笊ヶ岳・桧横手山・布引山
笊ヶ岳・布引山・生木割山
(山梨, 静岡)
2025.12.29(月)
日帰り
年内最後の山行は二百名山であり、山梨四天王最難関の笊ヶ岳への挑戦。赤石山脈白根南嶺に位置し南アルプスの山に含まれる。登山グレーディングは7Dに設定されておりかなりの難易度を誇る。(参考に甲斐駒黒戸尾根ピストンが6D、塩見鳥倉ピストンが7D)
今年から登山を始め、すぐにどハマりし、高い山に心を奪われ、11月からは1人で南アルプスをひたすら登った。そうしているうちに南アルプスが大好きになり最後も南アルプスで締めくくりたいという思いと冠雪した南アルプス主峰達の絶景を見たいという願望から笊ヶ岳を選定した。笊ヶ岳は南アルプス主稜・主峰の殆どを大迫力で望むことができる展望台としても有名で南アルプスを眺めるならばここがNo.1だと思っている。ただその展望台に立つためには過酷で長い登山道を踏破しなければならない。普段からロングを好んでいる私にとって年内最後の登山として舞台が整いすぎている。先週、先々週はマラソンウィークだったため3週ぶりの登山ということもあり気持ちの高まりは頂点に達していた。
問題は積雪量だ。雪用装備はチェーンスパイクくらいしかないので11月末に行った甲斐駒レベルであれば途中撤退するつもりであった。
いざ当日。が、今回もやらかしてしまう。大寝坊をしてしまい早くても9時スタートとなってしまう時間であった。コースタイム的にヘッデン下山は免れない。甲武信ヶ岳への変更もちらついたが笊ヶ岳への思いが強く予定通り笊ヶ岳へ向う。そして9時15分、老平より登山開始。始めの1kmは林道歩き、そこから3kmはほぼ平坦ではあるが崖っぷちのトラバース登山道となる。このトラバース道の途中に岩壁から多量の水が垂れ落ちている箇所があり冬場はここに氷瀑ができ通行困難となることがあるそうだが、そこまでにはなっておらずなんとか通行できた。ただ大量の氷柱が道上に落ちており、非常に滑りやすく、前述の通り崖っぷちの道であるため細心の注意をはらって慎重に通過した。おそらく一番の危険箇所であろう。そもそも老平登山口〜広河原までは破線ルートである。このポイントの懸念があったためランカン尾根(バリルート)からのルートも考えたがおそらくそちらの方がきついだろうと思い時間的な問題も考慮し正規ルートを選択したが通行できてよかった。他にも朽ちた橋や心もとない梯子などもあったがさほど緊張感のあるものではなかった。そしてトラバース道終点の広河原渡渉点。ここは水量によって渡渉難易度が大きく変動する。この日の水量がどうだったかはわからないが入水することなく渡ることができた。ただそのままでは少し難しそうだったため巨石を2つほど運び入れ少しの土木工事を施し石の上を渡った。渡渉後本格的な登山が始まる。ここから桧横手山まで1200m標高を上げるがひたすら登りだ。傾斜も中々にキツく非常に大変だった。途中に林業の忘れ物(林業機材が放置された場所)がある地点の20m程手前で後ろを振り向くとちょうど視界が開けており、富士山を真正面に望むことができる。笊ヶ岳は山頂まで眺望のある箇所がかなり限定的で貴重な眺望スポットの1つだ。2021m桧横手山に到着しここで少しの休憩をとる。ここまでかなりハードな上りであったが次の布引山までさらに600m近くひたすら上りだ。桧横手山前後の100m〜200m程度緩やかな道があるがそれ以外は基本ずっと上り道だ。さすがは7Dといった感じ。少しの休憩後歩みを進める。2200mあたりから雪が出始めた。積雪量は2〜3cm程度だが結構凍っているためここでチェーンスパイクを着用した。前述のとおり結構な斜度の登りであるためチェーンスパイク無しではほぼ歩行は困難であるがチェーンスパイクさえあれば問題なく登れるといったところだ。