手負いの晴れ男の面目躍如 大崩山・五葉岳・新百姓山-2023-05-03

2023.05.03(水) 日帰り

チェックポイント

DAY 1
合計時間
5 時間 18
休憩時間
1 時間 8
距離
5.2 km
のぼり / くだり
765 / 751 m
23
1 47
1 32
21

活動詳細

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「なぜ大崩は百名山から漏れたのか」の一考察 大型連休中の計画を相棒と2週間ほど前から打ち合わせていた。登る山は、今回で3回目になる大崩山に早くから決定。過去2回の大崩は山小屋に泊まって、湧塚~袖ダキ~坊主尾根の周回ルートをこなしたが、他の山にはない景色と怖さを堪能し「もう2度と…」と思ったが、なぜか1年に1度は登りたくなる不思議な山だ。  ところで、大崩山は深田久弥の日本百名山には入っていない。九州ではくじゅう、祖母山、阿蘇、高千穂峰(霧島)、開聞岳、屋久島の宮之浦岳が百名山に名を連ねているが、大崩が入っていないのはなぜなんだろう?つらつら考えるに、深田は若い頃から山に親しんでいて、出身の福井県を中心に登っていて、作家活動に入って全国の山を歩いて選んだのが、百名山。もちろんその選に漏れた山々もあって、九州では由布岳、市房山、桜島も候補に挙がっていたそうだが、大崩はその候補すら挙がっていない。登れば分かるのだが、ロープと梯子の連続で地元の人のお世話に感謝するしかないのだが、恐らく深田が九州を訪れた頃は一般には登れる状況ではなかったのではないだろうか。深田がもし大崩に登っていれば、百名山の候補にはなっていただろう…という妄想を掻き立てる。大崩はそんな存在なのだろう。   数日前に滑落事故 さて、計画。日程を考慮すると、5,6日で登ることに仮決定。宿は山小屋ではなくて登山口にほど近いキャンプ場のコテージを予約した。さあて、あとは連休前に仕事を片付けようと意気込んでいると、天気予報が怪しくなってきた。連休後半の初日の5月3日以外の予報は雨…これはまずい。大崩は祝子(ほおり)川の渡渉があって増水すれば渡れない可能性もあるし、渡れても濡れていたら難儀だし、雨の中歩くのは厳しい…  どうしようか。キャンプ場はキャンセル可能だが日程自体を見直す必要がある。予報は変るので、ギリギリまで待とうということになり、結論を出すのは5月1日まで待つことにした。  少し良い方向に予報は変ったが、やはり雨の可能性は残った。それならば仕方がない。ずっと保留していたキャンプ場に電話で断りを入れた。晴れの予報は3日のみでこの日に登ることに決定。前泊は無理なのでその日に福岡を出るが、登山口まで4時間以上はかかる。過去2回の周回ルートは早くて8時間弱かかるだろうから、4時半に出ても9時過ぎから登り始めることになる。日は長くなったとはいえ日没ゲームになる可能性が高い。袖ダキ展望場ピストンにするしかない。あの岩峰の景色を見るだけでも価値は十分にあると決定した。休憩も入れて往復5時間の行程で下山は午後2時過ぎ。そこからまた4時間半かけて福岡に帰るのはきつい。しかし、宿がなかなか見つからない。過去2回泊まった山小屋に泊まる選択もあるが、いずれも前泊だったので、最悪のケースは仕方がないが、疲れた体で後泊するのは避けたい。延岡市の低料金のホテルはいずれも満室。諦めかけていたが、ネットで日之影町にキャンプ場があるのを発見、早速サイトを覗くと、コテージがある。ダメ元で電話すると、何と1棟空いていた。料金は1棟で7000円だから1人3500円。バーベキューも炭付きで1000円なので即決。 保留していた祝川キャンプ場に断りの電話を入れる。実は数日前に大崩で滑落事故があって夜通し作業でけが人を引き下ろしたという情報が入ってきた。その時ボランティアで参加していたのが、登山口近くの「美人の湯」の支配人(?)でどうもこの人がキャンプ場の管理人を兼務しているようだ。