静寂の世界~行者山、とこなげ古道
行者山・城山
(京都)
2022.05.10(火)
日帰り
とても神秘的な山だった。京都府亀岡市にある『行者山』(標高431m)である。
もんちゃんが、つぎここいこか!と提案してくれたこのお山、名前を聞いたとき、「あっ…あそこだ!」と。
昨年秋、明智越を西に歩き、唐櫃越に入る手前、亀岡市の田んぼを走ってた時、いきなり印象的な山が目に飛びこんできた。
それはとても存在感があって、低山なのに堂々たる風格ある山で…。
なんとなく気になり、帰宅してから、写した写真の位置関係を思い出し地図を見ると、『行者山』と。
ちょっと身が締まるような名前。漢字も印象的で、その山との出会いのことをレポにも載せていた。
今まで、すっかり忘れていたが、頭の片隅にどこか残っていて、もんちゃんも登ってみたいという奇遇もあって、まるで呼ばれたように向かったこの山。
ワクワクしながら、亀岡市へ車で向かった。
JR千代川駅ちかくのコインPに駐車する。
車道を抜け、田植えが終わった青々とした田んぼを眺めながら、行者山へ。
舗装路は往路、復路、ともに長いから、日傘を差して暑さをしのぐ。
山道に入ると、しっとりとした樹林帯。緑深い森のなかは、ありがたいことにひんやりしていた。
道はわかりやすく、落ち葉をふみしめ、やや急な登り坂を行く。
さっそく重厚な石燈篭がでむかえてくれる。
石には文化12年と彫られている、これも気になりしらべたら西暦1815年のこと。歴史を感じさせる。
季節が巡るごとに、新緑、紅葉、落葉と自然景観は変わっていくが、ここには変わらぬものが静かに、たくさん、眠っているような気配…。
そして、これまた古びた石鳥居をくぐると、しだいに巨岩がふえてくる。
祠があり、石像が鎮座している。
みあげれば、爽やかな新緑。
そんななか、佇むように静かに流れる気も、この山独特に感じられて、神聖に思えてくる。
そして、天を差すようにすくっと伸びる木と、折り重なるように塊としてある巨石群。
少しどきどき…。身が締まる思いを感じながら、祠の奥に入っていく。
暗闇の奥には、岩の隙間から差し込む一筋の柔らかい光が。
それは、役行者像と、前鬼、後鬼像を照らしていた。
そこにはとても優しい空気が流れていて…、ただ静寂に満ちていた。
しばし見つめて、手を合わせる。あぁ、ここに呼ばれたんだ…と思ってしまった。
目を閉じると大峰の紀伊山地の景色が浮かぶ。
我に返ると、身体に感じる独特の洞窟の冷気がすごい。ひんやり。
目をあけると、薄暗い中に、優しい御三方のお顔がそこにある。
まるでここは・・・?と異次元に来たような、でも心和むような、不思議な居心地の良い空間だった。
行者山の山頂はそこからまもなくで、眺望はないが、広々としていた。
そこから稜線上にあるいて、すぐの、堂徳山。
そして、獨鈷抛山 千手寺 (とこなげさん せんじゅじ)へ向かう。
そこの参道の階段をのぼって、参拝させてもらい、さらに山の中にはいり、展望がよいところまで登る。
亀岡市が一望だった。牛松山から、明智越えの山、奥には地蔵山も。
青々とした田んぼと市街地。現代の人の営みも、自然と共に、そこにあった。
お昼をすませ、下りは参道からくだっていく、『とこなげ古道』を降りて行った。
石積みの石垣が、熊野古道の猪垣をおもわせる。けれどお寺のHPによると、田んぼの石垣跡らしい。
しっとりとした石畳、とても風情があって、踏みしめながら、落ち着いた時間をもらえた。
今までまるでずっと日陰にいたかように、樹林帯からバス道路にでるや、眩しい西日にめんくらう。
舗装路からの放射熱で、ふたたび汗をかきながら、日傘マダムになり、駐車場まで歩くことにする。
駅から電車に乗ることもかんがえたが、うまく時刻があわなかったので、歩いてしまおうと。
歴史ある静かな魅力に溢れた行者山、とこなげ古道。
役行者と、弘法大師ゆかりのこの山、呼ばれなかったら、来ることなかったかもしれない。
あの静寂なる空間でたたずむ役行者さんたち。
大峯とのつながり。
あそこに流れる時間を知ることができてほんと良かった。
いつもながらの、アフターは、チェアリングで極上スイーツを♪
もんちゃんの用意してくれた、紅茶シフォンと果物と珈琲をいただき、語らいにラストの花が咲く。
私たちのおしゃべりは、時計の短針が下を向くまで止まらないので、名残惜しくも腰をあげて帰路へ。
今日も素敵な山時間との出逢いに、感謝でした(*^^*)