09:35
21.5 km
1670 m
鶺鴒鳴 笛貫の滝と早池峰山(西尾根)
早池峰山・薬師岳・鶏頭山 (岩手)
2024.09.14(土) 日帰り
おかしなはがきが、ある土曜日の夕がた、一郎のうちにきました。 かねた一郎さま 九月十九日 あなたは、ごきげんよろしいほで、けっこです。 あした、めんどなさいばんしますから、おいでんなさい。 とびどぐもたないでくなさい。 山ねこ 拝 宮沢賢治作「どんぐりと山猫」より 宮沢賢治の作品は自分には少し、いや大変難しい。でも忘れた頃にまた読みたくなる賢治作品。 そしてこの童話に登場する“笛ふきの滝”は一度は見ておきたい モデルとなったのは笛貫の滝だそうで、一説によると稗貫郡(現花巻市)の語源となったとも言われているようです。 昭和六年刊行の「山に憩ふ・河田楨著」北上山地(上) 第三日早池峯山を越えて門馬までの項で “郡名の因をなす稗貫川といふは元来この笛貫ノ瀧から出たもので、岳川の古名は笛貫川だと里人は語りました。”と書かれています。 岳の早池峰神社から河原の坊までのむかし道では二里の間を“茅野十里”“木立三十里”と呼んだそうです。実際にはそんなに距離がある訳でもなく茅野一五丁、木立四十五丁ぐらいだとも書かれていました。 現在では約6kmほどのアスファルト道にしかすぎませんがね。 岳の駐車場から小田越までは約8.6km、昔風で言ったら二里七丁ほどといったところでしょうか。 朝4:50ごろ岳の駐車場を出発しました。天気は雨上がりの曇り空。夜明け前の薄暗い中、秋の虫が鳴く道を歩き始めました。岳の早池峰神社鳥居を横目に宿坊を抜けて、昔で言う「茅野十里」の木々に囲まれた車道を進みました。時々シカの鳴き声と逃げる音がします。 笠詰橋を渡ればお不動様の祠があり、挨拶して進むとその先が平となり、杉の人工林にシダレカツラの林となりました。岳から約一五丁、おそらくここが「茅野」だったと思われます。 そして昔路を偲びながら「木立三十里」へと入りました。 「岳からの道は細く二人並んで歩けない、うっそうたるブナの林…」だったそうで、この車道(県道)は昭和45年(1970年)に農免林道小田越線として完成したものだそうです。厳密にいえば、昭和26年、砂防ダム建設のためブナを切り道路をつけたのがその後の林道建設や伐採に拍車をかけたのでしょう。 魚止め滝(看板)、清廉の滝を過し、途中北側の中岳から鶏頭山までの西尾根を眺めたり鳴想の滝を見ながら歩くこと約4.5km、国土地理院地図では笛貫の滝への下降点です。 ただ、立て看板も無く (あれ?前に通った時はあったよな…) 少し不思議に思いましたが、砂防ダムの方への踏み跡をたどってみました。結局は違うらしく戻って地図の破線をたどってみました。破線といっても踏み跡すらない雨上がりの滑りやすい斜面を下って岳川へ下りました。 ただ、静かに流れているだけの岳川を見に行ったようなもんで、やはりおかしい。木をしがみ付きながら斜面を登り車道へ戻りました。 少し進んで行くと“本物”の「笛貫の滝」の立て看板です。 踏み跡もしっかりあります。5分ほどで岳川の渓へと下り「笛貫の滝」へとたどり着いたのでした。 本流の岳川より水量が豊富な滝で、この上はどうなっているんだろうとか、笛の音が聞こえたのではなく笛のような穴がいっぱいあった滝だったのではなかろうか、などと空想にふけったりしました。 「笛ふきの滝」を間近で見て音を聴く事が出来たのは嬉しいことです。 思わず「おいおい、笛ふき、やまねこがここを通らなかったかい。」と声をかけたくもなりましたが、やめておきました。 県道25号線へ戻り、うすゆき山荘をすぎて標高点926付近で異様に獣臭がしました。 (近いな) と思い辺りを見渡しましたが、もしかして上かと見上げたブナにはクマ棚があり、鬱蒼とした枝をの先を探していると突然軽自動車が現れ不思議そうにこちらをみて走りさりました。 後から知ったことですが、河原の坊にいた監視員かガイドさん達だったみたいでした。前回のこともあるので深追いはしないことにして歩き始めると、いよいよ「木立三十里」をも尽きて河原の坊です。 黎明に読経の声が聞こえるという早池峰七不思議のある場所で、賢治さんも不思議な体験を(山脚の黎明)に記しています。 そしてビジターセンターの椅子に腰かけて朝食をとっていると先ほどの軽自動車(ガイドさん達)の方が来て少し話しをしました。 