13:53
23.3 km
2571 m
ノウトリ・残雪期
北岳・間ノ岳・農鳥岳 (山梨, 長野)
2026年04月18日(土)〜19日(日) 2日間
久々に泊まり山行をしたい衝動に駆られ、残雪期ノウトリへ 大門沢小屋をベースに、屈指の長大で急勾配の続くルートを乗り越え白峰三山一角の農鳥岳に挑む 終盤、稜線に出るまでの直登シーンは緊張みなぎるミスが許されない真剣勝負 残雪期特有の緩んだ雪に苛まされたが、無事登頂することができ大きな喜びを得る 今シーズンはどんな体験が待っているのか想像を膨らませながら眺める南アの名峰たち、今年もよろしくと伝えてきた 大門沢を下流から源頭まで遡るかのような歩み、どうりで厳しいわけだ 雪山シーズンも終割が近づいてきているが、そろそろ泊まり山行がしたいなと思い立ち気軽に利用できる大門沢小屋が真っ先に思い浮かんだ 昨シーズンは南嶺を巡ったときに利用させていただき、とても心地が良かった印象が強い しかしながら、3週ほど前から最近レポがあがっていない 相互フォローのラクシュミ氏のレポでは大門沢で大掛かりな雪崩が発生していることもあり、残雪期なりの変動状況を念頭にプランを練る (この場をお借りしてラクシュミさんにお礼申し上げます、レポ大変参考になりました) 泊まり+雪山装備になるとだいぶ荷物が嵩む、ザック総重量は20kg越え 大門沢小屋まで重たい荷物を背負いながらの歩みとなるが、山頂アタックは軽荷で挑めるはずだから 土曜日、AM7:00に自宅を発ち奈良田に着いたのは12:00少し前 ダム周辺の山々にも春の訪れが見てとれる、のどかな風景に癒されつつゲート手前の駐車スペースの空きに望みをかける しかし、満車...この時間帯ならば仕方がないか ということは登山者がいるのかなと思いきや、この時期は釣り人がほとんどのようだ あきらめて第二駐車場へ向かう、この日は開放されていて白根館のすぐ脇に停めることができた 久々の重量級ザックはなかなかの負担、おまけに冬靴 下界はだいぶ暑い、ゆっくり進むことにしよう ゲートを超えしばらく林道を進み、登山道には進まず吊橋の下を通りショートカット 河原にも降りず整備中の車道から橋を渡り取水設備脇を抜け、名物の吊橋に ここまではもう春というより夏の暑さに近い感覚があった 取水設備脇の小径は泥濘となるのが通例だったが舗装されたようで快適に通行することが出来た 吊橋を渡ったところで小休止、持参したおにぎりで補給する ここらまで来るとだいぶ暑さが和らぎ心地がいい しばらくすると、2名ほど下山されてきた方がいたので話かけてみると釣り人だった、この日の釣果はイマイチだったらしい 大門沢小屋まではトラバースや急登、渡渉、岩場等々気が抜けないポイントが多々あり、ザックの重たさでバランスを崩さないよう注意した 瑞々しい樹々の葉、高山植物たち、鳥たちの元気な活動ぶり、そして雪解け水の多さを目の当たりにし、春の到来を実感させてくれた もう1名釣り客と遭遇しお話しさせていただいたところ、この時期にしては水量が多く水温が冷たいので魚たちの活動も鈍り気味だとか しかしこの日は天候も良くて魚の活動が活発になり釣果はまずまずだったらしい この時期は釣りにするか、登山にするか迷うと仰っていて器用な山の楽しみ方をされているものだなと感じた 渡渉ポイントでは1箇所木橋の破損があり、仮設ロープはあるものの要注意 その他の木橋はすべて問題なく通行できた 駐車場から3時間程度で小屋まで辿り着けると画策していたが、変化に富んだ展開のルートでそう甘くはなかった 約4時間ほどで小屋へ到着、まずは荷ほどき そして、水場の確認、問題なく流れていて安堵、その美味さに悶絶、あとで飲むビールを冷やしておく 汗を拭い着替え、夕方はもうだいぶ冷え込んできて素手だと悴むしダウンジャケットを着ないと寒かった 待ちわびたかけつけビールのひととき、テン場にチェアを設置して正面にうっすら紅く染まる富士山を眺めながらのどを潤す 至福の瞬間、重たい荷物を背負ってきて報われた気分になる 17:00をすぎても他の者は来ず、どうやらこの晩は自分ひとりしかいないようだ モバイルの電波も一切通らない静かな秘境、音楽に集中できるいい機会だ 続いて夕食の準備へ、キース・ジャレットの曲を流しながら行うと手際よく進める ラーメンとチャーハンを作ろうと思っていたがラーメンだけで十分ボリューミー 夕食とともに嗜んだビールは、伊勢角ペールエール!