2024年冬 - 奥秩父・十文字峠越え
甲武信ヶ岳
(山梨, 長野, 埼玉)
2024.01.06(土)
2 DAYS
参加者 中山、鈴木、石井
参考文献
十文字峠越え「アルペンガイド6 奥多摩・奥秩父・大菩薩」山と渓谷社,1997,P.206
はじめに
映画「ゆるキャン△」を見て八ヶ岳の本沢温泉行きたいなと思い、本沢温泉から硫黄岳に登る計画を立てたのだが、1人がアイゼン、ピッケルの持ち合わせがなく、小屋の予約も取れないのでやめた。
替わりになりそうな山を探した結果、長野県の川上村から秩父へ抜ける十文字峠越えをすることにした。途中に避難小屋があること、それでいてあまり人気がないことが理由である。
川上村の方が標高が高いので川上村から入り、秩父へ抜けることにした。帰りも秩父の方がバスの便も多いし、東京が近い。
1月6日(土) 信濃川上駅から四里観音避難小屋まで
信濃川上駅まで
小淵沢駅集合。甲府で松本行きの普通列車に乗り、小淵沢9:43着。特急あずさ3号で先行した鈴木、石井と合流する。
久しぶりに訪れた小淵沢駅はきれいな橋上駅になっていた。5番線小海線ホームに停まっている列車の前で待つ。
10:07小淵沢発の2両編成の小諸行きは概ね全席が埋まっていた。冬に小海線に乗ってどこへいくのだろうと思っていたら清里である程度降りた。
信濃川上でも私たち以外に何人か下車した。
信濃川上駅から毛木平まで
10:51信濃川上駅着。信濃川上駅も17年ぶりに訪れたら新しい駅舎になっていた。予約した川上観光タクシーの方に声をかけられる。毛木平のトイレは閉まっているのでトイレや水汲みは駅で済ませた方がいいとアドバイスを受ける。水は沢で汲めるのでトイレだけ済ませておく。
タクシーの後部にザックを置き、毛木平へ向かう。タクシーが出発するのに合わせて10:57発の村営バスが駅前に入ってきていた。今回は3人いるので梓山バス停から毛木平までの4km強を歩かずにタクシーを使った。
見える山はすべて茶色で雪がない。水なんか雪を溶かせばいいと思っていたがこれほど雪がないのは想定外だ。タクシーの運転手さんも今年は例年よりも雪が少ないと言っていた。ついでに千曲川の水量もこの数年少ないそうだ。
毛木平にて
11:20毛木平着。信濃川上駅から8,000円だった。広い駐車場には薄く新雪が積もっている。天気は晴れでまぶしい。鈴木に日焼け止めを借りる。車が3台停まっていた。トイレは確かに冬季閉鎖していた。
家から厚着をしてきたので各自脱いで体温調整をする。あずまやが建っていたのでそこで出発準備した。
毛木平から千曲源流狭霧橋まで
ゲートの横から十文字峠へ向かう。少し歩くと単独行氏が下ってきた。毛木平の3台の車のうちの1人だろう。甲武信ヶ岳から下ってきたのだろうか。
すぐ十文字峠と甲武信ヶ岳の分岐に出る。甲武信ヶ岳へ向かう足跡は3人ほど見られるが、十文字峠へ向かう足跡は1人しか見られない。
十文字峠への道を行くと東沢にかかる千曲源流狭霧橋という立派な木橋を渡る。雪の河原の中に水が流れており、確実に水が手に入るので各自持参したプラティパスやポリタンに水を汲んだ。
千曲源流狭霧橋から八丁坂ノ頭まで
千曲源流狭霧橋から少し歩くと道は十文字岳西側に流れる沢沿いになる。ほとんど涸れ沢でときどき水たまりがある。
右岸沿いを歩いていくと一里観音菩薩があった。「アルペンガイド6 奥多摩・奥秩父・大菩薩」では五里観音と書かれているところだろう。
右岸の道はやがて急になってくる。そこに山側からパイプの水が出ていた。チョロチョロで汲むには時間がかかりそうだ。
沢が東向きになった緩やかなところでひと休みする。雪の中に人と犬のような足跡があった。
沢沿いの道はいつの間にか斜面を登る道になり、急坂に息が荒くなる。アルペンガイドによると八丁坂というようだ。登り切ると八丁坂ノ頭。樹林帯で日陰だが広くなっているので休む。
八丁坂ノ頭から十文字小屋まで
十文字峠へは十文字山の南面をトラバースする。初めは登りだが途中から下りになる。せっかく高度を稼いだのにもったいない。
大した苦労もなく十文字峠に出た。右か左か分からずキョロキョロすると右に十文字小屋を見つけた。
