【残雪期VR】剱岳北方稜線(小窓より)
剱岳
(富山)
2026年05月17日(日)
日帰り
◆山行コンセプト
昨年は激しい藪漕ぎに時間を取られ、届かなかった北方稜線からの剱岳本峰(https://yamap.com/activities/40592538)
今年はその続きを歩き、北方稜線から残雪の剱岳を眺めたい。
◆プロローグ
本来はもう少し早い時期に入る予定だったが、富山県登山届条例に基づく届出の提出を失念していたため、規制解除後の入山となった。
最後まで悩んだルートは二つ。
① 大窓〜剱岳〜早月尾根
② 小窓〜剱岳〜早月尾根
昨年歩いた赤谷山〜大窓から、そのまま剱へ繋げたい気持ちは強かった。
しかし、白萩川側下部雪渓の状態が思わしくなく、不確定要素も大きい。
最終的には、確実に剱岳本峰を踏める②を選択した。
◻︎馬場島〜白萩川遡上
今日は新月、星が降る日。
満天の星空と天の川の下、1時50分、馬場島を発つ。
この時期としては高温予報。水分は多めに持った。ロープ類も加わり、日帰り装備としてはなかなかの重量になった。
白萩川沿いの林道を進み、仙人谷の入口へ。
取水口を高巻くが、早速やらかしてしまう。
記憶が曖昧なまま、一つ手前で高巻いてしまったようだ。
ピンクテープがあったので、おそらく赤谷尾根の取り付きだったのだろう。
ルート復帰を試みるも、地形はかなり際どい。
無理はせず、来た道を戻ることにした。
ここで約40分のロス。
従来の高巻きルートへ復帰し、白萩川へ下降。
雪解けの激流がヘッドライトに照らされるが、雪渓は全く見えない。
右岸を遡上し、スノーブリッジが現れた地点で左岸へ渡った。
しかし、この判断も良くなかった。
雪渓は再び途切れ、際どい左岸を進む。滑ると深い本流へ落ちる。
そして完全に行き詰まった。
本流は激流で渡渉不能。
仕方なく、渡ったスノーブリッジまで引き返す。
ここでもさらに1時間以上を失った。
右岸へ戻り、藪を漕ぎながら大きく高巻いて高度を上げていく。
◻︎西仙人谷-小窓
1,200m付近で、ようやく雪渓が繋がった。
辺りはすっかり明るくなっている。
正面には、大窓へと続く中仙人谷。
谷の上部は岩壁崩落の影響だろうか、雪面が茶色く染まっていた。
西仙人谷への入口は、中仙人谷左岸側の狭い切れ込みの中にある。
入口こそ狭いが、一歩足を踏み入れると、そこには別世界が広がっていた。
まるで太古の昔へ遡ったような感覚になる。
切り立った両岩壁。
雪解けによって現れた幾筋もの滝。
時折発生する落石の音が、谷に不気味に反響する。
すぐ近くを、風を切る音とともに石が落ちていった。
急傾斜と緩傾斜を繰り返しながら、高度を上げていく。
やがて小窓へ到着した。
◻︎小窓-小窓ノ王・発射台-三ノ窓
視界が一気に開け、小窓へ到着する。
目の前には後立の大展望。
右手には、これから向かう小窓ノ王の岩峰が重厚に佇んでいた。
稜線上には強い日差しが降り注ぎ、雪の緩みも気になる。
長居はせず、休憩もそこそこに先を急いだ。
まずは小窓ノ王の肩を目指す。
積雪期は尾根沿いを進むのがセオリーのようだが、この日は雪質が想像以上に良かった。
状況を見ながら、一部トラバースを交えて最短ラインを取る。
途中、ハイマツ帯を越える箇所もあった。
アックスは気持ちよく決まる。
だが、一度滑落すれば、そのまま小窓雪渓へ吸い込まれるだろう。
尾根を忠実に行くか、トラバースを交えるか。
雪の状態を見ながら判断する必要があると感じた。
肩へ上がると、目の前に池ノ谷ガリーと北方稜線の全貌が現れる。
池ノ谷ガリーは「本当にあんなところ登れるのか」と思うほどの急傾斜に見える。
目の錯覚か?
