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大菩薩嶺の日帰り定番コースを紹介|山登り初級者におすすめの日本百名山と帰りに寄れる地元温泉
「2,000m級の山なのに初級者でも登れ、都心からもアクセスしやすい日本百名山なんですよ」。国際コンテストなどで数々の受賞歴のあるプロ風景写真家・横田裕市さんがこう語るのが、山梨県東部の日本百名山、大菩薩嶺(2,057m、だいぼさつれい)。
今回は公共交通機関での移動にこだわる横田さんが、都心から日帰りした様子をレポート。セットで楽しみたい地元の温泉や山小屋料理のおすすめのほか、登山道までのバスや駐車場などの情報も紹介してくれました。
目次
山梨県・大菩薩嶺のおすすめポイント
①2,000m級の山に1,600m地点からアクセスできる手軽さ
大菩薩嶺(2,056m、だいぼさつれい)は、2,000m級の山でありながら、約1,600m地点の登山口まで自家用車やバスで行け、首都圏からの日帰り登山者に人気を博している山。王道コースは1周3〜4時間ほどで周回できます。
②老若男女問わず適度に歩き甲斐がある、初心者〜中級者向けの登山道
登山道は歩きやすく整備されており、休憩できる山小屋、トイレも複数あり、初心者にも最適。ところどころで山野草が織りなす色彩を楽しみながら歩く登山道は、森の緑や苔が美しい緑道をはじめ、歩きがいのある岩場もあります。
大菩薩嶺の多彩なコースは、山歩き初心者〜中級者向きで、多くの登山者を魅了。新緑の初夏から紅葉の晩秋まで、その景観の美しさは尽きることなく、何度足を運んでも新たな発見があります。
③登山初心者でも堪能できる、富士山を望む絶景や広大な山々の景色
この山の最大の魅力は、雷岩から大菩薩峠までの広々とした笹原が広がる尾根道と、そこから望む壮大な富士山のパノラマビュー。さらに南アルプスの山並み、大菩薩湖までの眺望が広がり、その美しい風景は訪れる多くの登山者の目を釘付けにします。
上日川峠登山口〜大菩薩峠周回コースが王道
今回は、大菩薩嶺の最も有名な玄関口である「上日川(かみひかわ)峠登山口」から入山しました。筆者自身は上日川峠登山口に向かうにあたり、自動車と公共交通機関、両方の手段を経験していますが、今回は、公共交通機関(電車+バス)を利用したケースを紹介します。
王道の登山コースは、上日川峠を起点に大菩薩峠を周回するコース。ヤマップでのコースタイムは以下の通りとなります。
タイム:3時間45分
距離:7.2km
上り:591m
体力度:2(5段階中)
モデルコース詳細:https://yamap.com/model-courses/209
アクセス:
・公共交通機関は、JR中央本線甲斐大和駅から栄和交通バス「大菩薩上日川峠線」乗車。大菩薩嶺登山口まで約40分。
※平日はバス運行日が限られ、冬季は通行止めで運休しているので注意
・自動車は中央自動車道勝沼ICから上日川峠まで約24km。無料駐車場は400台以上。ハイシーズンの週末は駐車できないことも多い。
※駐車場情報はルート情報の後にまとめて記載しています
バスの始発に合わせ、電車で都心から出発
JR中央本線・甲斐大和駅発から登山口となる上日川峠行きの始発バス(平日・土日祝日の午前8時10分)に間に合うよう、都内の自宅を出発。平日だったので都心部から離れる電車は幸い空いていました。
しかし、大菩薩嶺の最寄り駅、甲斐大和駅に到着すると、週末かと思うほどの大勢の登山客で大にぎわい。
この日は、バス1台では乗客が乗り切れず、急遽2台目にジャンボタクシーが手配されるほどの盛況ぶりでした。
運行する栄和交通に確認したところ、バスの定員はその日の運行状況により車種が異なり、定員は補助席を含め30〜45人。直前の電車で到着した場合、すぐ乗車できない可能性もあるので注意しましょう。
登山口の上日川峠に到着し、登山開始
甲斐大和駅から40分ほどバスに揺られると、登山起点の上日川峠(1,585m)に到着。既に平日でも最寄りの駐車場は満車で、さすがは日本百名山の人気ぶりです。
大菩薩嶺は登山口にあるロッジ長兵衛をはじめ、道中に山小屋が点在しており、前泊や休憩に大変便利。自分で食事の用意をせずとも、山小屋で食事を済ますこともできます。
個人的には、食事を持参し、雷岩からの展望を堪能しながらの山ごはんがおすすめです。
登山口は、赤い屋根がトレードマークの山小屋、ロッジ長兵衛の横にあります。支度を整えて登山開始です。
唐松尾根と富士見平方面の分岐点であり、最初の休憩スポットでもある福ちゃん荘へは、30分ほどで到着します。チャーミングな名前が印象的ですが、食堂の食べ物が非常に充実しており、名前負けしていない山小屋です。
ほうとうや馬刺しは予約が必要ですが、提供が速いモツ煮込みや牛丼も人気です。ここで食事休憩するも良し、そのまま次の目的地である唐松尾根へ進むも良し。