電話で事情を聞くと、ケガをした人は二人で坊主尾根から登り袖ダキから下りる時に枯れ木に手をついてそのまま滑落したようだ。オッサンたちもそのコースを下りるので十分注意したい。このキャンプ場には今度は必ず泊まらせてもらう。 手負いのオッサン 宿は決まったが、もう一つ心配の種があった。痛風発症だ。4月中旬に今年初の痛風が発症し、親指の付け根が腫れて山を登れない日が続いた。ようやく治って、「禁断の果実」平日山行を久住で初体験。何の故障もなく下山したのだが、その2日後今度は足首が痛み出した。「嘘だろ⁈そんな…」と信じたくなかったが、やはり痛風だった。何か強烈なストレスがあったかなと振り返ると確かにあった。あと5日間で治ってほしいが、だいたい1週間はかかる。痛みはピークを過ぎたが、前日も歩くとやはり痛い。当日朝。やはり痛みはかすかに残っていた。妻から「本当に登るの?」と呆れられ、相棒からは「無理はしない方が」と心配されたが、ロキソニンと足首のサポーターを携帯して行けるところまで行くことにした。 予定通り4時半に出発。天気は予報通り良さそう。足はやはりまだ爆弾を抱えたまま。九州道から横断道に入って高千穂経由で延岡市に入り、祝川沿いを北上する。この道は4年前に初めて登った時に通ったが、次第に細くなって離合が難しくなるのは記憶に残っていた。運転は相棒に任せたが、助手席は細い道のカーブに差し掛かる度に対向車が来ないかカーブミラーを凝視するので、かえって疲れた。 覚悟はしていた。登山口の駐車だ。この日を狙った人たちが恐らくわんさかいるだろう…やはり予想は的中、すでに40台ほどの車が延々と路肩に停まっている。登山口を過ぎても延々と停まっているので、先の橋を渡ったが、途中スペースがあるのを発見していたので、Uターンして停めることができた。 準備が終わったのはすでに9時をかなり過ぎている。恐らくオッサンたちが殿(しんがり)だろう。カウンターを押すと「171」。 天気は最高だが、足首は完全ではない。登りは何とかなりそうだが、下りが怖い。去年の秋。ひどい捻挫をやって大崩山行を断念したリベンジの意味もあるので、何とか登り切りたい。小屋を過ぎて渡渉箇所にやってきた。お年寄りのご婦人2人が川岸に下りていくので訊くと、仲間が夏木山に向かったが自分たちは諦めて川岸で休憩するとのこと。それにしても元気だなあ。 トラブル 心配していた水量はそこまでなく、オッサンが準備していた渡渉用の靴下と相棒が用意していたわらじは出番がなかった。無事に渡って、いよいよ袖ダキの登り道が始まった。オッサンは足をかばっているので、スピードは出ない。相棒の後姿を…?いない。かなり飛ばしているなあと思いながらしばらく歩くと、後ろの方から叫び声が聞こえる。 ⁈相棒は前を歩いているはずだ。後ろから誰が助けを求めているのか?こちらからも大きな声で呼びかける。すると、また大きな声で返ってくる。これはいけない。慌てて元来た道を下る。ここでオッサンが怪我したらアウトなので、慎重に下りながら声を出す。すると、相棒の声だと判明。今度は違う不安が脳裏をよぎる。怪我?でもそんなところはない。もしかしてキジ撃ちしていてマムシに嚙まれた?噛まれた箇所の毒を吸い出さないといけない。そうなるとあいつの〇〇に口を当てないとと妄想が。出合うとケガはないようで、渡渉してルートでない道に曲がった(リボンはあったそうだ)ためオッサンが見失ったことが分かった。この山は登山口まで電波が入らないので連絡方法がない。笑い話で済んだが、後続の登山者がいないので、下手をすれば大事に至る可能性もあった。 待っていた絶景 少し時間をロスしたが、ピストンなのでそこまで切迫感はない。水場の平坦な岩で休憩。ここから急登りが続く。足を気にしながらも、とにかく体を引き揚げる。登りは何とかなりそうだ。そしてやってきた豪雨による崩落地点。写真では見ていたが、実際に見るとかなりの崩落。長いロープが垂れ下がっている。