29:41
36.6 km
3368 m
芽室岳・雪盛山・ルベシベ山・ピパイロ岳・伏美岳・妙敷山 夢の積雪期日高縦走
十勝幌尻岳 (北海道)
2024.04.12(金) 4 DAYS
積雪期の日高を知るにつけ、時期による雪の状態、アプローチの除雪状況、3泊以上の行動力など厳しいハードルが現れます。 それゆえ実行する価値が自分の中で益々高まっていくのです。 定年退職してから、5月、1月、3月と往復登山をしていよいよベストの4月に挑戦と思いきや昨年は天候不順で見送りに。 今年も2月、3月に往復登山をして4月を迎え、好天続きの予報が出たのでついに縦走を企てました。 単独行でも転落遭難の危険性が薄い主稜線として目をつけていた芽室岳~ピパイロ岳に決定し調べると、先日芽室岳の林道が除雪されたという情報が。5㎞2時間節約できるのはありがたい。 12日朝息子と上美生で待ち合わせ、美生ダム手前の伏見登山口ゲートに車をデポ。芽室登山口へ送ってもらいます。 スキー登山の先行者が1台停まっていました。昨年できたばかりの鉄橋の向こうは雪が続いています。 息子のエールを背に4日間の山旅が始まりました。 全荷のスノーシューではさすがに踏み抜きが多くスキーがうらやましい。 耐えて尾根を登ります。3月までは粉雪ラッセルに苦しめられていたので贅沢は言えません。 体重を受け止めて締まるザラメ雪は残雪期登山の味方です。 1000m位まで高度を上げると展望が開けます。1200mからは山頂への雪原が。本当にスキーツアーがうらやましい尾根です。先行者はもう別コースを滑り降りた模様でスライドはしませんでした。 稜線が近づくと小雨が落ちてきました。山頂近くではガスが。パノラマはお預けですが明日からの好天が約束されており楽しみは先送りにします。 記念撮影をしてから慎重に方向を定め縦走に入ります。 目標は稜線上にある1504m池マーク。尾根が二つに割れて谷間に池があるようです。 予想通り吹き溜まりが出来ておりイグルー制作には最適です。 夕方には晴れ始め夕陽の日高山脈を眺めながら念入りに穴を塞ぎ快適なイグルーとなりました。 ザラメ雪は固まりやすいので作業しやすいですが、炊事の暖気で融けやすい。やはり明け方は隙間風が。 翌朝は見事な朝日。一日快晴の予報です。初めての稜線を進むと1726m峰が大きくそびえています。 ルベシベ山より存在感のあるその山は雪盛山というそうです。 ルベシベ山のコルには巨大なクマの足跡が。寝転がって遊んだ跡まであります。今朝方美生川から尾根を越えて行ったようです。 ルベシベ分岐には11時に到着C2予定地ですがアタックしても時間が余るので先へ進むことにします。 空身アタックは久しぶりに軽快に歩け、周りを眺める余裕も。 チロロ岳へと続く稜線に見惚れてしまいました。今はパンケヌーシ林道が使えずに遠い山となっています。 縦走に戻り1644mポコで初めてブッシュが顔を出しハイ松漕ぎを強いられました。ここは分岐からトラバースが正解でした。 午後から風も出始め、体力も尽きて来て一歩が重くなります。コルにはイグルーが掘れそうですが風の中の作業は厳しい。山頂の方が風が弱いはずと1696mポコを目指します。 山頂の風下側は吹き溜まりはありませんが転落の危険もなくテント場のブロックが積めそうです。 何より眺めが最高です。ピパイロ岳と1,967峰が圧倒的で、芽室岳と伏見岳の中間地点。日高山脈の真ん中に居ることが実感できます。 テントなので夕陽、星空、夜景、朝陽とフルに楽しめました。 14日も快晴で、下界は20℃以上予報の朝です。 しばらく細い稜線が続くのでアイゼンピッケルスタイルで進みますが、氷化はしておらずキックステップが効くので安心できました。 1712ポコで細尾根が終わるとここもハイ松漕ぎが待っていました。 ここからいよいよピパイロ岳への400mの登りにかかります。 1時間半の急登に耐えて稜線に這い上がるとついに幌尻岳、トッタベツ岳と劇的なご対面。ここまで全く見えない事が感激を倍増させます。 岩だらけの西峰に着くまで写真と眺めを我慢して、岩陰で落ち着いてから堪能します。 昔GWに踏んだ1967峰、幌尻を目指しながらガスで何も見えなかった北トッタベツ岳。 今年3月に踏んだばかりのカムイ岳。その時見惚れたエサオマン。 そして死ぬまでには踏みたい雪の幌尻岳、カムエク。 この2山に行くためには3泊が必須なので、今日も下山せず稜線で3泊目を過ごします。 いろいろな想いが巡り、時間を忘れますがここからピパイロ本峰までが危険なナイフリッジなので気を引き締めなおし進みます。 幸い暖気で雪が緩み滑落の恐怖は減りますが、逆にぬかってバランスを崩す危険もありました。 核心部は岩稜の上はロッククライミングの世界なので、急な雪面のトラバースに入ります。 20m程は壁を向いての横歩き。顔を出したブッシュが助けとなりました。 昨年5月にたどり着いたピパイロ岳の山頂看板と再会して一安心。やっとゆったり寛げました。 まだ11時なので余裕で縦走を進められるとこの時は思っていました。 5月に2時間で駆け抜けた伏見への道は、暖気で緩み下りも登りも粉雪ラッセルより厳しい。 暑さにばて体力も枯渇し、4時間かかってやっと伏見岳頂上へ。 下界が近づいてきましたが、2度も泊まっている山頂を避け妙敷山へのコルを目指し下って行きます。 昨年1月に安定した大きな雪庇があることは見ているのでどこでもイグルーが作れるはずです。 4時から3泊目のイグルー制作に取り掛かります。さらに緩んだ雪は積みやすく塞ぎやすい。 いつも以上に丁寧なブロックを作り奇麗に天井を作れたはずでした。 しかし、暖気の影響は予想以上で朝は融けて天井は隙間だらけ。暖かい夜だったのでゆっくり眠れましたが。 15日唯一のピーク妙敷山を目指します。今日も20℃以上の予報で朝から雪が緩い。 踏みしめながら時間をかけて山頂へ。 伏見岳とは少し違う角度のパノラマ。今山行の見納めなので目に焼き付けます。 北東尾根は最初がとても急で1400mまでスノーシューでもバランスを崩します。 そこからスキーに適した広い雪庇となり下部まで続きます。 所々にピンクテープもありスキーツアーコースとしてよく使われていることが分かりました。 下部の藪漕ぎを覚悟していましたが、864ポコまでブル道もあり、その下も植林跡のブル道が点在。 ほとんど藪を漕がずに山頂から2時間半で林道に出られてラッキーでした。 スキーが使えそうなのは渓谷橋まで。枝沢を渡るポイントで大休止。ラーメンタイムとします。 そこからは完全にGWの林道状態で雪がほとんど消えています。 半袖でもポカポカと暖かく鹿の集団と出会ったり登山口まで散歩気分でした。 クルマに着いて下界に降りまず飲食で栄養補給。 更別温泉は月曜定休で自由が丘温泉で長風呂。 日帰りで十勝幌尻岳スキーツアーに行ってきた息子と焼き鳥屋で晩飯、と定番の夜を過ごし夢の縦走をを実現した余韻に浸って翌日石狩へ。