武川岳~焼山~横瀬二子山(名郷~天狗尾根経由)
武甲山・伊豆ヶ岳・小持山
(埼玉, 東京)
2025.11.02(日)
日帰り
【前口上】
例によって一席お付き合い願います。11月の最初の土日は、文化の日も含めて1~3日まで三連休。実は10月31日も休みだったので、平日の31日から冬に入る前に最後の山小屋泊か?と考えてました。
昨年のちょうどこの時期に、山梨の山小屋泊で瑞牆山と金峰山を狙って、小屋の予約までしたのだけど、かなりの降雨が予想されて諦めたので、そのリベンジがしたかったのです(まだYAMAPの登山計画の片隅に残っている)。
今年は10月も後半になったら、気温高めの気候も秋から冬へと変わってきて、高山の初雪と気温もかなり下がってきているという知らせ。おまけに天気が悪そうな予報が出ている。
山小屋泊プランは中止にして、日帰りを考えて、週頭から天気予報を毎日細かくチェック。この週末から連休前半にかけて、低気圧が日本海から東北を縦断して、そのまま北海道の方へ抜けていくようで、東北・北日本は雨予報。それに引きずられて関東周辺も北の方は天気微妙そう。埼玉から以南くらいだったら、天気は晴れが続っくっぽい(結果的にこの予報も見事に微妙に外れた)。
ひとまず、3日を予定日にして、ルートを検討。連休だから人気のコースは人出がありそうだと避けて考えようとすると、なかなかにいいコースがない。そこで以前から気になっていた、奥武蔵の武川岳が候補に。以前にこの辺りの山の活動日記を読んだ時に、どなたかのもので、眺望はあまりないが大変静かとあったのだ。
前から武川岳へのルートをいくつか検討したことあったのだが、ここは王道ルートということで、名郷から天狗尾根経由で前武川岳を経て武川岳に向かい、そこからは稜線を北上して焼山を経て横瀬二子山に至り、最後はそのまま西武池袋線の芦ヶ久保駅というルートにすることにした。
コース定数27で「きつい」だが、距離的にもコースタイム的にも中々良さそうだ。帰りは、横瀬か西武秩父で温泉に入ってこれたらいいんじゃないかな、ということでコースは決定。
【飯能駅から名郷まで】
名郷へ出るべく、西武池袋に乗って飯能駅へ向かっている中づり広告が目に入る。「飯能まつり」11月1日(土)・2日(月)開催。あら、飯能市内は昨日からお祭りじゃない。マンガ(アニメ)のヤマノススメにも出てきた祭りだな。駅前の市の中心部は、山車が出たりするため、交通規制があり、路線バスにも変更があるらしい。
幸い、運行は中止ではなかったが、飯能駅発の名郷行は、通常はJR東飯能駅に遠回りをして寄ってから向かうのだが、今日は東飯能駅の経由はなし、市の中心部のバス停は休止にして、飯能河原近くまでノンストップのよし。東飯能駅に寄らないため、時間調整で2分遅れで飯能駅を8:02に出発したバスは、市の中心部を避けて通常と違うルートを走っていく。別にバスマニアではないけど、こいつはレアだと思うなど。
飯能市立博物館あたりから通常のルートに戻り、バスは名栗川沿いに進んでいく。飯能駅からの乗客の大半は山格好のハイカーで、東飯能を寄らなかったこともあるのか、立ち客が少しいる程度で、いつもより空いている気がする。その乗客の大半も「ノーラ名栗・さわらびの湯」バス停で、ほとんど降りてしまう。皆さん、棒ノ嶺がお目当てらしい。
名郷へと再び走り出したバスの車内を見渡すと、乗客は私も含めて3人きりとなり、期待通りに今日は静かな山行になりそうだ。
【名郷から天狗岩まで】
