📚海と上海蟹@dance all night

2019.07.25(木) 日帰り

活動データ

タイム

00:02

距離

143m

のぼり

1m

くだり

9m

チェックポイント

DAY 1
合計時間
2
休憩時間
0
距離
143 m
のぼり / くだり
1 / 9 m
3

活動詳細

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人生なんて山登るのと一緒だ。 ワラッて、常に踊ってろ🎶 ーーー 今日は色々あった。 山にこもって下界に下りたら、世界がガラリと変わっていた。 人がみんな消えていた。 その代わり、街には上海蟹🦀が溢れていた。 ある上海蟹は、綺麗に着飾っていた。 ある上海蟹は、ビキニを着て、海岸通り沿いを歩く僕にウィンクをしてきた。 たぶん、上海蟹🦀にウィンクをされた人間は、人類史上、僕が初めてだろう。 僕は鎌倉の小さな山から下山して、鎌倉の海の近くで腰掛けていた。 街は人が上海蟹に代わっていること以外は、いつもと同じ僕の街の鎌倉だ。 言葉も通じる。 街には、様々な音楽だって流れている。 街を行き交う混み具合だって、いつもと同じだ。 ただ、街を行き交う生命体が人ではなく上海蟹なだけ。 それ以外は、全くもって、いつもと同じ夕暮れの街だった。 ヒューマンアウトをよくする、僕には余り違和感を感じない変化だった。 ただ、世界に存在しているのが、人ではなく上海蟹なだけで、あとはナニも変わらない世界なだけだったからだ。 海岸通り沿いにある小さな店で、一応、ニュースペーパーも買ってみた。 相変わらず、テロもおきていたし、 相変わらず、様々な犯罪もおきていたし、 相変わらず、世界の強国と大国は自分達の意見を押し付けあっていた。 ニュースペーパーの片隅には世界の片隅で平和を願う、無力な学者が社説を語っていた。 ほんの少しだけ、世界が良くなったっていうニュースと、イノベーション溢れる学生達が新しいサービスを産んだってニュースが小さく書かれていた。 いつもと何も変わらなそうなニュースペーパーだった。 やっぱり、僕には、なにも変わらない、そしてちょっとだけたぶん変わったんであろう世界だった。 僕は少しクシャクチャになったニュースペーパーを、背中に背負っていたバックパックに適当に突っ込んだ。 その後、僕は、海岸通り沿いから、2ブロック離れた、彼女の待つ家へと足を向けた。 背中越しに鎌倉の街を照らすと幕情とした、揺れる夕焼けが不安定な形で浮かんでいた。 濃いオレンジと薄い黄色に近いオレンジを混ぜ合わせた、夕暮れを背中に背負いながら、僕はいつもと同じ人通り?蟹通り?の少ない道を幾何学模様のように辿り、家へと歩みを進めていった。 しばらくして、家の分厚いドアを開ける。アロマの香りが消えかかった部屋の奥から彼女からの声が聞こえてきた。 "ただいま" "お帰り〜" シンプルな幸せな匂いが、アロマの香りのように漂ってきた。 僕は、いつもと変わらない日常に少しだけ安心した。 けれど、キッチンにいた彼女は、 やはり…上海蟹だった。 僕の、愛する、世界でたった1人の人間だった彼女も、上海蟹になっていた。 それ以外は、彼女は、仕草も、佇まいも、波長も、なにも変わらないのに、彼女は上海蟹になっていた。 僕は跳ね上がりそうになる心を沈め、彼女が用意をしていた、食事を並べた、食卓へと腰掛けた。 僕は、バックパックを整理して、ナニも口には出さずに、 弾けそうになる心臓が時間をかけながら 落ち着いていくのを待ち、 ゆっくりと食卓へと腰掛けた。 この世の中には、時間でしか解決出来ないコトも、少なからず存在する。 食卓で向かい合う、彼女は不思議といつもより、色香が濃く、慈愛に満ちている気がした。 上海蟹なのに。 僕は、なんとなく、彼女のレーゾンデトールを一応は確かめたかった。 僕が、幾ら勝手に山に行こうとも、 僕が、幾ら不自由な時でも支えてくれていた大事な存在だったからかもしれない。 