核心部の唐松尾根を登り雷岩へ
唐松尾根を登り、雷岩を目指して標高をぐんぐん上げていきます。本格的な山登りがここからスタートします。
雷岩へと近づくにつれて、登山道を振り返れば遠くに富士山が見えるようになります。景色も樹林帯からひらけてきます。絶景までもう一踏ん張り。
登頂から雷岩で休憩がおすすめ
雷岩と遠方に望む富士山。一気に疲れがとれるひとときです。雷岩で多くの登山者が休息し、この眺めをつまみに食事をします。
日本百名山である大菩薩嶺の山頂部分は針葉樹林の中にあり、残念ながら山頂からの眺望はあまりありません。
山頂を訪れたら雷岩へ戻って岩場に腰を下ろし、富士山を望むパノラマビューを堪能しながらの休憩がおすすめです。
富士山パノラマビューを楽しむ稜線歩き
雷岩から大菩薩峠まで続く道は、右手に富士山をずっと見据えて歩くことができます。この稜線歩きは、特に登山を始めたばかりの方にはとても素晴らしい体験になるでしょう。
賽ノ河原から大菩薩峠へ。賽の河原には、大菩薩峠休憩舎という休憩小屋があります。
大菩薩峠から林道を下り福ちゃん荘へ
大菩薩峠には、山小屋・介山荘があります。筆者がいつか宿泊したい山小屋でもあります。お土産や軽食もあり、休憩場所としても快適です。
ここから下り道となり、整備された林道を歩きます。途中で富士見山荘跡を横目に小川のせせらぎに耳を傾けつつ、福ちゃん荘へ戻ります。
休憩できるベンチも整備されているので、下山で足に疲労がたまっていても適度に休憩ができるのも大菩薩嶺の良さです。
涼しげな小川の前を通り、福ちゃん荘へと戻っていきます。
上日川峠登山口に下山
福ちゃん荘まで来れば、登山口の上日川峠へはすぐ。最後まで怪我をしないよう気を抜かず下山しましょう。
下山後は、登山口のロッジ長兵衛に戻り、食事を楽しんだり、土産を買ったりするのも良いでしょう。
下山後は温泉を楽しみ帰宅
あいにくこの日は、大菩薩嶺に行った登山者の定番「やまと天目山(てんもくさん)温泉」が定休日。肩を落としていたところでバス運転手さんが大和福祉センター「田野の湯」のことを教えてくださり、とても助かりました。大和福祉センターでゆったりと湯につかり、次のバスの時間までひと休み。
駅前で食事を楽しみたいところでしたが、家で妻が待っているのでこの日は食事せず帰路につきました。
公共交通機関を使った大菩薩嶺の登山は時間の制約こそありますが、東京からの日帰り登山コースとして非常に満足度の高いもの。これから大菩薩嶺を登山される方々の参考になれば幸いです。
バスの運行時間や行動に縛られない山行をしたい方は、駐車場の台数も多くあるので、ぜひ自家用車やレンタカーで大菩薩嶺を満喫してほしいと思います。
今回は日帰り登山に非常に魅力的な山として紹介しましたが、筆者自身は次回、山小屋泊でじっくり大菩薩嶺を満喫したいと思っています。
今回の山歩きの詳細:著者の活動日記
健脚者向けの中・上級コースも魅力的
石丸峠を周回する大回りコース
登山口は同じく上日川峠登山口からスタート。大菩薩峠から石丸峠まで歩き大回りするコースです。
タイム:4時間30分
距離:8.0km
上り:742m
体力度:2(5段階中)
モデルコース詳細:https://yamap.com/model-courses/19410
裂石温泉(大菩薩峠登山口)から丸川峠経由の周回ロングコース
裂石温泉側から丸山峠経由で大菩薩嶺を登るコース。JR塩山駅から山梨交通「大菩薩峠登山口行き」バスに乗車。車の場合は丸川峠分岐駐車場を利用します。平均コースタイムは7〜8時間とハイキング上級者向けです。
タイム:7時間
距離:12.2km
上り:1,202m
体力度:3(5段階中)
モデルコース詳細:https://yamap.com/model-courses/17253
※大菩薩嶺から丸川峠の登山道崩落箇所があるので注意(2023年6月時点)
バスでのアクセス情報
栄和交通
上日川峠登山口から登山する際に利用するバス。甲斐大和駅〜上日川峠の片道料金は1,020円(現金のみ、2023年9月時点)。
バスは自由乗降式で路線区間内であれば自由に乗り降り可能。バスを見かけたら手を挙げる合図で乗車、停留所以外の場所でも降りたいと運転手に声をかければ下車できます。冬季は上日川峠まで通行止めとなり運休するので注意。
栄和交通の公式サイト:https://eiwa-kotsu.jp/
山梨交通
大菩薩嶺の西の麓にある裂石温泉側から登山する際に利用するバス。JR塩山駅〜大菩薩峠登山口の片道料金は300円(交通系IC・PASMO利用可、2023年9月時点)。冬季も運行しています。
山梨交通の公式サイト:http://yamanashikotsu.co.jp/route_bus/route_sp_info/daibosatsutoge/