布引山直下で斜面が崩落した開けた箇所に出る。ここでついに南アルプス深南部が一望できる。見えるのは聖岳から大無間山。特に上河内岳が真正面に大迫力で目に飛び込んでくる。聖岳はばっちり冠雪しておりその美しさに思わず声を上げた。ただしここも一歩間違えば滑落し命を落としかねないところなので景色に見とれて足元をすくわれないよう注意が必要だ。もう一息登り2584m布引山に到着。ひたすらの急登でだいぶ足にきている。ここも木々に囲まれほぼ眺望はないが1点だけ展望スペースがあり南アルプス側が望める。景色は直下の崩落個所とほぼ同じである。上河内岳をバックに布引山の山頂看板を撮影し先へ進む。笊ヶ岳まであと一息のところまで来てはいるがここからの一息がかなりきつい。布引山から150mほど一気に急降下し、200m程登り返す。ここの上りと下りの斜度がかなり急で下っている最中「これを帰りは登り返すのか...」と憂鬱になった。この布引山からコルまでの間が1番積雪が多く、くるぶし上くらいまでの深さがあり非常に歩きにくかったがなんとか行ける程度であった。そして下りきったところですこし視界が開けている箇所があり笊と小笊の双耳峰がついにくっきりと顔を出す。「残すはこいつを登りきるだけだ」いつものごとく大腿筋へのダメージはかなりのものだったが待望の大絶景が待ち受けていると思うと心が奮い立った。最後の上りが本当にキツかったが力を振り絞りついに念願の頂に立った。本当に最後の最後まで眺望が無く、360°の絶景が拝めるのは山頂の数十mの区間だけだ。だがそれが逆に至極の感動をもたらす。この日は雲一つない最高の天気で360°全ての景色を余すことなく堪能できた。山頂からの南アルプス主稜の眺望は北は鳳凰三山から南の大無間山までもがズラッと一望できた。望んでいた冠雪の3000m超の主峰たちが見事に立ち並んでいる。そしてその反対には小笊越しの富士山も見事に見ることができた。富士山も南アルプスも最高の冠雪具合であった。もっと雪が降っていたらこの笊ヶ岳への日帰り登頂が不可能であり、雪が少ない時期であればこの期待通りの景色は拝めない。晴れていてもどこかしらに雲がかかっているケースも珍しくなく、本当に限られた条件下で手に入れたこの景色を心に焼き付けた。写真では絶対に伝わらない登頂した者だけにしか得られないこの感動に浸りきった。これだから登山は辞められない。今回は初めて1人の登山者と出会わなかった。この時間から登ってくる人もいないだろうから本当に笊ヶ岳を独占した。山頂には30分程滞在した。登ってきた道を思い返し、途中でブラック下山になることを思うと一転して憂鬱な気分になり、山頂から離れたくないモードに拍車がかかったが滞在すればするほど後の自身を苦しめるだけなので過去一の名残惜しさであったが下山することとした。寝坊した自分をぶん殴ってやりたい気持ちになった。布引山までの上り返しが尋常じゃなくキツかったがそれ以降はひたすら下るのでそこからは今回も爆速下山。布引山到達時は随分日も落ちていて夕日に染まる聖岳・上河内岳の趣ある景色も見られた。桧横手山に着いた頃にはだいぶ暗くなっていたためここからヘッデンON。暗いうちに登るのと暗くなって下るのとでは気分が違いすぎる。恐怖と闘いながら爆速下山再開。広河原の渡渉点は行きと違うポイントから行ったら難なく岩を渡って渡渉できた。氷柱の困難個所も下山時は随分溶けていて危険度が下がっていた。そんなこんなで無事下山。下山で結構走ったせいか以降脚が鉛のように重かった。翌日も筋肉痛が過去一レベルでひどかったが得たものからすると大した代償ではない。むしろ勲章とも思える痛みか。などと思いながらこの参考記録を書き終えた。
写真をこまめに撮ってたくさんアップしたので今後この時期に登りたいという方への参考になれば幸いです。