『身勝手って言葉があるでしょう? ワタシはキライ。 ワタシは身自由でいたい』 「僕は良く身勝手と言われるけど…? 新手の別れ話の切り口かい?」 彼女は声を出して笑った。 美しい響きを伴った彼女の笑い声は、space balloon project の気球のように海の上に広がる青い空に吸い込まれていった。 僕はカヤックを枕にして、夏の砂浜に寝っ転がっていた。 彼女は一度、僕が寝てないかをサングラス越しに覗き込んだ。 太陽の陽射しの中でコントラストが効いた陰影ある彼女が近づいてきた。 大きなサングラスで顔の殆どが隠れていたから、唇だけが際立っていた。 それから、すぐにスーっと身体を引き、彼女は一度微笑んでから、また海を見つめ、話し出した。 空には、何羽かのカモメが気持ちよさそうに空に浮かんでいた。 『身勝手と身自由はとても近いけど全然違うの。他の人にはどうかはわからないけど…ワタシには少なからず、あなたは身自由なだけ。身自由が似合う人なだけ。』 僕には、よく意味はわからなかった。 『あなたには、いつも踊ってラレル、 身自由な人でいてほしい』 彼女は付け加えるように、言葉をいくつか繋げてニュアンスを補ってきた。 そして、砂浜に、埋もっていた生暖かいコロナビールを手にして、グロスで輝く膨らんだ柔らかい唇へとボトルを運んでいた。 夏の光をうけ、彼女の唇には、数粒の砂がくっついていた。 それが、また、よりいっそうと彼女の柔らかい唇を印象的にしていた。 彼女が人間だった頃の2人のある夏の、ある海でのささやかな話だ。 そんな会話を、ふと頭の片隅に想い出しながら、僕は静かに彼女の名前を呼んでみた。 彼女は僕の声を耳にして、僕へと顔を向け、振り返った。 "うん?なーに?" そして、いつもと変わらない話し言葉で、話し方で、僕に尋ね返してきた。 僕は黙って、小さく首を振る。 それから、唐突に彼女を誘ってみた。 "踊らないか?" "うん!" 僕らは、食べ掛けのディナーをそのままにして、スローリズムな音楽をかけて踊り始めた。 ワンツー、チックチック、ワンツースリー🎶 ダンスが好きな彼女は、 上海蟹になっても変わらず、 素敵なステップを披露してくれていた。 僕はターンテーブルの脇にあるボリュームを上げた。 久々に感じる、彼女の雰囲気に僕はようやく落ち着きを取り戻していった。 上海蟹であろうと、なんであろうと僕は リサを愛していたし、彼女の優しさは人の時と変わらない優しさに満ちていた。 それに僕は、彼女が上海蟹であることが? 果たして、なんの問題があるのかさえ良くわからなくなっていた。 彼女は彼女で、その本質なコト意外、 ナニに違和感を持てば良いのかさえ、僕にはわからなかった。 本質以外になんの意味があるのかを、無心で踊りながら感じていた。 いつも唐突にインスピレーションってヤツはやってくるのに近い感覚だった。 ダウンライトが照らす久々の居場所。 暖かい温もり。 変わらない笑顔。 前よりかは、若干硬くなった肌触り。 (上海蟹だから) それでも、壁の側面から差し込む間接照明と、優しい光は、僕らを柔らかく照らしてくれていた。 久々に誰かと踊り、久々の下界での夜の闇に浸かっていく🌕の灯りを窓越しに見つめてみた。 意外と、上海蟹的な世界は、僕には美しい街と世界に見えていた。 深夜0時。 ターンテーブルの針がカチャンと音をたて、レコードの音が切り替わった。 静かに隣のターンテーブルへ針が落ちて、 彼女がセットしていた違う曲が流れてきた。 僕はもう一回だけ、 "リサ踊ってくれ" と彼女に低い小さな声で、耳元で囁いた。 上海蟹の耳元がどこにあるかなんて、全くわからないけど、それでも、それらしきトコへ囁いた。 正直言って、世界のニュースなんかどうでもイイ、居場所がそこにはあった。

動画

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