刃物ヶ崎山(檜倉~柄沢周回)
朝日岳
(群馬, 新潟)
2024.03.03(日)
日帰り
【前段】
奥利根の白い峯峰の中に一つ重厚な刃のように黒々とした頂があり、刃物ヶ崎山と呼ばれ、マイナー準名山となっている。
知り合いが上越国境を歩いた際に、刃物ヶ崎山に行く登山者とすれ違ったという話をたまたま聞いた。刃物ヶ崎山の存在を半年前に知り、当初は布引尾根と絡めて泊まり山行を計画していた。新潟の清水から入れば距離的には日帰りできそうだなあと思いつつ、日帰りのレポがなく、どうしたものかなあと頭を悩ませていた。刃物ヶ崎山のレポはほとんどなく、「刃物ヶ崎山 日帰り」でグーグル検索をすると、檜倉山西尾根利用の詳細な泊まりレポが出てきた。距離が22.3km、獲得標高2,138mと確かに日帰りができそう。これだ!と思い、計画を練る。とても詳細なレポで本当に参考になった(URL: 上越国境 檜倉山(1744.3m) 刃物ヶ崎山(1607.1m) 2013年4月28~29日 (gekiyabu.sakura.ne.jp))。
刃物ヶ崎山ルート
・八木沢ダム~南東尾根~刃物ヶ崎山
※最短ルートなものの、八木沢ダムまで車道が開通するのは4月下旬。その頃には下部は籔が出て、山頂直下東側斜面は、崖マークの連続。岩登りの要素が強い。
・上越国境稜線~刃物ヶ崎山ピストン
※今回採用。
【行程】
【日の出:6:20,日の入り:17:30】
(予定)行動時間13時間40分(22.3km+2,138m,-2,135m)
清水集落~檜倉山(西尾根)~刃物ヶ崎~柄沢山~清水集落(柄沢直下尾根+涸沢利用)
(予定2)行動時間13時間30(23.7km+2,100m,-2,100m)
清水集落~檜倉山(西尾根)~刃物ヶ崎~檜倉山(西尾根)~清水集落
※天候悪化が早まる場合は、檜倉山西尾根で下山し、自分たちのトレースをたどる+早めに標高を落として林道を歩く。
(実際)行動時間14時間30分(22.3km+2,138m,-2,135m)
予定1通りに実施。
【すれ違った登山者】
0人
【駐車】
清水集落最終除雪地点
【天気】
(予報)
~9時:雲0%
9:00-12:00:下・中層60%
13:00-16:00: 下・中層80%(降水量0.1-0.9mm)
17:00-18:00: 下・中層100%(降水量1.5-3.1mm)
(実際)
9時まで快晴
10:00-13:00:上・中層50%
15:00: 上・中層100%
下山後16:00までは雲量は多いものの、下界から巻機山の稜線が確認できた。
16:30頃から下界は雨。
※予報よりも、天候悪化が遅かった。
【装備】
(持参)
ストック、冬登山靴、12本アイゼン、ピッケル、スノーシュー
雨具上下、ダウン、手袋(薄手ウール・厚手・アウター、中間)
(使用)
全て使用
最初から最後までスノーシュー。前日まで降り続いた降雪で30cm程度のパウダー。パウダーの下は締まった雪。
※わかんでは太刀打ちできなかったと思われる。
※刃物ヶ崎手前のP1,490m岩峰の登り時のみピッケルとアイゼンを使用。下りではスノーシューで前から滑って降りた。
【積雪量、装備】
(積雪量事前予報)降水量1mmを1cmと換算して概算量をはかる。
3/1:10.5cm
3/2:16.4cm
合計:26.9cm
(実際)
・林道:新雪30cm
※デブリが発生し、デブリ箇所はアップダウンがあり、新雪ラッセルで1番きつい箇所だった。
・檜倉山西尾根:取りつき新雪30cm、西尾根ルート上:新雪5cm(ルート上も15cm程度しか積雪がなかった)
・刃物ヶ崎:新雪20cm
・檜倉山~柄沢山:新雪0-15cm
・柄沢山~P1,620:新雪0-5cm
・P1,620~涸沢終点:新雪30-50cm
・涸沢終点~涸沢起点: 新雪10-15cm
【食料・水】
(水)行程13時間30分(ナルゲン)
持参1.5L(消費1.2L残0.3L)
→1hあたり0.09L
(食料)
持参: 朝(炊き込みおにぎり1)、昼(炊き込みおにぎり1、レンコンのきんぴら)、干し芋3、スイートポテト1、ナッツ、プロテインバー1、アミノバイタル1、塩分タブレット2、カリカリ梅2、ジェル2
消費:朝(炊き込みおにぎり1)、昼(炊き込みおにぎり1、レンコンのきんぴら)、干し芋2、スイートポテト1、プロテインバー1、山崎ドーナツ2/4、アミノバイタル1、カリカリ梅1
【感想】
◆ルートの状況(清水~林道終点)
・林道はデブリが何箇所も発生し、全て雪上を歩く。
・林道は危険個所無し。暗いうちは、デブリで道がふさがれ、分かりづらい。