思わずそう感じるほどの迫力だった。
スケールの大きさ。
穂高では見られない荒々しい景観に思わず声が漏れた。
三ノ窓へは、“発射台”と呼ばれるガレたバンドを下降する。
下を覗き込んでも底が見えない。
アックスを確実に効かせながら、慎重にクライムダウン。
雪面の汚れが、岩壁から絶えず落石があることを物語っていた。
一刻も早く通過したい区間だ。
発射台を下り切り、最後にトラバース。
三ノ窓へ到着した。
◻︎池ノ谷ガリー
残雪がたっぷり残る標高差約250mのガリーを延々と登っていく。
雪の緩みは予想していたほど無い。今日は予想以上に気温が上がっていないみたいだ。
途中何か所かある大岩で休憩しつつ、池ノ谷乗越に到着。
◻︎本峰/剱岳へ
長次郎ノ頭までは、基本的に尾根伝いを進む。
所々に雪庇は張り出しているものの、大きな問題はない。
緩やかなアップダウンをいくつか越え、長次郎の頭へ到着。
長次郎のコルへの下降は、リッジをそのまま進んで懸垂下降するのも良さそうだった。
我々は脇からクライムダウンし、トラバースを交えて下降した。
このあたりも雪質次第だろう。
コルからは、最後の雪壁登り。
「最後にこれは嫌だな……」
そんな文句をこぼしながら登る。
だが、これを越えれば、ようやくビクトリーロードだ。
ほどなくして山頂へ到着。
頂上の祠は雪に埋まり、GPSは3,005mを示していた。
この時期だけ現れる、“3,000m峰”の剱岳。
気温は5℃。
想定していたほど気温は上がらず、雪が緩み過ぎなかったのは助かった。
そして山頂の祠へ移動する。
半年前から、剱で眠る姐さんを手を合わせに来た。
半年前に手向けた花束は、厳冬期の風雪に耐え、融雪とともに、ちょうど雪面へ姿を現していた。
何という奇跡だろう。
あの日の昼から、既読が付かなくなったLINE。
剱の頂に立つと、あの日のことを鮮明に思い出す。
どうか安らかに。
また会いに来ます。
◻︎早月尾根
どこから湧いてきたのかというほどの雲海へ向かって、早月尾根を下る。
11月末降雪直後の荒々しい早月尾根の記憶がまだ新しい。
そのため、早月小屋までは気が抜けなかった。
所々で夏道を交えながら下降する。
初冬のような厳しさこそないが、雪は緩み始めており、むしろ神経を使う。
正直、北方稜線より難しいのでは……とすら感じた(あくまで主観です)。
それにしても暑い。
富山側は風が抜けにくいのだろうか。
汗だくになりながら、ようやく早月小屋へ到着した。
早月小屋から◯◯m付近までは雪が繋がっており、ペースを上げることができた。
しかし、この時期の融雪スピードは速い。
たった1日でも、状況は大きく変わるだろう。
大きなクラックもあり、最後まで気は抜けなかった。
◯◯m付近からは完全に夏道へ変わる。
サンカヨウ、カタクリ、ショウジョウバカマ、イワカガミ、イワウチワ。
花々の咲く登山道を下っていく。
17時50分、「試練と憧れ」の石碑へ到着。
長い一日が終わった。
◆エピローグ
穂高とはまた一味違った景色が最高だった。
風もほとんどなく、気温が上がりすぎず、雪の緩みも最小限だった。良き日に登れたと思う。
“剱岳”というだけで構えてしまうが、
雪のついた北方稜線に限っては、岩パートはなく、急傾斜のトラバースとクライミングの記憶しかなく、難しいと感じる箇所はない。早月尾根の方が気を使うこれはあくまで私の主観であるので、鵜呑みにはしないで欲しい。
これにて今年の雪山納めにしようと思う。
今シーズンを振り返ると、全てバリエーションルートだった。最強でかっこいい相方のおかげで1人では成し得れなかった数々の挑戦を実現できた。いつもありがとう。
無積雪シーズン、予定は全く決めていないが、見たい景色が見つかったらまた山に行こう思う。
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◆気象状況
【予報(剱岳)】
風速:3〜5m/s
気温:3℃ / 11℃
【当日の状況】
満点の星空の下スタート。
終日天気は良かった。気温の上昇も思ったほどなく、下山の早月尾根の一部以外は快適であった。
【観測値】
馬場島 :10℃ ☀️
小窓 :5℃ ☀️
剱岳/本峰 :5℃ ☀️
◆飲料🚰
持参:3,000ml
・Amino SUPLI+ 500ml
・コーラ 500ml
・アクエリアス 1,000ml
・ジャスミン茶 1,000ml
消費:2,500ml
残り:500ml
◆風呂♨️
アルプスの湯(kamiichimachi-zaidan.jp)
富山県中新川郡上市町湯上野1176
◆下山飯🍚
丸亀製麺富山
富山県富山市今泉西部町3−10
◆メモ📝
・白萩川の遡上は基本右岸側を進むのが無難。