活動データ
タイム
04:37
距離
5.1km
のぼり
220m
くだり
221m
活動詳細
すべて見る御座山からはやや遠く、鍬ノ峰では近すぎた北アルプスの山脈をのんびり、じっくり眺めたいと思い、久しぶりに美ヶ原に行ってみた。 はじめは武石峰辺りを中心にちょこっと歩いてみるつもりだったが、好天のもと北アの峰々が白く雪をまとって並ぶのを見、王ヶ頭や王ヶ鼻が近いのを見て、目的地をそちらに変更し、美ヶ原自然保護センター駐車場まで入る。 駐車場からは浅間山や四阿山が見えた。 自然保護センターは、すでに休館のようで閉まっていた。センターの先で車道から左に入る山路があったので、そちらに入る。すぐに前方に電波塔が林立する王ヶ頭が見えた。この路は長くは続かず、すぐにまた車道に降りてしまう。 また少し車道を歩くと、王ヶ頭に向かう左に上がる路が分かれるが、先に王ヶ鼻に行くことにして車道を進む。振り返ると武石峰の左に槍穂高連峰が浮かぶ。 じきに関係車両以外の車を入れないためのゲートが現れ、脇の歩行者用通路から入る。 その先、道路がS字カーブする始まりで右に入る路のような分岐があり、入ってみたが、これは失敗。先のほうで行き止まりになってしまい、戻る羽目に。往復15分程のロスとなった。 再び車道歩きも、何のことはない。10分ほどで王ヶ頭と王ヶ鼻との分岐に着いた。依然どちらも車の通れる道路となっている。王ヶ鼻に向かう。 電波通信施設下でようやく車道と別れ、左手の山道らしい路に入ると、わずかで王ヶ鼻に到着。王ヶ鼻の標高2008mは電波施設のあるほうだが、こちらこそが美ヶ原突端の鼻先の名にふさわしい。 鉄平石とも呼ばれる板状節理の輝石安山岩の露岩の上に数多の石碑や神像が立っている。 美ヶ原の最高点王ヶ頭から西に突き出したここは松本平や安曇野を隔てた北アルプスの大展望台である。乗鞍岳、穂高・槍ヶ岳から白馬岳までずらりと続く山脈は壮観。 また、北アだけでなく、武石峰の右方には頸城北信の山々。乗鞍岳から左には、御嶽山、中央、南アルプスが高峰を連ね、南には蓼科山、八ヶ岳に、遠く富士山も見ることができた。 ここより眺望に秀でた山はまだ数多いとも、これほど容易に来られる場所はあるまいと思う。 この眺望に満足して、王ヶ鼻、王ヶ頭を回ってから武石峰などにも行こうという考えはどこへやら、すっかり腰を落ち着けて、飽かず山々を眺めていた。 次々と入れ替わりやって来て、眺望に歓声を上げ、写真を撮ったりしていた人々がみな去っても、長い時間、山を眺めていた。 と、近くにかなり前から一人妙齢の女性があちこち眺めるでもなく、写真も撮らず、ただ座って下を向いているのに気づいた。 防寒は一応できているが、ザックなどは持たず、靴もスニーカーで、山が好きでという感じでもない。 まさかとは思うが、万一、もしものことがあっては、と思い始めると気になってしまった。 意を決して声をかけ、どちらからとか、よかったら写真撮りましょうかと話しかけたら、屈託ない笑顔で応えてくれたので、これなら大丈夫、取り越し苦労だったかと安堵し、また新たに人がやって来たのをしおに腰を上げた。 王ヶ頭へは先の分岐を過ぎ、しばらく車道を歩いてから右に分かれる細い路に入り、アンテナの林立する王ヶ頭山頂を目指す。 王ヶ頭は美ヶ原の最高所だが、電波塔や王ヶ頭ホテルなどの建造物が山頂を埋めているので、ひとところでは四方を眺め渡すことができない。 移動しながら各方面からの眺めを楽しむ。 電波塔群から王ヶ頭ホテルに向かうと石祠と石像の並ぶ一画があり、鳥居には御嶽神社とあった。王ヶ鼻の石像群もそこから見える木曽御嶽信仰によるものらしいが、御嶽山がこの地方の人々にとって特別な山だったことがわかる。 そもそも美ヶ原という多分に観光的な名称以前の時代には、ここは何と呼ばれていたのだろう。 王ヶ頭ホテル正面のテラスまで回り込み、眺めていたら送迎バスが上がってきて、たくさんの宿泊客が降りてきた。これを見て、王ヶ鼻にいた女性に合点がいった。王ヶ頭ホテルに来る人は山歩きをするようななりではなく、街中で見るような姿の人が少なくないのである。彼女の姿もそうした観点で見れば不思議ではなかったかと納得した。 ホテルの北側からは、王ヶ鼻からは見えなかった浅間、四阿、妙高などの山々を見ることができた。 その先から、自然保護センター側への路が下っていて、そちらに向かう。 北面のあまり陽射しが当たらないこの路には雪が消えずに残っており、滑らないよう注意しなければならない個所もあった。急に寒気が増し、手袋をしていても指先がかじかんだ。 自然保護センター駐車場に着くと、西の空が日没のオレンジ色に輝いた。 間もなく本格的な冬となり、美ヶ原への道路も通行止になる。
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