やはりクマは普通に居るみたいですね。 「山の晨明に関する童話風の構想」の詩碑をすぎて、さらに登って行くと一頭の鹿が突然目の前に現れました。近づいていくとゆっくり走り去っていきます。亜高山帯のダケカンバやコメツガとなり、木々の樹高も低くなって来ると峠が見えてきました。岳駐車場から約9.5km(寄り道あり)2時間45分の道のり、小田越峠です。 小田越(標高1256メートル)は立派な峠路です。 この小田越を境に東に降った雨は薬師川となり、やがて閉伊川となって太平洋へと注ぎ込み西へ降った雨は岳川(稗貫川)となり、北上川の大きな流れとなり同じく太平洋へと長旅をします。いわゆる中分水嶺といわれる峠です。 遠野馬留から横通りの古道が交わるこの峠は、ヒカリゴケを見ながら薬師岳へ登り、又一の滝へも下りられます。かつては大鳥居があったそうですが今では面影すらありません。でも必ず一礼してからお山に入っていきます。願わくば鳥居は建ててもらいたい、あった方が良いと思います。 一礼して登山口をくぐり北へと進路を変えます。コメツガとオオシラビソのなかの木道を進んで行きますが、やがて木道もなくなりいよいよ登りとなります。そして森林限界を越えれば目の前に岩の山が立ちはだかりました。足元には蛇紋岩と呼ばれる滑りやすい岩場が現れますが、辺りは高山植物の宝庫となります。今回は、ナンブトウウチソウやナンブトラノオなどの固有種が咲いていました。 四合目辺りからガスに覆われ、五合目御金蔵岩で少し休憩。すでに何人か下りてきます。 鉄梯子を登り九合目剣ヶ峰分岐をすぎれば、“田植場”や“賽の河原”と呼ばれるところです。ここには貞任伝説があり、「貞任、徒然のあまりこのところへ出て、天気のよい日は田植のまねをしたり、賽の河原で石を積んで遊んでいたところだそうです」(山に憩ふより)。何と、追ってに追われた貞任様がここで…。まぁ、深くは追求しないことにしておきます。 門馬との分岐をすぎれば、ガスの中に新しくなった黄色い避難小屋が浮かび上がってきました。 本宮と若宮が鎮座まします山頂は一等三角点があり、辺りには安倍穴もあるそうですが、今だ発見に在らず。 今年初の早池峰山山頂はガスの中。山頂で参拝してからは、涸れることも溢れ出ることもないと云われる「開慶水」を訪ねました。いつの年か涸れたのを見たことがありますが、その時は誰かが水面に顔を映したせいなのでしょう。 またこの泉が「早池峰」の語源になったとも言われています。 ガスに覆われた山頂には数名が休憩していましたので止まらずに昨年ぶりの中岳、鶏頭山への西尾根へと向かいました。 https://yamap.com/activities/24537755 ガッスガスの西尾根。まさかの「あきらケルン」を見落とすと言う裏技をこなして中岳との鞍部に下りました。コメツガとシラビソの矮生樹の中、ここからが泥濘との格闘です。何度か中岳かなと思ってしまう岩のピークに這い出ますが、また泥濘の森へと潜り、それを何回か繰り返しやっと中岳登頂でした。 鶏頭山手前の水場分岐までは岩場の連続、それをすぎればコメツガとシラビソの中、緩いアップダウンを繰り返し進みました。今回は水場は立ち寄らずにガスの1415ピークに立ちました。ここも天気が良ければ早池峰や薬師岳も近くに眺められるの良いビューポイントなのですが…。 鶏頭山までは笹原をトラバース。山頂手前では声が聞こえてきました。皆さん休憩していましたのでそのままスルーして前鶏頭です。今朝は岳から見上げられた前鶏頭も今はガスの中、お地蔵様に手を合わせて下山しました。 岩場をすぎ亜高山帯へ入り、入ったかと思うとすぐにブナなどの山地帯となります。 鶏頭山避難小屋で昼休憩をとり、ミズナラの森を下りました。なかなかの勾配です。気がつくとガスは消えてカラマツの人工林となり畳石が現れます。人工林から外れてまたミズナラの森となり岳の登山口へ下りました。 笛貫の滝では迷わされましたが、天候もガス空以外は本降りの雨にも当たらずに無事に下山。終わり良ければ全て良し。 今度は めんどなさいばん をしたと思われる薬師岳の方へ行ってみましょう。 下山後 太陽鉱油矢巾SS 15:40〜18:05洗車&シャワー 紫波町 18:20〜コインランドリー からっとナックス 洗濯機300円×2台 洗剤ソフター自動 乾燥機10分100円×30分