霞と爵銀の春一番
鹿岳・黒滝山
(群馬)
2026年02月23日(月)
日帰り
いよいよ今年も春一番が吹いた。
暖かい南風と共に、あの花粉が空を真っ黄色に染め上げる。
連日のきつい訓練は程々にして、たまには別のお山で気分を変えたいと思うこの頃……。
そんな中、オオナズチより少し遊びに行きたいと強請ってきた。
そう言えば、最近あまり西上州へ行っていない。
直近では安中アルプスの攻略で行ったっきりだが、三毳山に引き篭もったり、妙義山をはじめいろんなところで山林火災が頻発してなかなか足が遠のいたのいうのが実情である。
どこが良さそうか迷っていたところ、メル・ゼナよりとあるお山を見つけてきた。
それは、下仁田の「物語山」だった。
大昔このお山に大きなお城があったが、度重なる戦乱によって陥落し、落武者たちがこのお山のそばにある“饂飩俎岩(めんべいわ)”の上で金銀財宝を埋め集団自決をしたという伝説からその名が付いたとされる。
今回そんな物語山へ、オオナズチ、メル・ゼナとともに挑むこととなった。
降り着いたのは、サンスポーツランド下仁田。
早速登り始める……。
本日は散歩だけでは物足りないということで、祖父も同行している。
阿昌念の滝入り口より、南側の林道をひたすら登っていく。
この物語山自体工程の約6割近くが崩壊林道区間であり、実質の登山道は残りの4割である。
崩壊林道をしばらく登っていくと、四駆の車ですら走れないようながれた砂利道が出てきた。
森の中をうねるように歩き進めると、少しずつ道が狭くなり、落ち葉の山の中を掻き分けるようになった。
谷底を流れる川は一部凍っていて、まるで氷瀑のようになっていた。
崩壊林道をさらに登っていくと、目の前に物語山登山口が出てきた。
看板によれば、残り55分とある。
そしてその先には、一旦谷側に下りたのち長いざれた急登が見えてきた。
此処から本当の意味で物語山への登りが始まる。
樹林帯の中をだらだらと登っていくが、木の根やざれ場が続き、蟻地獄のように足を持っていかれる。
ざれた急登を登っていくと、僅かに木漏れ日が眩しい場所が出てきた。
これより先は、稜線上までほぼ滑り台のようなざれ場と浮石の坂が続く。
まるで山梨県の茅ヶ岳を彷彿とさせる。
どの石を踏んでも動く為、体重をまともに預けられる場所はどこにもない。
とにかく崩れないように、長居しない程度にどんどん登り詰めていくしかなかった……。
勾配がかなりきつく、少しでも浮石を踏み抜こうものなら谷底まで石ころが転がっていく。
気の抜けない時間を過ごしていると、木々の合間から青空が覗かせてきた。
物語山の稜線上に出たことを意味する。
分岐点より北西側へ進めば西峰へ行けるが、とりあえずまず山頂へ行きたい。
あともう少しというところだが、ここで祖父の体力が限界に近づいてきたということで、相談の結果先に下りてもらうことにした。
これより物語山の山頂を目指す……。
物語山は全部で4つの峰で構成されている。
最高地点の南峰、三角点が置かれている北峰、事実上の展望台となっている西峰、そして唯一登ることができない饂飩俎岩である。
つまり景色を見る為には、南峰だけでなく西峰の登頂が絶対条件になっている。
まず行くのは南峰。
とは言ってもその手前に三角点を持つ北峰がある為、どのみち両方通過することになる。
岩だらけの急登を再び登り詰めていく。
木々の合間から下仁田町の市街地が広がり、若干上毛三山が覗かせている。
登るにしたがって少しずつ緩やかになっていくが、もう既に足がもつれていた。
急登を登り進め、登りはじめてから2時間ほどだった頃、遂に物語山の山頂にたどり着いた。
三角点を持つ北峰の向こうに南峰があり、小さな標識が掲げられていた。
此処では景色は一切得られない……この物語山において展望が得られるのはやはり西峰しかない。
きた道を戻って、主稜線上分岐点へ向かった。
急な激下りをなんとか下りて行き、分岐点まで来た。
此処から反対側の西峰へ登り返す。
ほぼ岩稜の塔になっていて、申し訳程度にざれた急登にロープが垂らされていた。
落ち葉の急坂をしばらく登っていくと、程なくして西峰に着いた。
此処からは、圧巻の絶景が広がっていた……。
目の前には下仁田町の市街地が広がり、その向こうには非常に険しい岩峰を連ねる妙義山や碓氷峠周辺の山々があった。
さらに北側に目をやると榛名山や赤城山、御堂山、大桁山、鍬柄岳などを望み、そして一番向こうには美味しそうなガトーショコラを見せる浅間山が鎮座していた。
素晴らしい絶景を味わったのち、西峰を下りる。
急な落ち葉とざれた坂を下りていき、主稜線分岐点より崩壊林道へ向かう。
もうこの時点で日は傾いていて、花粉も相まって空が少しずつ黄色くなってきた。
ざれた激下りは凄まじく、一歩一歩下りることにころころと石ころが谷底に転がっていく。
落ち葉で下が見えない為、脚をとられるとこれまた膝への負担になる。
途中に生えている木に掴まりながら慎重に下りていく……大自然にあるものはなんでも使えと言うことだろうか。
長いがれ場を下りていくと、樹林帯の中に入った。
木々の合間から若干荒船山が見えるが、しっかりとは確認できない。
樹林帯に入ってしばらくすると、ようやく崩壊林道が見えてきた。
脆くざれた急坂をなんとか越えて、長い崩壊林道を駆け下りていく。
落ち葉のラッセル地獄をやり過ごし、四駆の車が走れそうな幅の区間まで一気に下りた。
道が緩やかになってきた時、先に下りていた祖父に追いついた。
あとはひたすら崩壊林道を下って、駐車場へ戻るのみである。
だらだらと砂利道を下りていき、時刻は午後3時を越えた頃ようやくサンスポーツランド下仁田まで下りてくることができた。
お食事を済ませ、足早に帰宅の路へつく……。
春一番の物語山にて、久しぶりの西上州を堪能したオオナズチとメル・ゼナであった。
※噛生虫:「MHR:S」に出てくるあらゆる生物や宿主の力を奪って共生関係を結ぶ謎の虫。
通称キュリアと呼ばれる。
※傀異克服:上記の状態で宿主がもがき苦しんだ末、噛生虫の力に打ち克ったことでより強い力を得ること。
※ダークロードブリス:爵銀龍メル・ゼナの技。
その身に宿した噛生虫の爆発力を使って、瞬間移動に近い速度で距離を詰める移動技。