野底岳
石垣島 南部
(沖縄)
2023.01.30(月)
日帰り
野底マーぺと言われるお山。
石垣島に伝わる野底マーペー伝説(引用)
『昔、西表島からすぐの所にある人の数よりも牛の数の方が多い、黒島という小島にマーペーという美しい娘と、カニムイという若者が住んでいました。マーペーとカニムイは小さなころから仲がよく、家も道をはさんだ向かいにあったため、幼馴染としてずっと一緒に過ごしていました。
毎日朝から晩まで一緒になって遊んだりケンカしたりして過ごしました。マーペーとカニムイの仲の良さは村の人の間でも有名で、「いつになったら結婚するんだろう」なんて言われていました。
ところがある日、突然島に役人がやって来て、村中の人を集めました。「これまで納めていた米や砂糖をもっと多く納めるように、という王様の命令だ。今よりも多くの作物を育てるためには、今の土地では狭くて足りない。よって、新しく米やサトウキビを作ることのできる土地を開拓することとし、ここから広い土地のある石垣島へ人を移すことにした。マーペー側の居住者は、皆明日の朝から石垣島に住むことが決定した」
突然のことに言葉を失う村人たち。しばらくして事態を理解した村人たちはみな口々に「大変なことだ。ぜったいに行かんぞ」と叫びはじめました。「黙れ!これは王様の命令だ!文句をいうものは、今すぐここで叩き切るぞ。」刀を持って凄む役人を前に村人はまた言葉を失いました。
そこへ一人の若者が出てきました。カニムイです。「こちらには、私と結婚を約束したマーペーという娘がいます。その娘だけはどうか連れて行かないで下さい。お願いです」
もちろんカニムイの言うことを役人が聞き入れてくれるはずはありません。しかたなく諦めたカニムイは、マーペーと互いに悲しい目で見つめあったまま、別れを受け入れるしかありませんでした。幼馴染で結婚を約束していながら、王様の理不尽な命令により、マーペーとカニムイは石垣島と黒島という別々の島に住むことになってしましました。
石垣島に住むことになったマーペー達は、野底という村で、鬱蒼と生い茂る森を平地にするために、朝から晩まで休み無く働かされました。マーペーたちの必死の働きにより、海と険しい野底岳にはさまれた村にも、少しずつ作物が実るようになりました。
ところがマーペーたちが野底に来てしばらく経ったある夏、村をマラリアという病気が襲いました。苦しむ村人のために、マラリアを振り払い、村に活気を取り戻すため、祭りを行うことにしました。
多くの村人に違わず、マーペーもマラリアにかかって、寝込んで締まっていました。マラリアで苦しみながら、マーペーは黒島で離れ離れになった恋人のカニムイのことばかりを考えていました。
どうしてもカニムイの住む黒島をひと目見たくて、祭りの日にマーペーは、ひとり家を出て、病気で苦しい体を引きずり、野底岳に登っていきました。マラリアにかかりながらもなんとか野底岳の頂上にたどり着き、マーペーが目にしたものは、石垣島で最も高い於茂登岳でした。
於茂登岳の影に隠れて、どんなに目を凝らしても、いろいろな方向から見てみても、カニムイの住む黒島の姿を見ることは叶いませんでした。精も根も尽き果てたマーペーは、悲しみのあまり、野底岳の頂上でそのまま石になってしまいました…