このバスの終点は名郷なので乗客3人はみな名郷で降りる。名郷にはバスの回転場を兼ねたバス停の他に、駐車場とトイレがある。この辺りの奥秩父はバイクツーリングが盛んで、バス停周辺にはバイクが数台停まり、バイク乗りが小休止をしている。向こうの駐車場にも車が何台か停まっており、いくらか先行しているハイカーもいそうだ。
天気は薄曇り。前々日までは朝から晴れ、前日の晩からは午前は曇りだが午後は晴れと、予報がどんどんと後退してきている。今日は眺望はあまりないコースらしいので、そこまで晴れは期待しないが、晴れずに気温が下がって寒いのは困る。気温この時期からすれば暖かい方で、歩いているうちに体も温まるだろう。
準備が整い次第出発。バス停の先から湯の沢へと向かうバス通りから離れ、渓流沿いの舗装道路を登っていく。この道路は、昨秋に鳥首峠から小持山、大持山、さらに武甲山へと縦走歩きした時に登って行った道だ。あの時はしんどかった…。
少し歩いていくと、「西山荘笑美亭」という宿の案内看板がある分岐がある。武川岳への道標はないが、ここから渓流沿いの道を離れ、分岐からすぐそこにあるお宿の脇の道路を登っていく。途中、林道をショートカットできる部分はあるが、そのまま登っていくと道路脇に傾いた武川岳の道標が間に入り、コンクリで固められた石段が登山口である。
ここからはずっと山道かと思ったが、少しすると上の方にガードレールが目に入り、間もなく再び林道と合流。しかし、すぐにコンクリートの法面に石段があり、そこから再び山道へと入っていく。週半ばに降った雨は、晴れ予報がそれほど当たらなかったため、山の中も山道もそこそこ湿っている。
山道は昇っていくと、まずは天狗尾根へと合流し、尾根伝いに天狗岩を目指して登っていく。途中に標識があり、尾根の東側が石灰石採掘場のため、尾根の西側の山肌に登山道は迂回することになる。迂回登山道の最後は山肌を尾根に向けて直登することになり、そこそこキツイ。登り切ると、採掘場の北端となりフェンス越しに採掘場が少し目に入る。
再び合流した尾根沿いに登っていくと、尾根上に露頭した石灰岩が目に入る。登山道は石灰岩には登らずに西側を巻くように続いており、もうしばらく登り続けると、目の前に岩が目に入って、ここが天狗岩である。
【天狗岩から武川岳まで】
天狗岩からは、尾根上に続く石灰岩を登る男坂と、ここを巻くらしい女坂がある。せっかくなので、男坂に挑戦することにする。男坂は、トラロープや鎖場がある訳ではないが、それなりの岩場で、「ここはどちらに?」という箇所おあり、踏み跡を見極め、ピンクテープを頼りに登っていく。注意して登れば問題はないが、きわどいところもあったりして、悪天候時や雨後の滑りやすいタイミングは使わない方が良さそう。
途中で頭上から熊鈴らしき音が聞こえてきて空耳かと思ったら、岩場を登り切ったところで、男性ペアに同伴の犬が休憩中。登山口からここまでで、初めてのハイカーとのすれ違い。思ったより、人が歩いていそうだ。
ここからはそれほど大変な道はなく、前武川岳への最後のアプローチがきつめ。登り切ると東側から尾根が合流する平らなところにたどり着く。ここが前武川岳。ここで山伏峠から歩いてきたと思われるハイカーの方と遭遇。
ここまでは植林帯が多く、あまり葉が色づいた木々が目に入らなかったが、前武川岳から下っていく途中で、ようやく赤く染まった葉の木に遭遇。これが今回のベスト紅葉かも。あと1か所、まわりは緑なのに1本だけ紅葉した木というのも目に入ったのだが、カメラに収まるような雰囲気ではなく断念。
武川岳へは登り返しがあり、これもまたなかなか。こちらも平らなところに出たかなと思って進むと、交わる道標が目に入り、もう少し進むと武川岳山頂。