十文字小屋にて
十文字小屋の入り口は広い信州側ではなく、狭い秩父側だった。冬季閉鎖していて静かだ。小屋前の水場は蛇口をひねっても水が出ない。少し休んで出発する。13:49着、13:58発。
十文字小屋から川又分岐まで
十文字小屋から甲武信ヶ岳方面へ少し登り、川又の看板を見て東へ向かう。しばらく大山を巻く道である。今回目立った山には登頂せず、行程の最高地点がこの大山のトラバース道という地味な山行だ。雪の中に足跡はない。
川又分岐の三叉路は白泰山・栃本方面の道の方がはっきりしているように見えた。川又へ下る道は股の沢をからみながら下っていく。股の沢は登ったことがないので一度行ってみたい。
川又分岐から四里観音避難小屋まで
川又分岐からは尾根の北側を巻いていく。うっすらと雪が積もっているが、飲み水にするにはあまりに少ない。四里観音避難小屋の前に都合よく吹き溜まりでもあればよいがと心配になる。
やがて尾根伝いの道になり、小屋が近づいたことが分かって枯れ木を拾いながら歩く。枯れ木は豊富で雪に埋もれていないので拾い放題である。
四里観音避難小屋にて
尾根から1分ほど下ったところに四里観音避難小屋があった。14:47着。外の温度計は2℃だった。
一応水場があるので鍋にポリタンの水をあけて水を汲みに行く。石井と行ってみたらパイプから水がジャージャーと出ていた。これで水問題は解決した。
鈴木は薪ストーブに火をつけようと苦戦していた。小屋中を煙にしないようにストーブに蓋をしたまま火をつけようとしていたがなかなか点かず、ストーブの蓋を開けて大量の枯れ葉を突っ込んだら火がついた。
薪ストーブは快適で火力もある。小屋備え付けのやかんや持参した鍋をかけるとガスを消費することもない。雪を溶かすのにガスが必要と思っていたがその心配もなくなった。
あとは用意した鍋を作り、持参したビール、日本酒、ウイスキーを飲んだ。薪ストーブでは持参したチャーシューや鮭とばを焼き、それらがなくなるとせんべいを焼いた。やがて酒がなくなり、お茶や白湯を飲んでいた。
21時ごろになんとなく水を汲みに行ったり、22時ごろに薪を割ったりしていた。
22時過ぎに寝るときは石井持参のテントに私と石井が寝て、鈴木は隣にエアマットを敷いて寝ていた。
1月7日(日) 四里観音避難小屋から栃本関所跡まで
四里観音避難小屋にて
夜はさほど冷えなかったように思う。寝返りを打つときに起きたがその際頭までシュラフにもぐればそこまで寒くなかったと思う。
6:20薄明るくなってきて起きる。朝ご飯のラーメン用にお湯を沸かし、その間にトイレを済ませてシュラフをたたむ。外の温度計は-4℃だった。昨日の残りのチャーシューをマルタイ棒ラーメンの具材とし、朝飯とした。
四里観音避難小屋から奥秩父林道終点まで
7:50出発。コルに上がると奥秩父林道への下り道を示す指導標があった。峠みちは1867m標高点峰を西側から巻く。日陰だし、北風が吹いてきて少し寒い。稜線を乗っ越すと東から日が照って暖かい。
大山1860m標高点は南から巻く。岩の根元を下り、ザレた斜面をトラバースする。赤沢谷へ下る尾根を巻くところは「←白泰山・栃本」という指導標があった。
なんとなく道が広くなると山側に凍った滝が見える。道下に石積みがあるので奥秩父林道を作ったときの名残りだろうか。コルに出るとそこが奥秩父林道の終点だが、見える奥秩父林道は狭く車が走ったようには見えない。崩れてしまったのだろうか。
奥秩父林道終点は広く、南側から日が差すので暖かい。コルだから風が吹き抜けるかと思ったがほとんど風は吹いてこなかった。快適に休みながら着ている服を脱いだ。
奥秩父林道から赤沢山東の1818m標高点峰東まで
奥秩父林道からしばらく尾根を歩き、コルに三里観音がたたずんでいた。
三里観音から赤沢山へ緩やかな登りで途中から北面を巻く。尾根を1つ巻くあたりに「鍾乳洞入口」と書かれた倒れた看板があった。稜線が近いから道上じゃないだろうし、かといって道下に下る道も見当たらない。どこに鍾乳洞があるのだろうと思ったが、アルペンガイドによると山側に「10分ほど行くと岩場にぽっかり洞穴があいている」らしい。
