【緑海を穿つ鉄路、天球を仰ぎて】高城山
雲早山を後にし、高城山を目指す。 登山口からしばらく歩くと、空を見張る白き塔が姿を現した。山奥には少々似つかわしくないほど大きなその姿も、青空を背にするとどこか静かで威厳がある。その足元には一本の軌道が空へ向かって真っすぐ伸び、まるで天へ昇る梯子のようであった。思わず乗ってみたい衝動に駆られるが、それは塔を見守る者だけに許された道らしい。 白き塔を過ぎると、景色はまた新たな顔を見せる。 そこには、誰かが山頂をそっと撫でて丸く整えたような、穏やかな丘が広がっていた。風は草を揺らし、雲はゆるやかに影を落とす。遠く幾重にも重なる峰々の向こうには、剣山が小さくその姿を浮かべていた。 山頂に立つというより、大きな空の中へ身を置いているような心地である。 ただ風の吹くままに草が揺れ、その先で雲が流れてゆく。その静かな移ろいを眺めているだけで、十分であった。 名残を惜しみながら山を下りる。 振り返れば、丘の上では草が風に揺れ、白き塔は変わらぬ姿で空を見上げていた。






