8月の最終日、伊勢路をこの日に繋ごうと決めた日。 自宅出発時刻の30分前まで、天気と雨雲レーダーをベッドの中で何度も見ては、悩んでいた。伊勢市にかかる雨雲、午後には晴れて暑くなるみたいだが、女鬼峠通過は雨かも…。今日は呼ばれてる?呼ばれてない?でも、太陽は必ずでてくる。一日でも長い日照時間。どうする?…行きたいんでしょ?行こう! そう思ったら早かった、とっさに準備してたザックと、握ったおにぎりを持って、地下鉄に乗り込む。 予定通りの近鉄特急、松阪駅。平日の路線バスで29駅1時間、前回7月の暑さでバテて終えたバス停、栃原駅口へ向かう。 伊勢路を北へ北へと進んできたので、栃原出発は午前9時30分。あの紀北町の相賀駅、12時前着を思うと、早いスタートはありがたい。ほんとうに北へ来たものだ。 この日、ついに熊野古道伊勢路、北の終点、伊勢神宮まで歩ききることができた! 熊野市の鬼ヶ城から北へ、最初は車に乗せてもらって、そして後半は公共交通機関をつかってソロで歩いてきた伊勢路。 あと残すは、伊勢路約170キロのうち、熊野の鬼ヶ城から新宮市の熊野速玉大社までの約22キロ、その浜街道を熊野灘を見ながら歩くだけになった。 この日、終わってみれば気温は30度越えの猛暑、距離にして34キロとなった。 女鬼峠の2キロ以外はすべて日陰のない道路という厳しさ。 覚悟と情熱をもって、この祈りの道を、ひたすら進む。 日傘を終日さして、相棒として私を強烈な日差しから、頭と肩を守ってもらった。7時間、命の屋根だった。 この日傘、女鬼峠の山道では、蜘蛛の巣との格闘で頼りになり、そして最後の五十鈴川駅へ向かう時の雨では、不意の土砂降りに汗冷えから助けてくれて…。 道路歩きは想像以上の放射熱、太陽の照り返しがすごかった。 そのなかで、歴史的な趣ある石標や、静かに時をこえて佇むお地蔵さまに癒される。 頭を垂れてる黄金色の稲穂、青空と白い雲、のどかな田んぼの地平線。生まれ育った越後平野と錯覚するほど、似ている懐かしい風景だった。 女鬼峠の土道は、足に優しく、緑のトンネルの中に入っていくと、迎えてくれるのは、蝉たちの声。 めったに通らないのか、完璧に張られた蜘蛛の巣は、白糸のレース編みのようで、申し訳ない気持ちで破壊させてもらう。 雨あがりで立ちこもる、むせかえるような夏草の匂い。 あぁ、この夏の山の匂いが大好きだ。思い出すのは子供のころからの夏の記憶。家族と、友人と、大切な人と。 伊勢路で感じる山道はここが最後、たまらなく身体がこの匂いに嬉しくなって、酔いそうになる。 街道沿いの、雰囲気有る建物、酒屋、商店、たばこ屋、郵便局。昔から主要路だった面影をわずかに残している。 歩いて、走ってを繰り返しながら、もうここを歩くことはないだろう、と一期一会の景色を時々自分に感じさせる。 たまっていく体の熱を、コンビニという聖地にたどり着くたびに、ドリンクかアイスを買って、クールダウン。 ありがたく急速冷却させてくれる屋内は、本当に救われた。人の身体は、本当に水分で出来ていて、その温度がぐんぐん上昇するかのように思えて、日なたの長時間歩きはある意味、夏の非日常感覚で怖かった。 この日はペットボトル6本(3L)ウィダーゼリーにアイス2本、さらに甘酒も飲んで、強烈に水分を求めた。 伊勢街道を歩いて時折であう神社。 手水舎で清めて冷やさせてもらうお水のありがたさ。滝汗を通り越して洪水の汗と共に歩く。帰りに駅で着替える全身着替え衣類は夏の必須アイテムになった。 宮川の橋をわたり、市街地にはいり、近づいてくる、伊勢神宮外宮・内宮の看板。 最初、外宮の鳥居をくぐって参拝する。 祖母から聞いて子供時代からしっていて、いつかは…とずっとずっと訪れたかった猿田彦神社。 賑わう、おいで横丁の人並みをこえて、ようやくあの夢に見た、伊勢神宮内宮の大鳥居…! あそこを前にしたとき、立ち尽くして、すべての力が抜けた。 ここにとうとう、たどりつくことができた…!と。 万感の思いだった。 遠い遠いこの地、ほんとうにいつかは…と思っていた伊勢神宮に、私は歩いて、ここにいる。 