先行者がいたら落石の可能性もあり、ヘルメットは持参した方がいいだろう。しかし、先行者は相棒だけだし、ザック下ろすのも面倒なのでそのままよじ登ることにした。すると、早速小石が落ちてきた。相棒がロープを終えるまで待機。無事に登り終えた。終えてもしばらく巻き道で高度を上げる。最後にいつものロープ二段責め。これが終わるとあの景色が待っている。 何度見ても惚れ惚れする景色が待ってくれていた。下、中、上とつづく湧塚、巨大な小積ダキ…圧巻の光景。3度目だが新鮮で強烈だ。痛む足首を使って登った甲斐があった。岩峰の岩肌にはアケボノツツジが咲き誇っている。下を覗くと、お尻がゾワゾワするのは毎度のことだ。  ここで山飯。食べていると2組ほどが下りを迷ってきたので、教えた。リボンがあっても迷うのがこの山の怖さだ。それにしても天気は最高。この日を選んだピンポイント山行は晴れ男の面目躍如か。 さて、下山開始。サポーターをきつく装着。それでも着地の時には痛みがすこしあるので、恐々と下りる。スピードは出ないが、無事に下りるのが最優先。ようやく渡渉箇所まで下りてきた。ここまでくればほぼ大丈夫。 すると、登る時にすれ違った男性に追いついた。ソロでオッサンたちと同じルートを歩いていた。「動画で見ると、坊主尾根は怖くて」と言う。確かに動画では「話が盛られる」可能性はあるし、個人差があるので記録の再現性もそのまま参考にするかどうかは自己責任だ。オッサンもアルプスのジャンダルムや大 キレット、剱岳のカニの縦ばい、横ばいの動画を何度も観たが、怖い。実際行けば、慎重に足を運べばなんとかなるのだろうけど。かえって情報過多になってしまうと腰が引けてしまう。逆に情報不足もよくないのだが、難易度の高い山はやはり経験者と同行するのがベストだと思う。 無事に下山。すでに時刻は3時近く。これから延岡で買い物して日之影町まで引き返さないといけない。スーパーで肉、野菜、酒、つまみを仕込んで日之影に向かう。6時近くになるので管理棟に連絡すると待ってくれているという。30分ほど短縮できて5時半前に到着。 穴場 キャンプ場は想像以上に整備されていた。穴場だった。焼き肉を食べる。バーベキューは久しぶり。最後の肉を焼いていると雨がぽつり。降り出す前に撤収して部屋で飲んだ。今夏の遠征計画の打ち合わせ。オッサンの希望である槍ヶ岳を入れてもらえるならコースは相棒に任せることで決定。普段の山行の話になった。九州百名山をたまにハントしてきて、残りは九州脊梁、南九州、離島の山々で残りは20座くらいか。オッサンは無理しなくても楽しく登れればいいという意見。「迷ったらくじゅう」で年間40回ほどの山行を怪我無く登れればいい。 それにしてもこのキャンプ場はずい分整備されていて過ごしやすかった。コテージは広々としていて、詰めれば5,6人は泊まれそう。夜半は結構な雨が降っていて、屋根に雨が打つ音が激しかった。 翌朝はやはり雨が残っていたが、上がりそうだ。やはり、前日に登って大正解。これで「道の駅宇目」の鶏の唐揚げが食べられれば、画龍の点睛になる。遠回りだけど、日之影川沿いの遡上するルートを選んだ。途中で釣り人発見。しばらく見物していると、立派なサイズのやまめを釣り上げた。釣り好きの相棒、今回は道具を持ってきていなかったのは、残念。 2時間ほどして道の駅に到着。オープン前に待つ人が結構いた。鶏からを食べた。揚げたてではなかったのが少し残念だったが、おいしいし、安い。ここは本当におススメです。 そのまま一気に福岡に向かった。自宅に着いたのは2時半前。ピンポイントの好天、足首に不安を抱えながらも岩峰の絶景、そして想像以上に良かった宿、3年ぶりの宇目の鳥から…全ての条件をクリアできた。山の神に感謝しかない。 令和5年の山行はこれで16回目、今回はノーピークなので25のまま。

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