古賀志山・赤岩山・鞍掛山・男抱山・半蔵山(栃木)
2026.07.11 (土)日帰り
「もう登山なんて二度と行かない。」
壬生の道の駅へ向かう車の中で、高3の娘は今日何度目かの宣言をした。たぶん次に誘っても同じことを言うだろう。でも、その「二度と」は案外あてにならない気もしている。
一か月前、人生初の登山は茶臼岳だった。ロープウェイで九合目まで行ったものの、高所恐怖症の娘は完全にフリーズ。景色どころではなく、そのまま下山した。
悔しかったのは、私のほうだった。
だからこの一か月、「初心者」「怖くない」「景色がいい」を検索し続け、たどり着いたのが古賀志山。
ところが、山は優しかったけれど娘は優しくなかった。
「虫いる!」「道違うんじゃない?」「帰ろうよ。」
耳元では虫がずっと飛び続け、誰ともすれ違わない山道に私も少し不安になる。YAMAPを何度も開いては「合ってる、たぶん」と自分に言い聞かせる。親というのは、不安を隠すのが仕事みたいなところがある。
そんな空気でようやく山頂へ。
すると、帰り道の娘はまるで別人だった。
「ねえ、さっきさ。」
その「ねえ」が止まらない。学校のこと、友達のこと、好きな動画のこと。登りでは返事すら面倒そうだった娘が、下りではずっと笑っていた。
結局、今日いちばん高かった場所は山頂じゃなくて、娘の機嫌だったのかもしれない。
朝6時に家を出て帰宅は18時。大谷資料館を歩き、冷や汗が出るような細い峠道を越え、出流山でそばを食べ、登山用品店を探して一時間歩き、最後は壬生の道の駅のカフェで一息。
なんだか一日かけて、目的地より寄り道のほうが多い旅だった。
「もう登山は行かない。」
そう言いながら娘は、帰宅すると今日撮った写真を何枚も見返していた。
人は楽しかった思い出ほど、「もう嫌だ」と言いながら持ち帰るのかもしれない。