そして正宮にお参りしたときに、まさか目から涙があふれるとは思わなかった。 天国の愛する父を想い、祖母、祖父を感じた。92歳で逝った気丈な祖母と交わした最後の遺言は、わたしと弟に「がんばれよ」だったことを思い出す。 自分がここにいること、ここに立たせてもらえること、天国の父たちがいたから、こんな健康体をいただけて、この脚がある。こんなところまで、歩ける体をもらって。 ご先祖様から繋がってくる生を、謳歌させてもらってる悦び。 可能性を現実に、挑戦させてもらえる時間。 満たされている環境、家族、友人。本当に見えないもので守ってもらえてるから、この現実がある。ひとりでは、何もできない。 感謝の思いしかなかった。 この私ができること、一歩が繋いで感じてきた想い。こんな自分でも、だれかの笑顔をつくる、ささやかな助けになりたい・・・。 そんな思いでいっぱいになった。 伊勢路がつながったという感動以上に、ご先祖さまや神様を感じながら、伊勢神宮での時間を過ごしたこと。 こんなふうな思いがあふれてくるとは、思わなかった。 あんなにたくさんの観光客も、参拝者もいたのに、静謐な空間は私に深く感じさせてくれた。 こころ満たされて歩いていた五十鈴川駅までの道。 そこで急に雨がふり、強くなった。 不意の土砂降りに雨宿りをする通行人。私は持っていた傘で歩き続けていたら、その雨も急に止んだ。 そして、空が明るくなって、東の山の方を見ると、そこにはアーチになった、大きな虹の架け橋が…! 雨あがりの七色の虹!大きい!なんてきれいなの…! 空にスマホを向けて撮影する人々、顔を見合わせて笑顔で虹のことを話している若者たち。 水と光の魔法、こんな神々しい贈り物を、伊勢参りの最後にいただけるなんて…。 ほんと無言の道路の、厳しい暑さとの戦いを終えて、たどりついた伊勢の地で出会えた最後の奇跡のようで…。 情熱を持つことは、生きること。 それをこれからも応援してくれるような虹の架け橋、わたしには素晴らしい贈り物だった。 神さま、ほんとうにありがとう。
今日はこの本で特急時間は読書。眠たいのに眠れないのは今日これから起こる出来事のドキドキのせいかも?
午前八時半。おなじみの松阪駅。平日なので路線バスです。立ち寄るVISONの風景も見慣れてくるから面白い。
栃原駅口。このバス停から伊勢神宮まで、34キロの行程が始まります!今日はランニング靴で。
曇ってる空のうちに、スピードアップ!
街道歩き。人の営みの風景を覗くことが、私は好きな事がわかりました。つい開いている玄関とか、庭先とか見てしまいます(*^^*)
今朝までの雨で、すこし濁流
町に寄って異なる伊勢路ののぼり。これをたどりながら、歩いてきました。 楽しかったなぁ…
すっかり黄金色の田んぼ。夏の終わりの風景かな
ぐんぐん上がる気温、もう日傘ないとぜったい無理
まず、日傘を差して歩いてる人は、伊勢神宮内以外みませんでしたね(笑) そもそも、歩いている人がいませんね(^^;)
鮮やかな色のケイトウ
丸々ふとったカボチャ♪ 今日出会う命は、いっぱい撮影しようと思いました
まんじゅう屋跡
さあ、土の道。ひんやりを期待…!
蜘蛛の巣の連続!それもデカいのばかり!黒の日傘に透かすと、見事な白色の城ですね。 帽子に絡んだ蜘蛛の糸とりも、慣れたもの(^^;)
もともと、冒険も好きなのかもな~♪ 見えないワクワクを感じます。
足元の青緑色の綺麗な苔
花じゃないのに、華やかに広がる葉
蝉の声と、むせかるような夏草の匂い。あぁ、これが好き…!
女鬼峠へ
センニンソウがいっぱい
近くでみると、白くて上品なお花。 今が見ごろらしく、事前に調べていました
可憐なのに、たくましい。 花畑より、こういう一輪の花に惹かれます
大きなお地蔵さまです
夏の暑さにも、冬の雪にも、何年も何年も堪えているお地蔵さま。 じっと動かず、世を、移り変わりを見てるのですよね
右 くまのみち
女鬼峠。 わたしにとって最後の峠ごえです
さぁ、歩くことを楽しみます!
