05:23
8.3 km
954 m
西穂丸山・西穂独標・ピラミッドピーク・チャンピオンピーク・西穂高岳
槍ヶ岳・穂高岳・上高地 (長野, 岐阜, 富山)
2025.11.30(日) 日帰り
ロープウェイを使って山荘に泊まり、翌朝ピークを踏んで上高地に下り電車で帰るという素敵なレポを拝見した。僕もこういう余裕ある山行がしたい。そして雪の付いた奥穂の勇姿を眺めたい。 だが日曜しか時間がないのでロープウェイだけ予約して早めに寝る。日帰りでも3時に起きて行けばかなりのんびりできるだろう。 目覚めて時計を見ると何故か6時。慌てて家を出て新穂高の駐車場に着いたのが10時、ロープウェイに乗れたのが10時半、西穂高駅を出たのが11時と刻々と時間がなくなっていく。最終の下りが今日までは16時45分(明日からは16時15分)だから、14時をリミットとして行ける所まで行ってみよう。 林の中は雪がしっかり積もっていたので最初からアイゼンを履く。サクサクと心地良く爪が刺さり、40分程で西穂山荘に着く。腹拵えに名物の西穂ラーメン(味噌)を食べる。味はまぁ、うん。 途中で換装する時間が惜しいので中間着を脱いでシェルを羽織り、ヘルメットとピッケルも出して歩き始める。 西穂独標で時計を見ると13時で、顔を上げると2つの尖峰に黒と白の山頂標識が刺さっているのが小さく見える。あと1時間であそこまで行けるのか?無理じゃね?下りの方が速いし15分くらいなら延長してもいいのでは?危なくね?と自問自答しながら急な岩場を下る。まだ雪が薄く岩で爪が滑らないよう気を遣う。 トレースが迷っていて最初の方のご苦労を思う。トレースの有無で時間も労力も全く異なる。ありがとうございます。 ピラミッドピークで西穂を捉える。もう遠くは感じないが時間的にどうか。風は強いが雲ひとつない快晴だし、できれば山頂に立ちたい。 鎖場を巻き、なだらかな中休みといった感じで歩いていく。チャンピオンピークは岩に何か書いてあるなとスルーした。 山頂手前の急登にはステップができており、やっとピッケルが役に立つと躊躇なく取り付く。 登り詰めて時計を見るとちょうど14時。ほっとしてぐるりを見回すと山々がすべて見えている。笠ヶ岳の小屋、黒い槍の穂先、こちらから見ても威風堂々とした奥穂、吊り尾根で繋がる前穂、その上に半月、登ってきた稜線の先に乗鞍。腰を下ろしてそれらを眺め休憩する。 やれやれ、何て余裕のない山行だ。 普通に歩けば充分間に合うとようやく景色を楽しみながら下っていく。西穂山荘の午後の陽だまりでまた休憩して駅へ向かう。白人男性とすれ違い、この時間にどこまでいくのかなと思う。夕暮れが迫り、西穂が橙に染まる。展望台から夕日を眺め、最終のロープウェイに乗り込む。 新穂高温泉駅でさっきの白人男性に話し掛けられる。 どこまで行ったのかと英語で聞かれ西穂高までだとカタコトの英語で答えると、明日自分も西穂高まで行って上高地に下りたいという。装備はあるのかと聞くと滑り止めはあるという。ベリーデンジャラスだからやめておけと答えると、他のルートを紹介してくれないかと言う。どこに泊まっているのか聞くと平湯温泉とのことで、じゃあ上高地はどうかと説明すると喜んでくれて握手をして別れる。 別れたはいいが、日も落ちて寒い中でバスを待たせるのは忍びないので、乗って行きなよと声を掛ける。平湯温泉なら帰り道だし。 道すがら、どこから来たのか聞くとモスクワとのこと。年齢を聞くとちょうど今日が誕生日で、39才になるのだという。それはおめでとうと伝えると、温泉と懐石料理とトレッキングが自分へのプレゼントとのこと。 京都大阪名古屋に行って、長野の後は山梨で富士山に登るという。富士山?と耳を疑い、ベリベリデンジャラスだと伝えると、装備はレンタルするし、危なそうだったら引き返す、最後の誕生日にしないよと笑う。 そうこうしているうちに平湯温泉に着き、彼はお礼にご馳走したがったが、いいよいいよ家に帰るよと断って、旅を楽しんでね、そしてMt.Fujiで死なないでねと伝えると、約束すると答えてまた握手をして別れた。 彼の異国での39才の誕生日が、良い日として思い出されたらいい。 だが後で調べたら、平湯から中の湯へ行くバスは今年の運行を終了していた。ごめん…。