ここは山頂付近で東西南北に広がる道が交わる箇所なので、山頂には人が多い(と言っても5人程度だが)。残念ながら、薄曇りなのは変わらず、南方向に伐採されていて遠景が望めるようになっているのだが、曇で遠くは望めず。
武川岳に取り付いたあたりから、稜線上には風が吹くようになり少し肌寒さを覚えていたが、山頂は伐採されている関係で風が吹きっ晒し。休憩していることもあって汗が冷えてくる。。これで日が差していれば少しはマシだったのだろうが、薄曇りなので日差しも期待できない。
そんなこともあってか、頂上にいる他のハイカーも休憩したり食事を摂ると、すぐに次の目的地へと歩き始める人が多い。自分も早めの昼食を摂ってお腹が落ち着くや、寒さもあってすぐに出立。それにこれでも今日の行程の半分にも到達していないのだ。
【蔦岩山、焼山を経て横瀬二子山(雄)へ】
武川岳が今日のコースの最高標高地点なので、後はアップダウンもあるが下っていくだけである…と思っていたのだけど、ここからの下りがかなり大変だった。下って登り返して蔦岩山までは、まあそれなり。
蔦岩山から焼山に向けての下りがまあ大変。ローブ場や岩でそれなりに段差があるところもあったりしつつ、まあ下ること下ること。トレッキングポールを1本使っていても、膝に嫌な感触が出始める。
そのうちに眼下に林道が見えてくるが、ここでは交わらず林道を高巻きしていると、突如、視界が広け、登山道が林道へと急激に下りていくポイントが。ここでは秩父盆地方面が良く見え、近くに武甲山(この辺りにくるまでに武甲山の採掘操業音も聞こえ始める)と、遠くに両神山も見える。
急激に下りてく登山道が林道と交わるところは、トラロープの張り方がよく分からなくて、降り口も今ひとつよく分からないし、逆からしても登り口もよく分からないだろう。登山道は、そのまま林道を斜め向かいの斜面にある木段へと続く。
木段から先へと進むと、今回の最終目的地の二子山が近づいてくる。二子山は、芦ヶ久保駅からの周回コースがわりと時間短めだったので、初心者の頃の冬に登ったことがあり、それ以来である。二子山は雄岳と雌岳からなる双耳峰だが、その折に芦ヶ久保側から雌岳を経て、雄岳の山頂にたどり着いた時に、確かにその先を指し示す道標があった。
今回は、その方向から雄岳へとアプローチしようという訳である。ラストの急な道を登り切ったところで、木々の中に少し開けたところがあって、ここが雄岳の頂上。秩父盆地方面が少し伐採されていて見えるはずなのだが、今日は曇りということであまりよい景色ではない。
【二子山(雌岳)からの蔦岩山へ】
ああ、確かにこんなところだったなあと、思い出しつつ雌岳へと向かう。双耳峰なだけに下って登り返すことになるんだけれど、「あれ?こんなに急に下る道だったっけ?」というくらい下る。全然記憶にないないなあ…。
ところが登り返しているうちに、山道に何となく見覚えが出てくる。途中でピンクテープの方は岩直登しそうなので、これじゃないだろうと巻いている道を歩いるうちに、「この道は確かに歩いたことあるぞ」となってくる。一度山頂を巻いて北側から緩やかに登り返すと。二子山(雌岳)の山頂。雄岳と比べると、木々に囲まれて眺望はない。
そして頂上の雄岳への道標が巻いて避けた方角を指していて、またまた思い出す。「そうだそうだ、ここは雄岳へと道標の通りに下ってったら大変で(今さっき岩直登しそうなので避けたところ)、帰りはさっきの巻き道で戻ったんだ」と記憶が鮮やかになってくる。
「懐かしいなあ」と思いつつ、沢筋コースで芦ヶ久保方面へと下り始める。この時に思い出していなかったことがあったのを、すぐに嫌というほど思い知ることになる。