とても華やかな香りと味わいに感動 大好きな音楽を流しながら、ビール片手に山の風景を眺めるひとときはとても有意義 このビールのフィーリングからチョイスした曲は「ニューヨーク・ニューヨーク」 アンドレア・ボチェッリとトニーベネット、矢野顕子と上原ひろみの演奏を聴き比べ どちらのライブ演奏も黄昏どきの雰囲気によくマッチする、甲乙つけがたいが後者の2人の相互理解から生まれだすスインギーで即興的な演奏に感極まった ボチェッリ・トニーベネット https://youtu.be/4TFX0i0m_WY?si=6DY7ntEhXFV-Js2X 矢野顕子、上原ひろみ https://youtu.be/1BmbL2SSNPU?si=TbEzfJpflS3IQZW5 だいぶ冷え込んできた、小屋内へ戻り早めに就寝 自分は寒がり体質なので、上下ダウン、ジャケット、夏用シュラフ+カバーでちょうどよかった 誤算だったのは頭部に何も装備しなかったせいか頭が冷えて終始浅い眠りになったこと、やはり1人だとすこしドキドキしちゃいますね AM3:30起床のところ少し二度寝してしまった、ヘッドライトの明かりがみえたので登山者がいるのかなと表に出たら1名おられた 声をかけようかと思ったが先を急いでいた様子なので見送り 朝ごはんは地鶏雑炊 この日は激闘が予想されるためしっかりと補給しておく、大門沢小屋の名水で淹れたハーブティーも実に美味しい 支度を整え、AM5:00に山行開始 小屋からしばらく登ると美しいシラビソの森だなぁと撮影を試みると、森の中を黒いゴリラのような生き物が颯爽と通り抜けていった おそらく熊だろう、冬眠明け間もないのかだいぶ痩せていた印象がある しばらく熊鈴を大きめに鳴らしながら慎重に通過、この先も登場しないでいてくれることを願うばかり 一度、分厚い雪渓で覆われている違う沢筋に進入してしまったが、おかしさに気がつき早めに復帰できた そしてガレ沢の横断へ、ここが雪崩発生のポイント たしかにおびただしい量の雪で覆われている、特段雪崩が起きそうな気配もないので淡々と通過する 大門沢の源頭はまだほど遠くに見える、その上部には農鳥岳が聳えている まさにこの沢は農鳥岳から生み出されたもの、沢の下流から遡りピークまで辿る展開にロマンを感じる この先は樹林帯となるが猛烈な傾斜の登りが続く、それに向け12本アイゼンを装着 数年前、初めて白峰三山の縦走の折、下山路で歩んだ時にこれを登りで歩くのは到底無理だという第一印象だった それが今回でもう2度目となる、麻痺してきたのだろうか まだ朝方は雪の締まりもギリギリで大きな踏み抜きは時折あるものの、先行者のトレースを辿れば何とかなる程度だった ひたすら無心で呼吸が乱れないペースを保ち前進する ようやく樹林帯を抜け森林限界あたりに達する、雪で深く覆われているため方向感覚がとりにくい この先ピンテは皆無、ここまでは手厚く樹々に設置されていたが、この先は地形から岩にマークされているのだろうけど雪で埋もれまったく目にはできない トレースも薄く、この先を冬道だと直登するようだが登れるイメージが描けなかった 様子見しながら夏道ベースで進んでいくとどうやら誤った進行方向に進んでしまったらしいことに気がつく 戻りながら稜線につながる糸口を見出そうとするが、夏道のトラバースは傾斜が強く厳しそうだ トラバースに入ったすぐあたりから稜線を見上げると直登すれば辿り着けそうな手応えを得る、みんなの軌跡でもこのあたりを直登している実績が伺えた 覚悟を決め、緊張のひとときに集中、幸い前爪の引っ掛かりは悪くない、できるだけ細かいステップで息を乱さないよう心掛けるが焦れてペースを乱してしまうこともあった 何とか稜線手前のハイマツ帯に達し、しばらく進めば見覚えのある大門沢下降点のやぐらが視界に入ってきた ひとまず安堵、小休止 めずらしく風は穏やか、冷たすぎず温すぎない程よい心地 