を逃したのは一生の不覚である。どこかの居酒屋でも構わないから武勇伝の続きを伺いたいと願った。
明朝4時に起床し、暖かい即席ラーメンで腹ごしらえをする、そんな時だった。Y山岳会の方が、自分たちは矢筈岳登頂はしない、あなただったら必ず登頂できるから目指して欲しい旨、お話しされる。いくばくかの寂寥感はあったが、「あなただったらできる!」の言葉に意を決して単独行を行うこととした。雪はしっかりしまっており、12本アイゼンがしっかり効く。
それでも、前日の疲れは取れず、足取りは重たい、そんな中、単独行の後続者と出会う。なんと日帰りでの方であった、何という健脚の持ち主か、しかも私と同じ矢筈岳初チャレンジの方であった。互いの足跡をリスペクトし合い、先行していただく。
矢筈岳急登の登りは早くも半分雪が腐りかけ、12本爪アイゼンのキックステップで慎重に登る。怖いのは雪割れによる雪崩だ。慎重には慎重を期して登り、下矢筈岳に登頂した時は、心が震えた。川内山塊をはじめ、越後の山々の全てを確認できる。「これだ!これが見たくてここまで来た!」と叫んだ。後は、多少の薮はあるがビクトリーロードである。風は全くない、爽やかな薫風の中、矢筈岳を登頂する、満願成就とはこのことであろう、この成就感は何ものにも替え難い。後半の下山は反省点多数で、決して人に話せる部分ではないが、何よりも還暦の冒険として矢筈岳に登頂できたことは、調子は良いが自分の中で全てを帳消しにするくらいの成就感であった。
最後まで長文お読みいただき、ありがとうございました。このレポートが、今、お読みいただいている「あなた」にとって矢筈岳に登頂するほんの一助になればこんなに嬉しいことはありません。健闘をお祈り申し上げます。