町に寄って異なる伊勢路ののぼり。これをたどりながら、歩いてきました。
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【熊野古道伊勢路⑧】万感の伊勢神宮…‼ラストの贈り物は、虹の架け橋の写真

2022.08.31(水) 09:47

町に寄って異なる伊勢路ののぼり。これをたどりながら、歩いてきました。 楽しかったなぁ…

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34.4 km

415 m

【熊野古道伊勢路⑧】万感の伊勢神宮…‼ラストの贈り物は、虹の架け橋

伊勢市 (三重)

2022.08.31(水) 日帰り

8月の最終日、伊勢路をこの日に繋ごうと決めた日。 自宅出発時刻の30分前まで、天気と雨雲レーダーをベッドの中で何度も見ては、悩んでいた。伊勢市にかかる雨雲、午後には晴れて暑くなるみたいだが、女鬼峠通過は雨かも…。今日は呼ばれてる?呼ばれてない?でも、太陽は必ずでてくる。一日でも長い日照時間。どうする?…行きたいんでしょ?行こう! そう思ったら早かった、とっさに準備してたザックと、握ったおにぎりを持って、地下鉄に乗り込む。 予定通りの近鉄特急、松阪駅。平日の路線バスで29駅1時間、前回7月の暑さでバテて終えたバス停、栃原駅口へ向かう。 伊勢路を北へ北へと進んできたので、栃原出発は午前9時30分。あの紀北町の相賀駅、12時前着を思うと、早いスタートはありがたい。ほんとうに北へ来たものだ。 この日、ついに熊野古道伊勢路、北の終点、伊勢神宮まで歩ききることができた! 熊野市の鬼ヶ城から北へ、最初は車に乗せてもらって、そして後半は公共交通機関をつかってソロで歩いてきた伊勢路。 あと残すは、伊勢路約170キロのうち、熊野の鬼ヶ城から新宮市の熊野速玉大社までの約22キロ、その浜街道を熊野灘を見ながら歩くだけになった。 この日、終わってみれば気温は30度越えの猛暑、距離にして34キロとなった。 女鬼峠の2キロ以外はすべて日陰のない道路という厳しさ。 覚悟と情熱をもって、この祈りの道を、ひたすら進む。 日傘を終日さして、相棒として私を強烈な日差しから、頭と肩を守ってもらった。7時間、命の屋根だった。 この日傘、女鬼峠の山道では、蜘蛛の巣との格闘で頼りになり、そして最後の五十鈴川駅へ向かう時の雨では、不意の土砂降りに汗冷えから助けてくれて…。 道路歩きは想像以上の放射熱、太陽の照り返しがすごかった。 そのなかで、歴史的な趣ある石標や、静かに時をこえて佇むお地蔵さまに癒される。 頭を垂れてる黄金色の稲穂、青空と白い雲、のどかな田んぼの地平線。生まれ育った越後平野と錯覚するほど、似ている懐かしい風景だった。 女鬼峠の土道は、足に優しく、緑のトンネルの中に入っていくと、迎えてくれるのは、蝉たちの声。 めったに通らないのか、完璧に張られた蜘蛛の巣は、白糸のレース編みのようで、申し訳ない気持ちで破壊させてもらう。 雨あがりで立ちこもる、むせかえるような夏草の匂い。 あぁ、この夏の山の匂いが大好きだ。思い出すのは子供のころからの夏の記憶。家族と、友人と、大切な人と。 伊勢路で感じる山道はここが最後、たまらなく身体がこの匂いに嬉しくなって、酔いそうになる。 街道沿いの、雰囲気有る建物、酒屋、商店、たばこ屋、郵便局。昔から主要路だった面影をわずかに残している。 歩いて、走ってを繰り返しながら、もうここを歩くことはないだろう、と一期一会の景色を時々自分に感じさせる。 たまっていく体の熱を、コンビニという聖地にたどり着くたびに、ドリンクかアイスを買って、クールダウン。 ありがたく急速冷却させてくれる屋内は、本当に救われた。人の身体は、本当に水分で出来ていて、その温度がぐんぐん上昇するかのように思えて、日なたの長時間歩きはある意味、夏の非日常感覚で怖かった。 この日はペットボトル6本(3L)ウィダーゼリーにアイス2本、さらに甘酒も飲んで、強烈に水分を求めた。 伊勢街道を歩いて時折であう神社。 手水舎で清めて冷やさせてもらうお水のありがたさ。滝汗を通り越して洪水の汗と共に歩く。帰りに駅で着替える全身着替え衣類は夏の必須アイテムになった。 宮川の橋をわたり、市街地にはいり、近づいてくる、伊勢神宮外宮・内宮の看板。 最初、外宮の鳥居をくぐって参拝する。 祖母から聞いて子供時代からしっていて、いつかは…とずっとずっと訪れたかった猿田彦神社。 賑わう、おいで横丁の人並みをこえて、ようやくあの夢に見た、伊勢神宮内宮の大鳥居…! あそこを前にしたとき、立ち尽くして、すべての力が抜けた。 ここにとうとう、たどりつくことができた…!と。 万感の思いだった。 遠い遠いこの地、ほんとうにいつかは…と思っていた伊勢神宮に、私は歩いて、ここにいる。 そして正宮にお参りしたときに、まさか目から涙があふれるとは思わなかった。 天国の愛する父を想い、祖母、祖父を感じた。92歳で逝った気丈な祖母と交わした最後の遺言は、わたしと弟に「がんばれよ」だったことを思い出す。 自分がここにいること、ここに立たせてもらえること、天国の父たちがいたから、こんな健康体をいただけて、この脚がある。こんなところまで、歩ける体をもらって。 ご先祖様から繋がってくる生を、謳歌させてもらってる悦び。 可能性を現実に、挑戦させてもらえる時間。 満たされている環境、家族、友人。本当に見えないもので守ってもらえてるから、この現実がある。ひとりでは、何もできない。 感謝の思いしかなかった。 この私ができること、一歩が繋いで感じてきた想い。こんな自分でも、だれかの笑顔をつくる、ささやかな助けになりたい・・・。 そんな思いでいっぱいになった。 伊勢路がつながったという感動以上に、ご先祖さまや神様を感じながら、伊勢神宮での時間を過ごしたこと。 こんなふうな思いがあふれてくるとは、思わなかった。 あんなにたくさんの観光客も、参拝者もいたのに、静謐な空間は私に深く感じさせてくれた。 こころ満たされて歩いていた五十鈴川駅までの道。 そこで急に雨がふり、強くなった。 不意の土砂降りに雨宿りをする通行人。私は持っていた傘で歩き続けていたら、その雨も急に止んだ。 そして、空が明るくなって、東の山の方を見ると、そこにはアーチになった、大きな虹の架け橋が…! 雨あがりの七色の虹!大きい!なんてきれいなの…! 空にスマホを向けて撮影する人々、顔を見合わせて笑顔で虹のことを話している若者たち。 水と光の魔法、こんな神々しい贈り物を、伊勢参りの最後にいただけるなんて…。 ほんと無言の道路の、厳しい暑さとの戦いを終えて、たどりついた伊勢の地で出会えた最後の奇跡のようで…。 情熱を持つことは、生きること。 それをこれからも応援してくれるような虹の架け橋、わたしには素晴らしい贈り物だった。 神さま、ほんとうにありがとう。