登り口の道標
あの向うかな…めきとうげ
ざく、ざく。 落ち葉を踏みしめる音が好きです
可愛らしいご家族
水飲み場 小さい沢が流れてました
足元の豊かな苔
この苔も、生き生きと。瑞々しさがある分、道はじゅくじゅく。こんな足の感触も、いい!
如意輪観音像
雰囲気が厳かでした 手を合わせてたら、足首がちくっと。 初めてアブに刺されてしまいました(^^;)
心をとりなおして、父の熊鈴をだして、意識を切り替え。展望台へ登ります
新宮まで34里、130キロ。冷房もない時代。真夏でも、真冬でも、厳しい環境と少ない食料で歩いたであろう巡礼の人々。獣や山賊、命がけの道のりだったことでしょう。同じのはきっと、この夏の匂いだけ。
南の熊野方面の山々
たくさんの印象に残ってる伊勢路の風景。石畳のカタカタも懐かしい。
街道にもどりましょう
ちょっとえらい所から降りることになっちゃいました(^^;)
千枚岩の岩盤を切通した道
美しいくらい見事です 当時は、相当な難工事だったことでしょう
女鬼峠 特に広場、というわけではなかったです
荷車がとおった轍が、窪みになってます
数え切れないほどの、人と、物と、想いを運んだことでしょう…
南の方の石畳を思い出すと、道幅も広く、近代を思わせます
マメナシという木がありました
マメナシ全体
マメナシの実
西外城田神社 緑が生い茂る、少しひんやりした神社の空間は、極上の休息地です 手水で冷やさせてもらいました
西外城田神社 元気をもらいました、ありがとうございます
猿田彦ゆかりの地
自販機が神です! 現代のオアシス、ほかなりません(^^;) 酷暑のロードの自販機出没は、砂漠のなかの湧き水と一緒ですね
道標
国束寺観音道より三十丁
この道標の説明書きです
スタンプラリーのスポット。 スマホのQRコードを読み取ります
思えば遠くに来たもんだなぁ…
あぁ、なんていい景色。 ツン…とする百合の香りが薫ってきそうです(*^^*) 優美さに、これまた癒されます 美しいものは、ずっと見ていたいですね
写真と写真の合間は、一歩でも前へ…と地道に走っては、歩いて。 聖地コンビニ…! このガリガリ君マンゴー味が、美味しすぎて美味しすぎて…!
ようやく、奥にみえてきた森が田丸城跡かな ほんとひたすら、ロードです。わかってはいたけど。
田丸のスタンプゲット
場所を事前にチェックしてて、この日は、5つのスタンプをゲット!内宮のスタンプ地の観光案内所はすっかり忘れてて・・・。ここはまたいつかに(^^;)
この辻をまがって、伊勢へ
伊勢神宮…!ようやくこの文字がみえてきた~~(;Д;) 札場跡地
東側のフェンス横の、細い日陰でも選んで歩くほどの、まぶしさと暑さ。 日陰が恋しい…。 日傘がなかったら、きっと予定の三分の一くらいで終わってただろうな…。
しんどさを紛らわせるため、眼の楽しみの景色を探して。 青空とおうち、幸せな家庭がそこにありそうで、なんか絵になります(*^^*)
街道沿いにある、昭和と、令和の建物。この対比が面白かった。
つぎの聖地コンビニ君臨。 イートインはありがたい。身体を急速冷却、ほんと生きかえります! ふたつめのガリガリ君と、おにぎり、ナッツのほか、ウィダーでエネルギー補給。
こんなに美味しいものって、あるの?ってくらい暑さの中でたべるガリガリ君は最高の味!溶けるのと食べるの、どっちが早いかの競争♪(笑)
この風景が、故郷の新潟に似てるんですよね
越後平野を車で走ってるときに見ていた、車窓の風景と…。 めまぐるしく変わる雲の動きを見てるだけでも、疲れがすこし飛んでいきます。
太陽のちからがすごすぎて、ほんと体力がそがれます。けっこうギリギリの精神状態で歩いてた記憶。
そんななか、鳥居が手招きしてくれてるように呼んでくれた神社を見つけて。 おもわず手水の下の石に座り込んでしまいました。このあたり、けっこうきてましたね(^^;) ひんやりした空間に数分すわってたら、元気復活!これまた助けられました。神社は本当にちからをくれます。
伊勢市の川端町の、とある神社。名前はでてこなかったけど、この場所。 ここの神様、ちからを注いでくれて、ありがとうございました。
みや川にきました。 度会橋です
宮川上流を、もっと新緑の時期から、ずっと歩いてきたんですよね・・・。感慨深いです。
「伊勢が待ってる!私を待ってる!」…って、自分を励まして、風が吹いて気持ちいいこの橋の上を走ってました
街道市街地に。外宮まで1キロ。それでも日陰がない…!