・東屋沢は水量10-15cm程度。そのまま渡る。スノーシューが水で濡れ、そのままり林道の新雪に乗ると、スノーシューに雪がくっつき、かなり重量が増す。湿った雪のラッセルのように、かなり足が重くなり、ここからペースが落ちる。ストックでたたいても雪がくっつき、パウダーの雪を歩いているうちは、ずっと重かった。
・以前謙信尾根を歩いてときもスノーシューを濡らしたが、そのときは雪がしまり、重くなることはなかった。新雪の際はスノーシューを濡らしてはダメだということが分かった。
・謙信尾根の分岐まで、計画では1時間10分と想定していたが、実際は1h40くらい?で予定より30分スタートを早めた貯金を既に使ってしまった。謙信尾根分岐から、西尾根取りつきまでも1時間以上歩き、結果3時間程度林道を歩いた。
・あまりの林道ラッセルの辛さ、長さ、眠さ、寒さから、何度も帰りたい帰りたい、帰ろうか、もう家に帰って布団で寝たいと考える。
・久しぶりに大変だった。
◆ルートの状況(林道終点~檜倉山)
・檜倉山西尾根末から取り付くか、その手前から取り付くか(今回利用)、2パターン案を持って歩いた。林道の新雪ラッセルがあまりにも辛く、手前から取り付くこととした。
・どちらを利用しても急登になるが、今回の取りつき地点は密林で雪崩の心配はなさそうだった。
・西尾根に合流すると、急に雪がなくなる。踏み抜きが5-10cm程度になり、スノーシューに雪がくっつかなくなり、ホッとして歩く。
・雪が少ないものの、檜倉山までは薄い籔で広い尾根が続き、藪もうるさくなかった。
・標高P1,410肩で後ろの谷川連峰の大展望が開ける。これ以上は開けた雪原歩き。
・モルゲン・朝日が山に当たり、最高の時間を堪能できた。仙ノ倉山北尾根よりも、P1,410地点で見える山の範囲が広く、何倍も展望が良かった。このまま檜倉山で帰ってもいいなと思うくらいいいところだった。
・檜倉山山頂部はかなりの広さ、風さえなければ幕営適地。今日は8m程度の風があり、刃物ヶ崎山分岐のP1,680に向かった風よけできる地点で休憩した。
◆ルートの状況(檜倉山~刃物ヶ崎山~檜倉山乗越)
・刃物ヶ崎山分岐の1680m~刃物ヶ崎山までは、雪切れなし。
・南に雪庇が付きだしているが、小さい。脇を歩いていると、2回ほど5cm脇の雪庇が落ちた。雪庇近くは落ちる可能性もあるため、注意が必要。
・本コース核心部はP1,512m峰手前のP1,490m峰(岩峰)。遠くから見ると松の木が見える箇所が2箇所あり、P1,490m峰とP1,512m峰が確認できる。
・P1,490m峰鞍部からスノーシューをアイゼンに変更する。新雪の垂直の壁になり、新雪がクラックを隠しているため、クラック落ちなどに注意が必要。新雪のため、1歩1歩ステップをつけて登る必要があり、鞍部からでも15-20分程度時間を要した。
・P1,490m直下5mが最も勾配があり、ハイマツの藪をつかみながら登る。
・P1,490m峰を超えてから、再度スノーシューに履き替える。P1,490m直下でスノーシューをデポすることも考えられるが、山頂部を見ると新雪区間が続き、楽に歩きたいためスノーシューは持って登った。
・岩峰を越えるとP1,512は尾根上の藪がうるさく、尾根上でも突破はできそうだが、左側に数m折り、トラバースしてクリアする。相方は、尾根上の藪区間を歩いたが、トラバースした私と時間が変わらなかったため、トラバースしたほうが楽だと思う。
・P1,512から50-60m上がる区間は、右斜面の雪が新雪の壁のように立ちふさがり、左手松をステップに使用したりしながら、上がっていく。
・この区間を乗り越えると、最後は広い雪原を上がれば刃物ヶ崎山山頂。そこそこ広い空間の山頂部が広がる。山頂看板は残念ながら見つけられず。
・それでも、目の前に昨年度登った、平ヶ岳~赤倉岳~景鶴山や、笠ヶ岳、小沢岳~巻機山の稜線など、360℃の大展望が広がる。
・15時頃から天候悪化がなければ、家ノ串山まで進みたいところだが、その気持ちは抑えて戻ることとする。
・岩峰以外は難易度は低く、スイスイ進んだが、装備チェンジや突破に時間を要したため、稜線から2時間で刃物ヶ崎山に到着した。林道で行程を押していたが、山頂に到着する頃には30分遅れまで取り戻していた。
・帰りは、行きのトレースを利用でき、スイスイ戻れる。岩峰も、モフモフでカリカリしていないため、直下のみバックステップで下り、それ以外は前向きで下れた。スノーシューもそのままつけて降りた。
・帰りは登り区間が多く、刃物ヶ崎山分岐のP1,680m手前は少し長めの登りが続く。
・それでも岩峰に要した時間が短く、1時間30分で稜線分岐に到着。
