沼津アルプス 原木駅→沼津駅
沼津アルプス・鷲頭山・香貫山
(静岡)
2026年05月26日(火)
日帰り
ある夜のことだった。
次はどこの山に登ろうかと悩んでいる私の耳元で、天使ちゃんがこう囁いたのだ。
キラキラした山に登りなさい。
確かに、私はキラキラした山にはあまり登ってはいない。ずっと日陰を歩いてきたかのような人生だからというわけではないが、どうにもわちゃわちゃした感じが苦手で、山も微妙にメインどころを外すルートを選びがちである。
しかし、そんな私とて熊は怖い。
奥多摩の七ツ石から鷹ノ巣間の石尾根を歩きたいのだが、水根ルートには熊の痕跡があり、どうしたものかと悩んでいた。この区間を歩けば、奥多摩駅から雲取までの石尾根の軌跡が繋がるのだ。とは言え、やはり平日のソロはリスクが高い。せめて熊スプレーを買ってからにしようと思った。
とりあえず奥多摩でキラキラしたルートと言えば鴨沢から雲取ピストンだろう。人気もあるし、熊の目撃情報もないようだ。ウキウキしながら準備をしていると、24日に登山口からおよそ1.5キロのあたりで鹿を追いかけていた熊が登山道を横切ったという情報が入った。張り切ってビンビンしていた気持ちがすっかり萎えてしまった。
私は考えた。キラキラした山の代表は燕岳で間違いはないだろうが、日帰りで行くのは難しい。そもそも私はアルプスには行ったことがない。今年あたりは行ってみようかなぁとはなんとなく思ってはいる。そんなわけで、アルプス初心者としてまずは沼津アルプスを歩くことにした。ルートは原木駅から沼津駅を選択。沼津アルプスなんてキラキラしてないじゃないかと思われるだろうが、駿河湾がキラキラしているはずである。曇り予報がご愛嬌。
登り始めてすぐに汗が滴り落ちる。キラキラではなく、テカテカである。デロデロになるのも時間の問題である。おじさんだもの。
沼津アルプスは意外とキツいということは知っていた。傾斜が厳しい箇所にはロープが張られ、梯子が掛けられた難所もある。標高は大したことがないのだが、こざかしいピークをいくつも登ったり下ったりするので、いつの間にか削られているのだ。やたらと目にするジジババたちは、縦走ではなく単体ピーク狙いのお気軽里山ハイクなのだろうか。もし縦走だとすれば体力おばけのジジババたちである。
今回の山行で獲得標高が100,000mを越えるには、900m弱の標高を稼ぐ必要があった。普段は特に意識はしていないが、1,500mまでは普通、1,800mでハードっすねぇと感じ、蛭トンのように2,000mを越えると我ながら変態ではないかと笑いが入る。今回、キラキラなルートを探していて感じたのは、一般的なルートって1,000mくらいなんすねぇということだった。以前も書いたように、私はそのくらいでは満足できないカラダになってしまっている変態さんである。歩き終えたらヘロヘロになっていたいのだ。つまり、キラキラなルートでとりあえず100,000m越えましたわーいみたいなのはご遠慮いただいて、せめて1,500mくらいのルートを歩いて余裕で越えたりましたわとエセ関西人のようにかましたい面倒くさいタイプである。
そして、これはあまり大きな声では言いたくはないのだが、登頂した山の数が300にせまり、ピークハント欲が出てしまったのだ。はっきり言えば、沼津アルプスのようなご当地里山アルプスはジジイになってから歩けばいいと思っていた。欲に負けてしまった。私は弱い人間である。
しかしである。
ルート中盤、相模湾を見渡す展望ポイントに到着した私は、天使ちゃんが私を導き、沼津アルプスが私を呼んでいたことを確信した。
そこには、「き★らら展望台」とあったのだ。キラキラではないが、ほぼキラキラである。私は輝きを増しギラギラしながら後半のルートに突っ込んだら、なんてことはない所で岩にけつまづいてコケた。右膝と左脛を打ったが痛みは大したことはない。それよりも左ハムが攣りかけたのがイヤな感じだった。残りのピークは4つ。斜度グラフを見ると最後のピークがいやらしい感じだ。とは言え、そこは里山のピークなので距離は短い。と呑気に構えていたら最後の登りで左足がバキバキに攣った。あまりの痛さにその日初めて座って休憩をした。回復すると私はなんてことないさという顔をして再び歩き出した。
最後のピーク、香貫山はこれでもかと言うくらい地味でジメジメしていた。何かの間違いではないかと思ったほどだ。
下山し、沼津駅へ歩いていると口からホースが出ている犬がいた。湧水なのだろうが、あまりにも情けない表情なので飲む気にもなれない。やはり私は猫派でよかったと強く感じた次第である。
そんなわけで、熱海からは優雅にグリーン車に乗ってビールを飲みながら帰宅した。帰りにグリーン車に乗るために沼津アルプスを選んだのではないかと言われるかもしれないが、結局のところまったくその通りなのですよ、はい。