炭酸や酸っぱい物以外で、聖地コンビニでこれを! カフェオレの甘みが身に染みたぁ~~(^_<)~☆
この観光案内書内で、外宮のスタンプゲット。ただの観光客でなく、汗だくの私に職員さんびっくりしたろうな~。
伊勢神宮外宮にたどりつきました!
衣食住の神様です
伊勢神宮は職場の観光で来て以来、当時をほとんど覚えてなくて。ひとりでくぐる鳥居、歩く感覚は、初めてきたように思えます。
外宮から、つぎは内宮へ向かいます まだまだ、先は長いです
おおきく迂回するように位置している参宮街道、ほんとこの道路、長かった…。
ときおり石碑
タイミングよく来る列車が嬉しい!
内宮まで2キロか!
あぁ、下り坂、久しぶりーー!体重に身をまかせて、落ちて行ける感覚、この日は、平地が多かったので、こんな道でも幸せなひとときでした。
思い入れのある猿田彦神社。 子供の時から祖母に教えてもらってた神社だったのです。
猿田彦神社 祖母もここに来たかっただろうな…。 代わりに私がきましたよ
ここでも想いがあふれ出てしまいました
ここの御神符にずっと守ってもらってきました
おかげ横丁にきました 郵便局
銀行も馴染んでますね
いつかまた来たら、いろいろ食べよう♪
伊勢うどんって食べたことないから今回食べよう!と思って出発してきたものの、気分的に食欲はわかず。次回かな。もう、このあたりは、先への気持ちが高ぶっています、もう少し…!と。
あぁ、ついに…!
広い伊勢神宮のなかでも、内宮! この景色を待っていたのです…!
ついに…!伊勢神宮内宮つきました!伊勢路、ほんと大阪から遠い場所、ほんとうにここにたどり着く日がやってきました
ありがとう!無事にたどり着かせてくれたすべてのお力に、感謝です!
この木が見つめてきてくれたので、
そばへ寄って、よくみたら、蟻たちのお住まいでした
正宮 自分がここに在ること、それは父、母、ご先祖様のおかげ 遠い遠いこの地にいるこの瞬間を思うと、生あるありがたさで、感極まりました
熊野本宮大社のときとは、また違った想いです
静謐な空間
すべて永遠につづくものはなくて、 川の流れのように、今は、すぐ、過ぎていく でも、今を永遠に覚えておくことはできる
心みたされて、おなかに何か入れたいな、と思って、飛びついたのがこれ。 大好きな甘酒です!
フローズン甘酒なので、シャーベット状。 これまた、これほど美味しい飲み物はあるのか?!ってくらい、極上の旨さでした! 本場の蔵の酒屋さんでした。
五十鈴川駅への帰路。 雨がふってきたけど、やんで、歩道橋の上で見上げたら、このサプライズ…!
青空にかかる、虹の架け橋…! 今日の最後、思いがけない神様からの贈り物に、信じられない気持ちで眺めていました。 この世界か美しく、平和であってほしい、みなが笑顔で過ごせる日常が、穏やかに流れてほしい。そんなハートフルな気持ちに満たされました。
ありがとう、生きてるって素晴らしい なんでもできる気がしてきます
5年前、父が天国へ行った日も娘と空を見上げて見つけた虹。そんなことも思い出して…。 節目のときに、なんか現れて、力をくれる虹。 五十鈴川駅についたときには、あの猛暑とは真逆の涼しい風がふいていて、ずっと虹が背中から見送ってくれていました。
五十鈴川駅、今日のフィニッシュ!私にはとびきりの贈り物でした。 虹と、この万感の思い。 大事な日常生活を、今日で虹色の景色に包みこんで行けそうです!
走って、歩いて、また走って…。自分の汗と息切れの記録の線。 ここに涙は無くて、体力と情熱と、あきらめない気持ちと。そして自分という人間がまた好きになる。
伊勢路。今日で、1番から30番まで繋がりました。残りは30~36まで22キロ。一気に、秋に歩ききります。
未踏は黄色い区間。 いにしえの人は、本当にすごいです。全然近づくことはできないけど、真夏の空の下、同じ空気を吸って、足を使って歩けたことは、幸せな時間でした。 見てくださって、ありがとうございました(*^^*)