赤沢山を巻き終えると1818m標高点峰とのコルで道は南側斜面に移る。アルペンガイドによると「岩ドヤと呼ばれる岩場」があるそうだが特に気づかなかった。1818m標高点峰東のひなたで休む。
1818m標高点峰東から白泰山避難小屋まで
1818m標高点峰東からはたおやかな尾根を歩く。1729m標高点の登りではトラロープのある高さ2mほどの岩を登る。
白泰山避難小屋へは急な登りでこんなところに小屋があるのかと思ったが、あおぎ見ると小屋が建っていた。南側にのぞき岩があり、この行程唯一といってよい展望が得られる。南側に広がる甲武信ヶ岳等の山を見て山座同定する。私はなかなか分からなかったが、木賊山と破風山の間の明瞭な鞍部を鈴木が見つけてそこから芋づる式に甲武信ヶ岳から雁坂嶺まで分かった。赤沢谷を挟んで向かいの尾根の中腹に長方形に木が刈られたように見える箇所があり、あれなんだろねと話した。
白泰山避難小屋は四里観音避難小屋よりひと回り小さいが、薪ストーブはあるし、土間はコンクリートできれいだった。水場があればいうことはないだろう。
二里観音は小屋の栃本寄りにつつましく座していた。アルペンガイドには二里観音から北の尾根へ伸びる「(荒廃)」という道が載っているが気づかなかった。
白泰山避難小屋から白泰山まで
白泰山避難小屋から広い尾根を行く。この辺に小屋建てた方が広くてよかったんじゃないかと思うが、きっとのぞき岩の展望が捨てがたかったのだろう。
白泰山の分岐に出る。今回名のあるピークを踏んでいないので白泰山くらい登っておこうと思ったが、苔むした岩が並んでいてうっすら雪も積もっているせいであまり道らしく見えない。石井は登らないというし、鈴木はどうしようかという。じゃあ棒を倒してみようと提案して、鈴木が倒したストックの向きで決めた。山側に倒れたので鈴木と空身で白泰山に登ることにする。
道はやや不明瞭で、一応ピンクテープがついているが途中で分岐する。稜線に出て南へたどると白泰山山頂に出た。三角点と看板があるだけで展望はない。一回行っておけばいいかなという山であった。
白泰山から一里観音先のコルまで
白泰山からは概ね尾根伝いの道を歩く。大きな登下降もなく歩きやすい。やがて東大演習林の看板のある一里観音。
一里観音をすぎると伐採帯がある。正面に和名倉山が大きい。以前登ったヒルメシ尾根もよく見える。
伐採地の先で道は尾根道と巻き道に分かれる。計画では尾根伝いに秩父湖まで歩くことにしているが、川又発のバスが少ないためそのような計画にした。調べると栃本関所跡13:33発のバスに間に合いそうなので栃本関所跡へ下ることにする。そう決めてひと休み。
一里観音先のコルから栃本関所跡バス停まで
途中で林道を渡り、暗い植林帯を歩く。あずまやの横を通り過ぎて両面神社の下の社に出る。やがて道に出ると集落を通り過ぎる。吠えてくる犬を威嚇したりしながら通り過ぎる。右手に大きな家があるなと思ったらそれが栃本関所跡だった。
丁字路に出るとバス停の看板があった。道は狭いが南向きで暖かいところだ。靴を脱いだりしてくつろぐ。足が靴に圧迫されていたのでサンダルを持参した石井をうらやましがる。13:33にハイエースみたいな車の市営バスが来たので乗車。誰も乗っていなかった。
栃本関所跡バス停から西武秩父駅まで
バスでうつらうつらしていると途中で誰も乗せずに大滝温泉遊湯館に着いてしまった。大滝温泉遊湯館まで310円。
温泉に浸かり、わらじカツ丼を食べ、おみやげを買い、大滝温泉遊湯館16:03発急行西武秩父行きに立って乗車した。17:00普通飯能行きに間に合い、S-TRAINに乗る石井と別れた。
おわりに
1月の奥秩父というとそれなりに雪があってアイゼンやワカンを使用する機会もあるかと思ったが、チェーンスパイクやロングスパッツの出番すらなかった。
雪が少なすぎて飲み水の心配まですることになるとは思わなかったが、幸い四里観音避難小屋の水場は凍らずに水がジャージャー出ていたので問題なかった。四里観音避難小屋は薪ストーブもあり、快適な小屋であった。
また、3連休にもかかわらずほとんど人に会うことはなかった。静かで穏やかな行程であった。