裏旭岳・清水岳・白馬岳
白馬岳・小蓮華山(長野,富山)
2026.05.30 (土)2 日間
初夏の気配が漂い始めた北アルプスへ、一泊二日で清水岳に行ってきました。 久しぶりのテント泊装備は予想以上に重く、肩に食い込むザックのベルトが痛い。それでも、これから二日間、山の中だけで過ごせるという期待が、その苦しさを上回ります。 猿倉駐車場が工事中のため二股ゲートから長い舗装路を歩きました。 距離約5km、標高差約400m、約1時間の舗装路の登りは結構疲れます。 猿倉山荘では山開きの準備が進められていました。 神主さんの姿もあり、山へ入る前の独特な雰囲気。多くの登山者を迎える季節が始まります。 工事用道路を超えて登山道に入ると足元にはニリンソウが白い絨毯のように広がり、その間からサンカヨウが透き通るような花びらを揺らしています。 シラネアオイの紫色が森の緑に映えていました。 樹林帯を抜けるにつれて空が広がり、稜線が少しずつ近づいてきます。 白馬尻小屋を過ぎると、いよいよ大雪渓です。 アイゼンを付けながらスキーを担いで登ってきたお兄さんと楽しくおしゃべりさせて頂きました。 お兄さんはあっという間に見えなくなっちゃいした。 見上げれば両側の岩壁が高くそびえ、その圧迫感に自然と足取りが慎重になります。 時折どこかで落石の音が響き、そのたびに顔を上げます。 標高2200メートル付近で休憩していた時、夫がザックから荷物を取り出した瞬間、ダウンジャケットの入った袋が風にさらわれてしまいました。 「あっ!」 声を上げた時にはもう遅く、袋は雪面を跳ねるように転がり落ちて行きました。 頭の中が真っ白、完全に終わった、そう思った次の瞬間、奇跡が起きました。 袋は五十メートルほど下にあった小さな石に引っ掛かり、ぴたりと止まってくれました。 広大な雪渓の中で、たった一つの石に救われる、あまりに出来すぎた結末に、思わず笑ってしまいました。 ダウンを持って登り返そうとすると今度はラクと叫び声が。どこから落ちてきてるのかわからず、お兄さんが指差ししてくれなければわかりませんでした。 石が少し離れた横をかすっていきました。 その後も急登は続きます。 前回登ったのは8月で夏道が出ていたのでこの急登は知りませんでした。(この時はチェンスパすら付けずに登りました。) 頂上宿舎近くまで雪渓を登ります。 標高を上げるにつれ雪渓を登るのに夢中になってしまい空腹で頂上宿舎が見えた頃には完全なシャリバテでヘトヘト、フラフラ状態になってしまいました。 午前中は優しかった風も、稜線へ近づくにつれて次第に力を増していきます。 テント場では風が唸り声を上げるように吹き抜けていきます。 2人いっぺんにテントから出るのが怖いくらいです。 張り綱を締め直しながら何とか設営。 夕方になると雲ひとつない空が赤く染まり始めます。 その夜、強風で何度も目が覚めました。 テントのフライが激しくはためき、山の風の強さを感じます。 外へ出ると東の空にほぼ満月が浮かんでいました。 翌朝、風は不思議なほど収まっていました。 テン場の丘を登ると大きな岩の上で雷鳥が私たちを送り出してくれました。 一昨年登った旭岳の山腹をトラバースし清水岳へ向かいます。目の前には剱岳。 鋭く天を突くその姿は圧倒的です。 隣には毛勝三山が雪をまとい、さらに後立山連峰が果てしなく続いています。 遠くの空の向こうには白山まで浮かび上がっていました。 清水岳への道は雪の世界でした。 急斜面ではアイゼンの爪を確実に効かせ、一歩ずつ進みます。 足元の雪の下には何百メートルもの空間が広がっています。 ようやく辿り着いた山頂は、標柱もない穏やかな雪の丘でした。 強烈な達成感というよりも、不思議な静けさがありました。 風に吹かれながら周囲を見渡します。 ここまで歩いてきた稜線。 遠くに連なる山々。 真っ白な雪面。 もう一つの目的だったツクモグサを探しに白馬岳に向かいます。 登りながら岩陰に目を凝らします。 すると、小さな黄色い花がひっそりと咲いていました。 これで芦別岳、ニペソツ山、ピパイロ岳、横岳、白馬岳で見る事が出来ました。 頂上宿舎に戻り、熱いカップラーメンと賞味期限切れの半額コーラを頂きました。冷えた身体に染み込む塩味がたまらなく美味しい。 今年白馬山荘は120周年だそうです。凄っ。 下山の大雪渓は前日より雪が緩み、歩きやすかったです。 落石に注意しながら高度を下げます。 何度も立ち止まって振り返ります。 青空の下に広がる白馬の山々があまりにも美しい、また来ようと思う山は多くはありません。 大雪渓のアイゼン、ピッケルを使う緊張感も、強風の夜も、ツクモグサとの出会いも、すべてを含めて忘れ難い山旅になりました。






