『竹中半兵衛の教え』菩提山・明神山
菩提山・明神山
(岐阜, 滋賀)
2026年02月21日(土)
日帰り
菩提山の登山口に立った瞬間、空気の質が街とはまるで違っていた。
湿り気を含んだ静けさが、ゆっくりと肺の奥まで入り込んでくる。
まるで、長いあいだ忘れていた古いレコードの音を、ふと聴き直したときのような感覚だ。
歩き始めてしばらくすると、木々の隙間から差し込む光が、やわらかく揺れながら道を照らしていた。
その光を見ていると、竹中半兵衛がこの山を見上げた日のことを、根拠もなく想像してしまう。
彼が何を思い、どんな風に息を吸い、どんな景色を見ていたのか。
もちろん、正確なことなんて分かるはずもない。
でも、歴史というのは時々、こうして静かな山の中で、妙に手触りのあるものとして現れる。
尾根に出ると、風が一気に強くなった。
その風は、僕の背中に溜まっていた重たいものを、ひとつずつ剥がしていくようだった。
仕事のこと、日常の雑音、言葉にならない焦り。
そういうものが、風に混ざってどこかへ飛んでいく。
山には、そういう不思議な力がある。
菩提山から明神山へと続く道は、決して派手ではない。
けれど、足を運ぶたびに、心の奥に小さな灯りがともるような感覚がある。
落ち葉を踏む音、鳥の短い鳴き声、遠くの街の気配。
それらが混ざり合って、静かで、でも確かに生きている世界をつくっている。
山頂に着いたとき、風が頬を撫でた。
その風は、まるで「よく来たね」と言っているようだった。
大げさかもしれないけれど、僕はその瞬間、少しだけ救われた気がした。
登山という行為は、結局のところ、自分の中の何かを整えに行く旅なのかもしれない。
今日の山行は、そんな小さな感動と、静かなリフレッシュをくれる時間だった。
菩提山も明神山も、何も語らない。
ただ、そこにあって、僕たちが来るのを待っている。
そして、必要なときに、必要なだけの風を吹かせてくれる。