安平路山・摺古木山(長野)
2026年10月10日 (土)3日間
中央アルプス全縦走とその周回ザ・ノンフィクション(迫真)
感想:中ア縦走を狙って車とMTBでの周回の計画でしたが、今回知識・準備不足でした。基本的には大平宿入りの安平路山ー奥念丈岳経由の縦走はいわゆる登山道ではありません。この地図の破線表示はほぼ無線ルートに近いので遭難です(笑
(後で知ったが、ここの破線の種類が通常の破線と違っている!?)
【縦走周回概要】
飯田駅にMTBをデポし、車で大平街道大平宿に入る。摺古木登山口から安平路山経由で奥念丈に入り北上、越百山、南駒ヶ岳、空木岳、木曽駒ヶ岳を抜け権現山から伊那谷飯田線下島駅に降り電車で飯田駅に戻り、鳩打峠(※)から未舗装の黒川渓流沿いのグラベルロードMTBツーリングで大平宿に戻る。
※後に知ったのだがこの「鳩打峠」は、念丈岳登山口の事ではなく、高鳥屋山登山口に通じる林道鳩打線の方で、googleでは「鳩打峠」ではヒットしなかった。今回この勘違いの為、結局たどり着いていない。
記録は電車込み周回断念の模様を含む。
Day1
早朝、飯田駅に自転車をデポし意気揚々眠い目を擦りながら大平宿に到着。現在は無人の宿場で観光宿泊のみ出来るそう。街道沿いの趣きには時の流れを感じる。「中央アルプス縦走入り口→」の看板が見える所で摺古木山登山口へと向かう。未舗装の林道で途中でいくつかの駐車スペースあり、舗装が終わりゲート手前にと思っていたら一台先行車あり、つくばナンバー。もしや縦走者?隣に駐車し7時頃歩き出す。
長い林道はこのところの長雨で至る所に川で土が掘られ車両侵入は困難かも。摺古木山登山口ゲートに到着しこの先200名山の安平路山が控えた長い林道コース。明るく広い気持ちの良い林道の先に休憩所ときれいな便所、そこからようやく登山開始、摺古木山、白ビソ山、程なくして安平路避難小屋。小屋の土間にはレッドリストのヒカリゴケが自生しており、残念ながら日中の明かりでエメラルドの輝きは拝めなかったが安寧気分でモグモグタイム。そこで安平路から下山の方とスライド。本日先には誰もいないことを確認。この先安平路からの藪が気がかりだが、今夜は越百避難小屋を目指す。そして明日昼空木岳の駒峰ヒュッテまでは水場無し。この水場で4Lを汲んで、水場の看板の右の踏み後にいざ突入!安平路山までは煩い笹薮を掻き分けながらだが踏み後をトレースで到着。特に眺望もないが深い山、そしてそのまま肩ほどの高さの藪に迷いもなく突っ込んだ。ここから破線ルートとなりこの先浦川山、袴腰山のピークを抜けて奥念丈岳の分岐に合流する。地図には「藪漕ぎ」の注意書きが踊っておりどれほど体力を使うのかと緊張していた。正午を回ったところだった。
などと考えていたら早々に踏み後が消えた。まだ山頂から数十メートル程だが、すでに足元は藪の根がびっしりと地面を覆っており、地表すら見えなくなっている。間違えたかと思い引き返すが、再び踏み後は同じ場所をたどり消失している。体の向きを信じて進む。単純に胸元の藪を漕ぐものとイメージしていた「藪漕ぎ」は、足元の踏み後の空間がなくなった時点で藪のラッセルとなった。手足を藪にからめとられ全く進まない、突然ピンテが見えたので近づくも、周囲に踏み後やルートらしき形跡はない。そして藪漕ぎながら周囲を探索したあと異様に疲れていることに気づく。再び藪を漕ぐ。その後も幾度かピンテに遭遇するもやはり道はない。不意に不安が襲ってくる。引き返すか。30分は彷徨っているがまだ浦川山までの半分も来ていない。せめて踏み後をたどって藪を漕ぐ程度に想像していた中央アルプス山行の初日本日、現実の私は、全く人の痕跡のない知らない山の、背丈よりある笹薮の中にいる。