・刃物ヶ崎山の復路から雲が徐々に出始めるが、天候悪化はなく、そのまま柄沢山へ進む。
◆ルートの状況(檜倉山乗越P1,680m~柄沢山)
・稜線序盤の100mの下りはカリカリ。スノーシューでは歩きづらいなあと思いつつ進む。
・鞍部から登り返しに入ると、モフモフでスノーシューでも15cm程度沈む箇所もあり。アイゼンだけではかなり潜りそうな雪だった。
・今日の林道ラッセルの疲労が出始め、柄沢山への300mの登り返しが結構きつかった。
・檜倉山~柄沢山までは、右手に雪庇が張り出し、隠れクラックが多数の区間。クラックが出ているところはないが、雪面の色などでクラック地点が判別できるため、そこは歩かないように進む。分かっていて落ちた相方の穴を見ると2m程度の深さはあった。やはり稜線はある程度雪があるようだった。
・檜倉山~柄沢山間もトレースはないが、柄沢山に到着するとBCトレースが何本もあり、大賑わいだったことが伺われた。
・柄沢山からは、大烏帽子山のとんがりが目立ち、360℃の展望が広がる。刃物ヶ崎山の後ろには至仏山が広がり、また違う山容を楽しめる。
・お腹が空いて山頂で休憩をしたかったが、風よけ地点がなく、P1,620まで下って休憩とした。
・檜倉山~柄沢山間、柄沢山~P1,620手前までは日本海側から10m程度の風が吹き続けていた。
◆ルートの状況(柄沢山~涸沢川~清水)
・柄沢山~P1,620までは、広い尾根が広がる。カリカリ区間が多く、スノーシューでは下りづらい。広い尾根のため、ハイマツなどの雪が柔らかい箇所を選んで下っていく。ハイマツ踏み抜きはなかった。
・P1,620で休憩後、P1,270を第1の目的地に下っていく。P1,620を過ぎると、急にパウダーの雪になり、30-50cmのパウダーでノートレース。楽しい下りが続く。P1,620直下を少し登り返すと、P1,620に到着する。
・大源太~大栗の頭が左側に見え、朝の長い林道を歩かなくていいと思うと、嬉しくなる。
・その後右手に尾根を曲がり、尾根上に150m下る。100m下ると、松の藪+細尾根が50m続く。なかなか松がうるさく、歩きづらい。
・P1,620から今回下ったルートと、P1,470からそのまま尾根上に下っていくルートの2つを検討したが、尾根上には3箇所ほど松林区間があって、その松次第だなあと考えていた。実際に松林を1回突破すると、多少の時間がかかった。
・P1,470地点で、予定どおりここから涸沢に降りるか、尾根上を歩いて清水まで戻るか相談したが、松の細尾根区間に時間がかかりそうなため、予定どおり涸沢に降りることに。
・P1,470直下の50-100mは急な下りとなる。今回は新雪でモフモフだったため、ジグをきらずに、そのまま正面からモフモフと下った。
・そのまま、涸沢末端の堰堤2箇所に取りつく。堰堤まで来ると、柄沢山からのスキートレースが複数あり。1番奥の堰堤の真ん中を通り、2つ目の堰堤は右手に巻いて、あとは涸沢の上を歩いて行く。
・1番奥の堰堤上は川が見えている部分があるが、それ以外は川の音も聞こえなくなった。
・堰堤2つを超えると、そこは高速道路。スキートレースたっぷりの道を楽々林道終点まで進む。
・涸沢は沢幅が広く、右手に山の斜面も近くになく、雪崩の心配はなさそうだった。これなら、雪崩の心配なく歩けそうだと分かった。
・あっという間に林道終点に到着。計画通り13時間30分で降水が始まる予定の15時に無事戻って来られた。
◆全体の感想
・登りで利用した檜倉山西尾根、下山で利用した柄沢山の尾根では、同じ尾根でも積雪量が3倍以上違った。日本海側から来た雪雲が最初に柄沢山の尾根にあたるからなのか、理由は不明だが、数本隣り合った尾根でも積雪量が違うことには驚いた。登り利用した檜倉山西尾根でラッセルにならなかったため、刃物ヶ崎まで到達できたが、下山時の尾根を利用していたら(暗闇の沢+P1,270に取りつき地点が急のため、登りで利用は考えられないが..)ラッセルで刃物ヶ崎まではたどり着かなかったと思われる。ヤマップで1件だけ刃物ヶ崎山のレポがあるが、威守松山の尾根を登りで利用して1泊で到達している。今回は威守松山の尾根を歩いていないので分からないが、新雪ラッセルで時間を要すると刃物ヶ崎山日帰りは厳しいと思われる。刃物ヶ崎山日帰りで、1番行程が短いのは檜倉山西尾根利用だが、西尾根の雪付きが少ないことから、距離的にも雪的にでもいい尾根に感じた。
・降雪直後の雪を、濡れたスノーシューで歩くと、雪がくっついて辛いことが分かった。
・雪たっぷりの時期に藪漕ぎなく、刃物ヶ崎山へ日帰りで行けたこと、柄沢山も絡めて周回できて、ルート計画・実施ともに楽しい検証&登山がきた。