先ほどの巻き道を戻り、すぐに雄岳へのルートと分岐する。落ち葉が積もり始めていて、分岐が分かり難い。「ここまでくれば下るだけだし、後はまあ気が楽だなあ」と下りていって、目の前にトラロープが巡り張られた、先が見えないくらいの急坂が目の前に広がって、忘れていた記憶が蘇る。
「あっ、ここすんごい下りで、あの時も下りに難儀したんだった…」(なぜだか前回は途中で、登ってきたご高齢のグループとすれ違ったことまで思い出す)。今日はいつもと変わらない歩き方をしていたはずなのに、なぜか膝にき始めたところでの急坂で、こりゃやべえとなる。
膝もあるのでそろりそろりと下りて行くしかない。なかなか思うように進めない。どうにか急坂を下り切って尾根を進んでいくと、目の前にテープが張られて、尾根を外れて下りて行くようにという道標。実はこのテープのほんの少し先に蔦岩山という山があると、事前にYAMAPで分かっていたので、膝もそこそこ痛み始めていたものの、こんな機会でもないとまた行かなそうなので、ピークハントに出かける。本当に数分登り返すと蔦岩山。山頂の木にオレンジ色のテープが巻かれており、マジックで「蔦岩山」と書かれている。
【再び芦ヶ久保駅への下り。まだは思い出ばなし】
蔦岩山山頂から分岐へと戻り、道標通りに下っていく。次の道標と周辺の風景を見て、今度は前回の記憶が鮮やかによみがえる。「ここで盛大に道迷いしたんだよなあ」。道標の矢印は尾根をそのまま下る方向指しているんだけど、実はここはトラップで、矢印と正反対に回れ右をして沢方向へ下るのだ。
前回は矢印を信じて、そのまま尾根を下って行ったら、踏み跡がなくなってくるし、しまいには尾根は岩で行き止まりになっているしで、何度か道標まで戻っては、尾根方向へ下ってみること20分くらい。何度目かに道標の周りを見たら、折れ曲がって下っていく道を見つけて脱力したのだった。
この時に、山登りは思い込みを排し、周りを見回す視野がないといけないんだなあと、とても実感したのだった。今でも時々やらかしますが。
思い出話は休題。今回はその道標からすんなりと沢筋への道を進み、最終的に沢に沿って下っていくのだが、膝にき始めたところで急坂を下り、あげく沢筋のコースで登山道上に石や岩も増えてきて、さらに膝が悲鳴を上げ始める。ここまで来たら、膝をかばいつつ淡々と下るしかない。
当然のようにコースタイムも割り始めて、早く終わんないかなあモードに。途中、地図にもある水場もあって、顔を洗いたかったのだけど、膝を折り曲げるのもしんどそうなので手だけ洗って先を急ぐ。
低山だし歩けば、山道は終わるもの。線路が見え始めたあたりも、そういえば前回もこんなところを歩いてきたいなと思い出しつつ、西武線の下をトンネルでくぐって、登山道はフィニッシュ。目の前は、道の駅芦ヶ久保である。雲は広がった日だったものの、雨は降らなかったので、道の駅は大変賑わっている。
せっかくなので道の駅で買い物とかしたかったのだけど、今日は西武線で一駅先の横瀬駅から武甲温泉で、汗を流そうと思っていたので、電車の時間がもうすぐということもあってトイレだけ済ませて駅に。ホームに着いて間もなく電車が入ってきて、けっこうギリギリでした。
その後は武甲温泉で汗を流して、今回はラビューに乗らずにケチって鈍行で帰京しました。
(そうしたら鈍行は観光客やハイカーで一杯で席が空いておらず、やむなくドア脇に立っていたら、それで体を冷やしたらしく、翌日からものの見事に風邪を引きました!まだ秋気分で登山中もわりと薄着だったのも良くなかったのかも…)