05:21
8.2 km
818 m
杉ノ峠〜大久保山〜土坂峠〜父不見山 古峠と上武県境尾根を歩く
父不見山 (埼玉, 群馬)
2024.03.24(日) 日帰り
「乗り物が四通八達し、遠く山背の鼻を迂回しても、便利に便利にと傾いて行く人の心は、足で山背を乗り越さなければならないような峠路は、忘れてゆくのでしょうか。とうげ、人ごとにさまざまな思いをいだかせて優しくひびいたその言葉。」(佐藤節 西上州の山と峠) 佐藤先生の優しい言葉で始まる、父不見山と塚山の項。私の旅情を大いにくすぐった。そうだ、峠に行こう。でもまさにその四通八達する便利な乗り物でズバッと奥山まで一気に行ってしまうこの矛盾・・・・ 言い訳するようで何だかみっともないが(笑)佐藤先生が歩かれていた50年前には、基地となる元気な民宿も鉱泉宿も存分にあり、鉄道やバスが豊かなネットワークを形成していた。どこから登っても降りてもそれでも何とか家に帰り着くことができたのだ。 現在は歩きたどり着いた先から一体どうやって帰りついたら良いのやら、計画地図を引きながら途方に暮れることも多々。今回もピストンでなく、佐藤先生の本の行程通り降りた先からバスに乗れていたら、どんなに楽しく豊かなプランになったことだろう。 網目のように張り巡らされた林道は今やそのお役目も終え、杣人も通わず壊れても直されず、荒れてゆく一方。バスが通るどころか住民は皆山里から降り、鳴り物入りで巨費を投じて通されたはいいけれどほとんど通行者のいないトンネルが悲しく残る。通常のアクセスがほぼ不可能になってしまった山も増えてきてそのうち登山道も薮におおわれてゆくのだろうか。 果たして時代は本当に進んだのか。佐藤先生が冒頭で切なく思いを巡らせた便利になり過ぎてしまった山里の風景からわずか50年、私たちはそこからぐるっと一巡して、人馬も通えぬ山奥にゆっくりと還ってゆく過程の、まさにその渦中にいるのだ。 便利さの恩恵にどっぷり浸かっているであろう年代の自分が何言っちゃってんだかな・・・と自嘲しつつ、これを栄枯盛衰というのやら、少子化が行き着いてどん詰まりになったこの国の行く末と言えばよいのやら、そんなしょーもないことを考えつつバリ道をひとり歩く中年・・・ なんかヤダなそれ!(笑) コース詳細 ※林道長久保線は荒れはてた対面通行の難しい林道。走行十分に注意。杉ノ峠入り口付近〜その先林道西秩父線は現在通行止めなので、その手前で路駐は可能。埼玉側からの公共交通機関でのアクセスは厳しいが不可能ではない(バス停から往復4時間弱の林道歩きになる)バス利用なら長沢〜坂丸峠〜使った別ルートを設定する方が良いかも。車でも群馬県側からアクセスする方が楽か ※杉ノ峠頂上までの道はオフロードバイクの走行跡であろう、えぐれた悪路。斜度は緩いがくじきや転倒注意 ※杉ノ峠〜大久保山〜土坂峠は一般登山道ではない。踏み跡やテープは多いのでルートファインディングは易しめ。以前は薮多いルートだったらしいが、現在はかなり歩きやすくなっている 県境尾根によくあるタイプの断続的アップダウン、急登急降下、細い岩尾根あり。特に土坂峠手前、土坂山からの急降下地点はかなりの斜度、落ち葉で相当滑りやすい ※「埼玉県の山」で打田さんが推奨するように落葉しているシーズンが見通しもよく歩きやすいだろうと思われる。そもそもこのコースに展望を期待して歩く人は少ないと思うが大久保山はなかなかの展望地 ※今回ルート上に残雪はゼロ