時に笹の中に松やシャクナゲなどが密集し行く手を塞ぐ。藪漕ぎで巻くがそう都合よく旋回できるものではなく、何度も転ぶ。GPSを見ると、前回の位置からほとんど進んでいない事を知ることになる。時折、踏み後らしきスペースに入ると思った以上に進むのが楽になる、がそのまま信じて進むと谷に誘われて下っている。獣道か踏み後か。尾根から外れた上り返しは逆目の藪のラッセル。笹に体を抑えられて持ち上がらない。すでに藪は背丈を超え視界の先は見えない。周囲の景色など見ている余裕などなくピンテも見なくなって久しい頃ようやく浦川山のピークに至り、そのピークを過ぎ去るのにも十分な時間を要した。
YAMPAPの到着予測はどんどんと伸びていく、コースタイムの予定時間を過ぎても、まったく次の山にたどり着かない。休憩をする程度の平場もない。あれ以降常に薮の中。
ふと普段登山道が示すこれから行く先の存在や安全も、今の私には失われていることを知る。私は自力でこの山を、これほどに密集した笹薮を掻き分け地図上に引かれた線を辿って尾根を進み人の存在を示す奥念丈の登山道に復帰しなければ、山を下りることは叶わないという事を突然悟った。これは遭難か。私はこの藪をサバイバルすることを覚悟する。もう踏み後を求めてウロウロと探す事はしない。藪に埋もれた視界は閉ざされる。足で地面を感じ地形を読む。藪をつかんで両手で体を持ち上げる。地形と地図読み、GPS、そしてこの尾根が登山道に通じているという情報自体が確かな手掛かりであることに改めて気づく。尾根を漕ぐ。押し通る。ここに踏み後はない。私が進んだ後ろに道ができる場所。そう気付いてから気持ちが楽になった。
とはいえ相変わらず進まないまま、日が傾き陽が移ろう。何度転げたか分からないうちにポケットの水1Lをロスト。胸には日高の藪漕ぎジャケット。時間はかかるが進むことに不安はない。ただ時すでに日没に近づいている。遭難の覚悟とルート復帰の技術、そして必要な時間があれば、この藪の海も進んでいくことができる事を理解した。ただし今回は時間読みを損なっているため、最悪の場合この藪の中で座って夜を明かす事も覚悟し始める。一方で袴腰山を越えた辺りから、踏み後らしき道が続くことが増えスピードが上がっていた。ワンちゃん奥念丈ルートは藪借りが行われているそうで、そこまで漕ぎ着ければテントが張れるのでは!という期待を胸に5時半過ぎの日没を藪越しに見送りヘッドライトを点灯。焦る気持ちを抑え地形を理解する。ようやく藪が肩辺りまで低くなって来た所に、テント1張りできそうな整地の平場が見えた!!何年ぶりの平場か!目の前に奥念丈の頂票。ようやくルート復帰。マジデ疲れた~いそいそとビバーク準備マットにダイブ~寝落ちする前に疲れた胃に飯を無理やり流し込み早々に寝袋に入った。夜中に目が覚めてスコッチをひと口すすってまた寝た。グッバイまじで酷い今日!
