天狗の行場~一ノ岳・二ノ岳・鷹ノ巣山(三の岳)
英彦山(福岡,大分)
2026.06.18 (木)日帰り
空は曇天でした。 山に向かう前に手を合わせました。 「無理なら雨を降らせてください。その時は諦めます」 そんな気持ちで登山口に立ちました。薬師さんにもご挨拶をして、鷹ノ巣山へ向かいました。 鷹ノ巣山には一ノ岳、二ノ岳、三ノ岳の三つの峰があります。多くの人が引き返すのは三ノ岳だと聞いていました。だから一ノ岳、二ノ岳までは、どこか心に余裕がありました。 しかし、その油断だったのでしょうか。 二ノ岳のロープ場で、あとわずかというところで足を滑らせました。身体はロープに振られ、そのまま岩壁へ激突。帽子は遠くへ飛ばされました。痛みと恐怖で身体が震えました。 それでも三ノ岳へ向かいました。 岩壁を前にして心が折れたら引き返そう。そう思いながら歩きました。 両膝は強打して打撲。腕も泥だらけ。それでも三ノ岳の岩壁を見た時、不思議と怖さよりも「登りたい」という気持ちの方が勝っていました。 ここで引き返したら、この山には一生登れない気がしたのです。 目の前にそびえる岩壁は15mを超えているように見えました。頼りないロープと岩にしがみついて登るのか。一瞬だけ躊躇しました。けれど、やめようとは思いませんでした。 登っている最中は、とにかく冷静であろうと努めました。しかし足場は濡れ、ときどき滑る。整備された岩場ではないため、足を置く場所も限られています。落ちても、ロープが切れてもおかしくない。そんな場所で、目の前の岩とロープを信じて登るしかありませんでした。 下山のことも頭をよぎりました。けれど考え過ぎないようにして、ただ一歩ずつ進みました。 無事に三ノ岳へ登頂。 けれど本当の難関は、その後に待っていました。三ノ岳の下山です。 三ノ岳のロープ場と岩場は、一ノ岳や二ノ岳とは比較にならないほど厳しく感じました。山頂からは眺望もありましたが、英彦山を眺めながら願ったのはただ一つ。 「どうか無事に下山できますように」 それだけでした。 山頂標識へ向かう細い道も所々崩れていて危険でした。そして再び岩壁へ戻り、下山。 正直、心が折れそうでした。ほぼ垂直の岩壁を下る。落ちたら無事では済まない。そう思いました。 その時、子どもたちの顔が浮かびました。 無事に帰らなければ、もう会えなくなる。 そう思った瞬間、不思議と力が湧いてきました。 母は強しなのでしょうか。 「絶対に無事に下りる」 そう心に決め、必死に岩壁を下りました。それでも濡れた岩で足を滑らせ、肝を冷やした場面もありました。二ノ岳での転倒が尾を引いていたのでしょう。足は最後まで震えていました。 巻道へ入り、安全な場所まで下りた時。張り詰めていた緊張の糸が切れました。 私は笑いながら泣きました。 怖かった。無事でよかった。死ななくてよかった。 ただ涙が溢れました それくらい怖かったのです。 きっと私にとっては荒行でした。生きるか死ぬか、その境界線を覗いたような気がしました。 そして改めて気付かされました。 子どもたちは、私が生きる理由そのもの。 山でこれほど生死を意識したのは初めてでした。 本当に良い山でした。 そして 結局、雨は降りませんでした。 だから私は登りました。 そして改めて感じました。 私はまだまだ生きていたい。 ──────────────────── ロープはあてになりません。ちぎれてないところもあります。雨の日は岩が滑ります。足場も狭くないところもある。経験や技術がものをいうと思います。鎖ではないので犬ヶ岳より怖さを感じました。所々、オオスズメバチが威嚇してきました。山頂でもあったので足場が狭いと下手すると狼狽えて落ちる可能性もあります。人がマズ居ませんので、土日にするか人を誘うかで危険防止しても良いと思いますが、下手に誘っても足手まといになる可能性もあるのでそれは熟考が必要だと思います。また、高所恐怖症の場合は他の岩場で経験を積んでくる方が安心です。高所でパニックにならない程度に訓練して訪れることをお勧め。せめて三点支持は身につけておきたいところです。