馴染みの名峰たちが勢ぞろい、思っていたよりも稜線上の雪はなくなっていた ずいぶん長い間、このあたりの地は遠くから眺める対象だったがいまこの地にいることに感動が押し寄せる そして、自分以外誰もいないなんて ライチョウいないかなーと探り入れたが出会えず、残念 農鳥岳まではまだ45分ほどかかる見込み、高度も上がり呼吸がいままでよりもキツイのでゆっくりペースで先人のトレースを追う ガレ場と積雪ゾーンが交互に現れる、特に広大な積雪ゾーンは異世界感が強かった 南側に目を向ければ南嶺や荒川三山、塩見岳の姿を楽しめる 東側には富士山が見守ってくれている この日も雲の演出がいい 農鳥岳手前のニセピークを越えると、いよいよノウトリの頂が見えてきた その背後には間ノ岳と北岳、クライマックスの瞬間が近づいている 稜線上の岩場と雪庇に注意しながらこの高度のキリリと締まった風を浴びながら進んでいく 右手の斜面あたりが大門沢の起点だろうか、歩いてここまで来たのだ そしていよいよ農鳥岳のピークへ達した、素直にうれしい 自然に昨晩聴いた曲が脳裏に流れてきた、ボッチェッリのほうが山頂では似合うな 北岳も間ノ岳もすぐ目の前にいるような感覚、だけど手が届きそうで届かない存在に映る 西農鳥岳も同じく、スケールがでかい 山頂でしばし休憩、いままで歩んだ記憶を思い起こしながら名峰たちと対話 今年も楽しませてねと 先週歩んだオベリスクが遠くに見える、この親近感がたまらない 思っていたよりも登頂に時間を費やしてしまったので、後ろ髪を引かれる思いだけど下山へ 天上の散歩道と称される稜線を再び味わいながら、大門沢下降点へ さぁ、この先どこから降りよう... 登りの道はちょっと勾配が心配だし雪も緩んでいることだろう、夏道をなぞりながら状況に応じて調整することに 下降点から夏道にはトレースがなく、踏み抜き地獄 盛大に踏み抜き、ゲイターの膝部分を強く絞っていなかったので雪が侵入し靴の中へ入ってしまった まさかこんなに緩みが進行しているとは...靴を脱いで雪を取り除きしっかりとゲイターを締める ほぼ夏道ベースで進むが傾斜が強くトラバースする際は緊張を強いられた、数回足を滑らせヒヤッとするシーンもあった ようやく森林限界あたりに続く自分のトレースに戻ることができ安堵、あとはひたすら下るだけと思ったが... この先の樹林帯でも激しい踏み抜きが続きボディブローのように体を蝕んでくる 雪は緩み朝方刻んだ自らのトレースさえ踏み込んでいってしまう、毎歩神経をとがらす必要があり心身ともに消耗する 地獄のような樹林帯を抜け、ガレ沢を渡り大門沢小屋へ到着 荷物を片付け荷造り、昼飯は作るのが面倒だったので行動食でカバー 甘納豆はとても有用 名水1ℓを汲み、大門沢小屋へ別れの挨拶をノートに記す 下山はあっという間、ザックが重いので左腰骨あたりが強く締めたベルトで擦れて痛かった 綺麗な沢と森、心が落ち着く世界だった 最後の吊橋を渡り林道へ、ここからが長く気温も上昇していてしんどかった 数年前に白峰三山縦走をしたときのエンディングテーマ曲、この道を歩むとどうしても聴きたくなる トム・ウェイツ O’l 55 https://youtu.be/BeeK37wrBDQ?si=GEz62515GjLHNTjq 無事下山完了 最後まで冬靴での活動だったけど、雪のないゾーンでもかなり有効でした やはりソールが固いのは有効なのだと 3シーズン用のライト・アルパイン、ひとつあるといいな 奈良田温泉・白根館で汗を流す 名物の露天風呂はあいにくこの日は女湯だった、また次回チャレンジすることにしよう それにしても名湯、山に抱かれているような程よい温もりとぬめりのある泉質で疲れた体を癒してもらった さすが温泉遺産! なお、女帝の湯とは源泉が異なり泉質も違うらしい 一宮イッツモアに立ち寄り食材を買出し、せんだいやの納豆もしこたま入手 際立った渋滞もなく自宅には21:00ごろ到着 ステーキとビールで、この素晴らしい山行に乾杯 大門沢小屋、テント泊と沢遊び目的で利用しても楽しめそうだ 翌日は重度の筋肉痛発症、体脂肪率も5%に... しっかりリカバリしなくては😅