Day2
まだ暗い中目が覚めた。さすがに昨日の藪漕ぎで体力を削られて疲れが残っているようだ。昨日越百避難小屋まで行く予定は大幅に狂った。担いだ水4Lもボトルロストにより残り1.0L。次に水が得られる機会は空木岳下の駒峰ヒュッテまであと7時間の予定も、もう藪漕ぎが無いと考えただけでニヤけてしまう。テントを開けると目の前に瞬く星空、南プスの山影、昨日とは打って変わってようやく中央アルプスにとりついた実感がわく。ココアを飲んで今日が始まる。
藪刈りされ西に御岳、左に南プスの贅沢な歩きやすい稜線を星空の元、南越百あたりで南プスから明るくなる。越百山山頂で人と出会う!思わず話しかけてしまうのもしょうがない。彼らは鳩打峠から縦走を始めたようで昨夜はここでビバークしたそう。アルプスらしい白亜のさざれた花崗岩砂と赤く染まる南駒ヶ岳のモルゲンがこの旅初めての静かな景色。ここから南駒ヶ岳、赤梛岳、空木岳へと続く稜線は花崗岩でできた白い砂浜のよう。ただし先空木岳辺りまでは登山道のハイマツと笹藪が実は煩い。刈り後に伸びた枝が藪傷をえぐってくる。脳裏にピラミッド兄貴がよぎる(笑
ちょうど水を飲みほした所で空木の山頂に到着。待ちに待った駒峰ヒュッテ!コーラがぶ飲み!とはならず。。。明日で小屋終いとの事で、コーラは売り切れその代わりに他ジュース類を安売りしていたので4本ゲットでモグモグタイムへ。木曽駒方を一望できる景色の良いテラスのテーブルに座っていると小屋番Sさんと安平路から来たとの話から遭難の話までひとしきり盛り上がり、藪漕ぎで体力持っていかれて縦走帰路の大平宿までのMTBが辛そう・・と話すと、なんと明日小屋閉めした後に、軽トラで載せようか?との優しいご提案を頂き!明日下山後にお電話させて頂きます~とお礼を申し上げ、意気揚々再出発。年に何人か、南からきて初小屋のここへ安平路から人が来るそうで、みな緋想な顔をしているのでわかるそうだ(笑
中央アルプスは短く狭く高い。東は伊那谷から直接稜線が望め、西は木曽川を挟んで御岳はじめ深い木曽の山々が広がる。南北の端からも町がはっきりと見下ろせる程どこの谷からも近い。一方主稜線標高は2900程もあるのでアルプスらしい岩稜が主脈を渡り千畳敷カールをはじめ摺鉢百間ナギなど南北たえずカールが形成されているのであり、それは凝縮された日本アルプスの山容を成すといっても過言ではないのかもしれない。
木曽殿山荘も小屋終いの為物資終了につき、もう疲れたので檜尾小屋にて今夜の宿とする。
私が夕食を食べようと「おでん」を注文し待っていると、檜尾小屋も明日で終いとのこと小屋番さんの友達が集まってねぎらいの宴席が始まった。私もお呼びに預かることができ、相席した若い登山家さん達とたらふくビールをあおりワインを嗜んだ。たけなわ前に、明日下りる予定の権現づるねの尾根の笹はダイジさんが今年の夏に藪刈りをされたそうで、「明日は走って下りれるよ」との優しい言葉を頂いたのだった。
Day3
昨晩旨い酒にありついたおかげか昨日よりすこぶる体調が良い。本日は木曽駒を回って権現山経由で町におり下島駅へ。電車で飯田駅に行きMTBをピックアップして余力があれば!なければ遠慮しつつSさんにお電話する予定で行動開始。
檜尾からも岩場が続く宝剣岳まではアルプスらしい稜線。千畳敷カールも赤く色づいている。宝剣山荘で朝食にありついて、木曽駒から振り返ると見事な一筆書きの中央アルプス主脈と、見えていないはずのあの安平路山が脳裏に!(笑
さて将棊頭山を経て権現づるねを下る尾根は長大だがとても素晴らしい。山頂からその先のほとんどが見渡せるし樹林に潜ることなく岩肌と低木の紅葉のコントラストが谷を滑らかに覆っている。これほど見渡すに見事な尾根はなかなか無い。気持ちの良い尾根を軽やかに下り、西駒ヒュッテで最後のコーラを補給してそろそろ樹林帯のところ、なんとも言えない良い山道。道を中心に苔や草が生え低木から外側に向かって中木へとまるで庭師によって人の目を喜ばせるように作られているかのような植栽空間にアリスインワンダーランドよろしく先へ先へと導かれる。踏み後が薄い箇所があるがずっと明るく日が刺していて道は土面が多く走りやすい。両脇が笹藪に変わったころもダイジさんの藪刈りのありがたみを感じながらダッシュで権現山を過ぎる。
下島発の電車は1時間おきなので、伊那スキー場に降りた時点で後15分であった徒歩30分なら、走れば駅発まで間に合う!
飯田でMTBをピックし時間も体力も尽きたと悟り去年恵那山の際に寄った焼肉屋に再訪で最高の焼肉を食べ、駒峰のSさんにご連絡した所、なんともありがたく大平宿までハイクして頂けることに。本当にありがとうございました😭道中は地元の方ならではの中央アルプスの楽しみ方を教わってとても楽しい最高の最後になりました!終わり良ければ全てヨシッ!👉日高の準備ヨシッ👉