霧訪山
天気が微妙な日。どこか気軽に登れそうな山はないかと考えていると、職場のスタッフが教えてくれた霧訪山のことを思い出した。 新しい職場で慣れない毎日を送り、祖母との突然の別れも重なって、心はどこか落ち着かないまま。幸い休みを頂いて祖母の安らかな顔を見ることができたのは唯一の救いだった。 前日の夜まで登ろうか迷っていたけど、このまま家にいても考え込んでしまうだけだと思い、重い腰を上げて現地へ向かった。 家から30分ほどで登山口に到着。 今回は洞ヶ峰・大芝山・たきあらしの峰・霧訪山をぐるっと周回するルートを歩く。 静かな登山道には誰もおらず、自分の足音だけが響く。何も考えないように、一歩一歩足を運びながら、それぞれのピークを越えて霧訪山の山頂へたどり着いた。 本来なら八ヶ岳や北・中央・南アルプスまで見渡せるそうだけど、この日は山々に雲がかかり、その姿を見ることはできなかった。 山頂には一人の登山者がいて、気さくに話しかけてくださった。 初めての登山でこの山を選んだこと、塩尻市や松本市の歴史、この土地のことなど、いろいろな話を聞かせてもらう。自分も長野へ移住してきたことを話すと会話が弾み、気づけば30分近く話し込んでいた。 一期一会の出会いだったけれど、とても穏やかで優しい時間だった。 名残惜しくお別れをしてそのまま下山する。 登り始めた時は心の中に重たいものを抱えていたはずなのに、下山する頃には不思議と気持ちが軽くなっていた。 山を歩くことも好きだけど、こうして人との何気ない出会いや会話に救われることもある。 改めて人と話すことの大切さを感じた一日だった。 そして登山は景色を楽しむだけではなく、自分の心をそっと受け止め、また前を向かせてくれる場所でもあるみたいだ。