マイカー利用者のための駐車場情報
ロッヂ長兵衛前の第1駐車場、県道沿いの第2駐車場、森林管理道先の第3駐車場がありますが、ハイシーズンはいずれも混雑します。そのため、道路を下った先にある大菩薩湖北岸駐車場が臨時駐車場となります。
峠から登山口へ向かう狭い舗装路を進んだ先にある福ちゃん荘前にも5台分の駐車場があり、宿泊・食事利用者は駐車が可能です。
・上日川峠第1駐車場(ロッヂ長兵衛前) 19台
・上日川峠第2駐車場(県道沿い) 46台
・上日川峠第3駐車場(森林管理道先) 60台
・上日川峠第4駐車場(大菩薩湖北岸駐車場) 200台
*大月ICを降りて国道20号から上日川峠に向かう県道218号線は、上日川ダム手前、すずらん山荘先にあるゲート(一の平林道交点)以降は例年1月中旬〜4月中旬で冬期通行止になるため注意。
・福ちゃん荘前駐車場(山小屋前) 5台
※昼間食堂利用者・夜間宿泊者のみ
・丸川峠分岐駐車場(丸山峠側) 15台
*丸川峠分岐より先は例年12月中旬〜4月中旬で通行止めになるため注意
泊まりも楽しい大菩薩嶺の山小屋情報
ロッヂ長兵衛
小屋泊、キャンプ場利用が可能。食堂あり。上日川峠登山口にある玄関口的な山小屋です。
ロッヂ長兵衛公式サイト:http://www.choubei.info/index.html
福ちゃん荘
小屋泊、キャンプ場利用が可能。食堂あり。上日川峠登山口から30分ほど登った場所にある山小屋。
福ちゃん荘公式サイト:http://www.kcnet.ne.jp/~fukuchan/
介山荘
小屋泊、軽食のほか、美しい朝焼けと夕焼けが堪能できる大菩薩峠にある山小屋。山小屋でのラーメン900円は良心的なお値段。生のカボチャや味付きのしいたけが、そぼくな醤油味のスープと合い、疲れた体にしみわたります。
介山荘公式サイト:http://kaizansou.jp/
丸川荘
裂石温泉から丸川峠へと経由するルートで利用する山小屋。コーヒーと木彫りが有名。
丸川荘の公式サイト:https://www.marukawasou.com/
下山後に寄りたい温泉情報
やまと天目山温泉 やまと ふれあいやすらぎセンター
下山後に入浴したい本命の温泉。泉質はアルカリ性単純温泉。Ph値10.2という日本でも数少ない高アルカリ性。 湯上がりは肌がツルツルになる美人の湯として知られています。
やまと天目山温泉の公式サイト:http://www.daibosatsu-kankou.com/facility/yamato_tenmoku_hotspring.php
大和福祉センター 田野の湯
やまと天目山温泉が定休日で困っていた際に、バス運転手さんに教えていただいた温泉。
※2024年3月で日帰り温泉の営業を終了予定
大菩薩の湯(甲州市交流保養センター)
東京都西部へとつながる大菩薩ライン(国道411号)の裂石温泉側にある温泉です。市外利用者の入浴料が3時間で620円(2023年9月時点)と良心的なのも助かります。
大菩薩の湯の公式サイト:https://daibosatsunoyu.com/
腹ペコの下山後に寄りたい飲食店
お食事あまの
甲斐大和駅前にある老舗中華料理屋。唐揚げが人気です。
雅
同じく甲斐大和駅前にある飲食店。猪のほうとう、馬刺しがおすすめです。
雅の公式サイト:https://r.goope.jp/sr-19-192131s0102/
番屋茶屋
裂石温泉側にある老舗レストラン。ほうとうのほか、よもぎ団子も人気です。駐車場は約10台。
そのほかの詳細情報
YAMAPの大菩薩嶺ページ:活動日記や天気予報、モデルコースなどが掲載されています。
栄和交通による大菩薩嶺観光の情報サイト:アクセス情報や観光情報がわかりやすく説明されています。
風景写真家
横田 裕市
福島県出身 85 年生、東京都在住の写真家。雄大な自然のスケールを伝える大胆かつ 繊細な絵を得意とする。プロとして10年のキャリアを持ち、主に商業向けに国内外の風景を撮影。Appleでの広告採用や国際フォトコンテスト ipa2016 での部門優勝、海外メディア 掲載等、国内外問わず活動の幅を広げている。今秋、TAMRONの新作レンズ広告撮影を担当。全国でSONYのセミナー講師を務める。2019 年ソニーイメージングギャラリー にて初写真展「フィンランド 冬の光」が大成功を収め、全国で巡回展を開催。
YAMAP:https://yamap.com/users/902643
Twitter:https://twitter.com/yokoichi777
HP:https://www.yokoichi.jp/
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